演奏会の最後はサックスが6人、トロンボーンが6人、ギターが2人、これに飛び入りでトランペットとピアノが加わり、ソロ演奏まで行われた。16人がひとつになって曲を奏でていく。どういう訳か涙が流れてしまった。きっとこれがジャズの醍醐味なのだろう。メロディーは単純だが、どんどん心がひとつになっていく。そういう力がジャズにはあるようだ。
このジャズライブハウスは35年になるという。ライブが終って、棚に並べてあるたくさんのレコードを眺めていた時、私と同じ歳かもう少し歳上かも知れないオーナーらしき白髪の老人と目が合って、「懐かしいです」と声をかけた。知り合いという訳ではないが、見ただけで共感できる人のように思えた。演奏された曲目は私が青春時代に耳にしたものよりも新しいものが多かったので、「ジャズも変わりましたね」という気持ちからつい言葉を発してしまった。
ジャズが黒人音楽から生まれたことは知っているが、どのようにして形が出来てきたのか詳しいことは知らない。けれども想像はできる。アメリカに連れて来られた黒人たちは寂しかったし、故郷が懐かしかったはずだ。声を出して歌うことは出来るし、物を叩けばリズムは作れる。軍隊などの行進ための楽隊は存在していたから、その楽器を使ったのかも知れない。
ジャズは日本の民謡にも通じるものがあると感じた。演奏は掛け合いで、相手の音に合わせて行う「合いの手」で盛り上がっていく。最後の演奏の時、長女のダンナが飛び入りでピアノを弾いたけれど、全く事前に何も合わせていなかったのに見事な演奏だった。「凄い才能の持主ですね。やっぱりお父さんの血ですか」と私はダンナの父親を心から称えた。本当に素晴らしい演奏だった。来年1月に、孫である小1の彼の娘のピアノ発表会がある。ますます楽しみだ。