高校2年の孫娘が、お菓子作りをしている。自分の家ですればよいのに、密かに練習をしておきたいと言うのだ。25日に友だちと一緒にお菓子作りをするので、その前に一度やっておきたいのだと言う。それに25日は両親の特別な日で、「お祝いの料理とお菓子をプレゼントする」と張り切っている。これまで、料理やお菓子作りなど全く興味がないような子だったが、やはりイベント好きな血は流れているようだ。娘たちも中学か高校の頃、なにやらお菓子作りをやっていた。
私たちの中学や高校の頃はまだ、そんな風習はなかった。男女が一緒にいれば「不良」扱いだった。グループでの付き合いはいいが、1対1はダメと言われる時代だった。私は結婚するまで手も握ったことがなかったけれど、そのことを娘たちに話したら、「馬っ鹿みたい」と軽く笑われてしまった。外国の青春映画のように、公園を手をつないで歩いてみたいと思ったけれど、そうする勇気はなかった。同世代の中には、1対1で付き合っていた人もいたし、キスしたと誇らしげに言う人もいた。だから勇気と機会に恵まれなかったに過ぎないのかも知れない。
好きな人のために料理を作るとか、お菓子を作るということが、一般的になってきたのはずいぶん経ってからではないだろうか。私が初めてもらった手作りお菓子はアップルパイだった。甘酸っぱい恋の味だった。「誕生日会」の友だちの中にはお菓子作りが得意な人もいて、いろんな手作りケーキを頂くようになった。私はお酒も好きだけれど、甘いお菓子も好きで、我が家では何かのイベントの最後はお菓子とコーヒーとかのお茶で終わる。私の父も甘いものが好きだったので、晩御飯の後しばらくするとお茶とお菓子ということがあった。娘たちのボーイフレンドが来た時、お酒の後でケーキとコーヒーを出してびっくりされたことがあったが、我が家の特有な習慣だったのだろうか。
いいにおいがしてきたので孫娘に、「どう、順調?」と声をかけると、「バッチシ!」と答える。本当にこの子は楽天家だ。「テストどうだった?」と聞けば、「うん、バッチシ!」と言う。それで後で「何点だったの?」と聞くと、「できんところがあった」と言う。あの自信は何だったのかと不思議に思う。お菓子作りをしている時も、「むいているみたい」と自信満々だからおかしくなる。でも、それくらい自信をもっていた方が良いのかも知れない。うまく出来なくても、「初めてだからしょうがない」と言い、何度もやったことなら、「こんなものだと思うよ」とへこたらない。あくまでも前向きでチャレンジャーに徹している。
孫娘もいつか好きな人のためにお菓子を作るようになるのだろう。料理を作って食べさせるようにもなるだろう。まだまだ子どもだと思っていたけれど、来年は高校3年生だ。その次の年はどこかの大学に入り、親元から巣立っていくのだろう。「大丈夫か?」と聞けば、「うん、バッチシ!」と答えるのだろうが、どうなることかとちょっと心配だ。