必須な用具(道具)(前回の続きです)
④ スケール(定規、陶尺、コンパス、トンボ)、切り糸、スポンジ。
ⅱ) 切り糸。
切り糸には俗に「シッピキ」と呼ばれる成形した作品を、下部の陶土から切り離す
為の糸と、亀板等から作品を切り離す際に、使用する細い糸が有ります。
更に、大きな陶土の塊から必要な量の土を切り出すにも太目の糸を使います。
用途に応じて、各々糸の材質や長さは異なります。
a) シッピキに付いて。
糸の長さは15cm程度で、糸の一端に持ち手(木片、布切れ、粘土玉、五円玉
等)が付けると使い易いです。
以前は藁(わら)を撚った物や、細く裂いた物が使われていた様です。
抹茶茶碗等では、渦を巻いた切り痕も鑑賞の対象にも成っていました。
現在では、撚糸(ねんし)やタコ糸、細いワイヤー等が使用されています。
多くは使い易い様に、ご自分で作る事が多いです。
イ)使い方は轆轤を回転させながら、糸を水平に入れて引き切ります。
かなり高度の技術が必要な方法で、作品が轆轤から落ちてしまったり、
底が抜けたり、底が斜めに切れる等失敗も多いです。
ロ) 成形した器の切り離す場所を、竹へらや親指の爪などで、切り口に溝を
付け位置決めをしてから、糸を入れますが、器の手前から入れる方法と向こう
側から入れる方法が有ります。即ち、回転方向が右(時計)方向の場合、持ち
手を右手に持ち、シッピキの他端は左手で持ちます。向こう側から入れる場合
は持ち手が逆になります。実際の手順は以下の様になります。
ハ) 手前から入れる方法。
シッピキは予め、濡らしておきます。轆轤を回転させ、右手にシッピキの持ち
手を、反対側は左手で水平に持ちます。シッピキを作品下の溝に当て、左手に
持つシッピキを回転方向に半回転程度巻き付けます。1回転半程度巻き付け
たら右手を素早く、水平に引き糸を抜きます。
注意点は、糸は切口の高さに合わせる事。失敗すると、底抜けに成ったり、
肉厚になり易いです。更に水平に入れる事、失敗すると底が斜めに切れます。
素早く引き抜く事、遅過ぎるとシッピキの上に作品が残り、糸と共に移動して
轆轤上より滑り落ちます。轆轤の回転スピードも関係します。
ニ) 向こう側から入れる。
左手に持ち手を、反対側を右手で持ち、シッピキをピント張り、切り口に当て
右手を作品に半回転巻き付けます。轆轤が一回転半させたら左手を素早く水平
に引き抜いて切れ離します。
尚、切り離した作品を取り上げる方法は後日述べます。
b) 陶土の塊から切り出し用に使う糸。
大きな塊の陶土から必要な量切り離す場合や、やや硬くなった土を切り刻む
場合も、太目の糸を使います。タコ糸や水引き(ナイロン製)、太目の釣り糸
を使います。又針金(ワイヤー)を使う場合もあります。
長さも用途に応じて30~100cm位です。
糸(又はワイヤー)の両端に手が滑らない様に持ち手を付けると便利です。
c) 亀板から作品を切り離す糸、又はシッピキの代用の糸。
材質は細目の釣り糸(テグス)が向います。長さ20~80cm程度が必要で
す。両端に持ち手を付けると、手が滑らず、力も入ります。
大皿や大きな作品では亀板を使う事が多いです。出来上がった作品は、早めに
糸を入れ切り離します。切り離しが遅れると糸が入りに難くなり、更に乾燥が
進むと、底が収縮し、底割れが発生します。糸を入れても切り口には、数ミリ
の厚みの土が残ります。この残る量(厚み)は糸の太さに関係します。
細い糸程残る厚みは少なく成ります。それ故、底の面積が広い大皿等の作品は、
底の残り土を厚く残さないと、底の中央に穴が開くこともあります。
更に、上記シッピキが上手に使えない場合には、轆轤を止めてこの細い糸を
巻き付けて、又は糸を交差させ、締め上げて切り離します。
d) 切り離す際、糸を濡らすべきか、濡らさない方が良いのか?
釣り糸等細い糸で、作品を切り離した場合、一度では切り離せない場合があり
ます。特に作品が柔らかい場合に発生し易いです。これは作品から染み出た
水分が切り離した隙間に入り込み、接着効果が発生した為と思われます。
この様な場合、再度糸を入れると切り離す事が出来ます。
それ故、切り糸に水に濡らしてから使用すると、切り離し難くなります。
但し、ある程度乾燥した作品では、水で濡らさないと、粘土の抵抗が大きく
糸が入り難くなります。濡らす事で糸の摩擦抵抗を減らす事に成ります。
以下次回に続きます。