「不用品を買い取ります」と電話がかかってきた。「不用なものはありません」と断っていたが、「百科事典とか学習辞典はありませんか」と言うので、「辞典ならありますよ。見に来ますか?」と言ってしまった。書棚にライフの『ネイチャーライブラリー』が20冊、学研の『現代新百科事典』が8冊鎮座している。
子どもの頃、私はこうした事典が好きでよく眺めていた。教員になって、書店員が学校まで営業で来ていて、勧められた書籍を買っていた。こうした揃い組の場所を取る書籍は、なぜか並べてしまうと安心するのか、ほとんど開くことも無く置かれている。引き取ってくれるなら持って行ってもらうつもりでいた。
査定の人がやって来て、絶対に価値があると思った『ネイチャーライブラリー』を手に取って、スマホで写真を撮り、どこかへ連絡していた。学研の百科事典には全く関心が無い。「(ネイチャーを指して)売れていませんね。他に小物とか、古いカメラとか、洋酒とか、ありませんか?」と聞いてきた。初めから百科事典などは買い取る気など無いのだ。
せっかく我が家まで来てくれて、手ぶらで帰す訳にもいかないと思い、私はあらかじめ使っていない腕時計とカフスを用意しておいた。洋酒?みんなで飲もうと思って仕舞っておいたブランディ―を納戸から取り出して見せた。ブランディーは2千円、腕時計3本とカフス1組で5百円と査定してくれた。ご苦労様でした。
さて、2千5百円の臨時収入を得た。明日は何して遊ぼうか。