焼き物とは、直接関係の無い話に成りますが、竹や籠などにヒントを得て、焼き物の花入の制作に
応用して頂ければと思い、話を進めます。
籠(かご)花入とは、竹や籐(とう)、藤蔓(ふじつる)などで編んだ花入の総称です。
籠花入は、涼しげで軽快な感じを与える花入ですが、季節を問わずに使われている様です。
籠花入には、以下の形の物があります。
1) 籠の花入れ。
) 唐物籠(からものかご)
中国宋、元代に造られたもので、室町時代に我が国にもたらされた花入です。
編み方も精巧で、口造り、胴、裾、取っ手など変化に富み、美術的にも優れています。
) 宗全籠(そうぜんかご): 久保田宗全の代表的な作品です。
注: 久保田宗全(1647~1707年)は江戸時代の茶人です。
裾広がりの四方形の胴に、丸い口が付き、丸い半月状の籐の取っ手が付いています。
) 唐人笠(とうじんがさ): 円柱の胴に、口が大きく水平に開き、唐人が被る笠に似ています。
籐で出来ています。
) 桂籠(かつらかご):千利休が桂川で見た漁師の魚籠(びく)からヒントを得て出来た形と言わ
れています。口辺の周りに斜め下に向かう、髭(ひげ)が数本あります。
) 蝉籠(せみかご): 床柱に掛ける籐制の掛花入で、蝉が木に止まった様な見える籠です。
) 繭籠(まゆかご): 竹で編まれた繭玉状の花入で、背面に藤蔓が付き、掛花入としても
使用できます。
) 虫籠(むしかご): 秋に鈴虫を捕らえ、籠に入れ枕元に置き、その音を楽しんだそうで、
その時の籠が原型です。口は細くなっています。
) 時雨籠(しぐれかご): 骨だけの傘を、逆さにした様な形で、口が放射状に上に開いています
2) 焼き物の花入。
) 中蕪(なかかぶ): 銅の中央が膨らんだ形となっています。(青磁の物が多い)
) 筍(たけのこ): 皮を剥いだ筍に似た形です。
砧形又は、下蕪(しもかぶら)形で、胴から首に掛けて数本の横線(環線)が入っています。
青磁が多い。
) 算木(さんぎ): 易の卦(け)に使用しる算木が浮き彫りに成った文様の陶磁器です。
(青磁に多い)
) 砧(きぬた): 布を打つ「砧」の形にした花入です。
) 立鼓(りゅうご): 鼓(つづみ)の様に、上下に開き中央がくびれた形をしています。
) 舟虫(ふなむし): 花入の胴の左右に、舟虫状の小さな突起が複数個付いています。
) 蹲る(うずくまる): 人が蹲った形で、背が低く胴が膨らんでいます。
) 旅枕(たびまくら): 円筒形で口造りは、姥口(うばぐち)で、枕の形をしています。
多くは、掛花入として用いられます。
) 鰐口(わにぐち): 神社の拝殿の軒に吊された、金属製の鈴の様な形です。
) 粽(ちまき): 口と底面が極端に狭く、胴が膨らみ轆轤目のある物が多いです。
南蛮渡来の形です。
3) 口造り。
花入の素材に関係なく、口造りは工夫が凝らされています。その種類は以下の通りです。
) 細口: くびれた首を設けず、細長いまま口まで伸びた形です。
) 柑子口(こうじくち): 柑子とは蜜柑(みかん)の一種です。
口の真下が丸く 膨らんで蜜柑の形をしています。
) 雁口(かりくち): 円筒形のやや長めの首の上に、平らなドーナツ状の鍔が載った形です。
) 広口(ひろくち): ラッパ状に口が開いた形です。
) 桔梗口(ききょうくち): 大きく平らに開いた口で、桔梗の花びらの様な凹凸が付いています。
) 鍔口(つばくち): 刀剣の鍔の様に平べったい形の口です。
) 鯉口(こいぐち): 魚の鯉の口の様に、口の真下が一度細くなりその上が若干開いた形です
) 朝顔口(あさがおくち):上に向かって開く、一般的な形です。
) 輪花口(りんかぐち): 口がやや平らに広がり、起伏に富んだ花状になっています。
4) 耳の種類。耳はあくまで装飾の為のものですので、耳の無い花入も多いです。
) 鳳凰耳: 鳳凰を模した耳が首の左右に付いています。
) 龍耳: 上昇する龍を模した耳です。
) 象耳: 象の頭と長い鼻を持つ耳で首の外向きにつけます。鼻の形状は色々な形があります
) 鬼面(きめん)耳: 鬼の面が外向きに付けられて物です。
) 笹耳: 笹の葉を模し、表面に平行線状に櫛目の様な溝があります。
) 遊環(ゆうかん)、不遊環(ふゆうかん): 遊環とは、耳に付けられた円形の環です。
この環が自由に動くものを遊環といい、動かず単に装飾的なものを不遊環といいます。
焼き物の場合、施釉の遊環にするには、何らかの工夫が必要です。
) 魚(うお)耳: 小魚が腹を首に付け、上に向いて取り付けられています。
染付けなどに多いです。
) 管(くだ)耳: 細長い管が取り付けられています。
4) 置花入と掛(釣)花入。
以下次回に続きます。
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