鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

美青年のいる文学史⑨~天上の二人④『海神別荘』

2012-06-03 22:55:51 | Weblog
くもりがち。


六月になったので、水モノ・・・続き。

人と魔との恋・・・。
このカテゴリーは、どうも『女』の魔物対人間の『男』・・・という構図が多いような気がして、逆パターンは、ないだろうか・・・とツラツラ考えるに、私の狭隘な読書範囲で、やっとこ思いついたのが、泉鏡花の『海神別荘』。

海底を治める乙姫さまとその弟の公子(こうし)。
公子の花嫁は、地上の女。
この女は、自分の家の経済的危機を救うために、人身御供的に海底へ沈められます。

男の『魔』と言えば、欧州では、吸血鬼などがありますが、最初(映画などでの)は、モンスター的なヴィジュアルですが、進化しつつあって、耽美系に移行しているようですがね・・・。
でないと、女性客に受けないし・・・。美男が演じるのとそうでないのとでは、全く違うでしょうから。

海に沈められた美女は、蛇体になりますが、本人には、知らされておりません。
一方、公子もオドロオドロシイ?甲冑に身を固めておりますが、こちらも蛇体。
でも、甲冑を解くと、驚くべき美しいお姿なのであります。
このヘン、やはり鏡花先生ですわなぁ・・・。

あまりに、地上を懐かしみ、海の世界に打ち解けようとしない美女に、短気な?公子は、業を煮やして、
『あんたは、もう地上の人の目には、おぞましい大蛇にしかみえないんだよ!』
と真実を知らしめます。
親孝行のために、海底に沈められたこの身が蛇体になんてなるはずがない・・・美女は、地上へ上がり、真実を確かめますが、やはり人の目には、禍々しい蛇身としか映りませんでした。
失意の美女は、公子の毒牙にかかって死ぬことを望みますが、公子の本当の姿(甲冑を解いた姿)を目の当たりにして、公子に惚れてしまいます。

・・・美しいモノをみると、死の決意さえ、覆されてしまうのでしょうなぁ・・・。
ましてや、自分の『夫』だし・・・。

・・・で、めでたし。めでたし・・・なんですけどね。

猛々しくも繊細で美しい海の王・・・。
誰が演じるのが、最もふさわしいのでしょうか・・・?