姉の家に遊びに行くと、義理の兄である姉のダンナが、畳の上で相撲を取ってくれた。色白で小さくておとなしい私を鍛えようとしてくれたのだろう。何度も取り組みを行い、コロリと投げられた。小学校の高学年になった頃、小さい者が大きい者に勝つ秘訣を教えてくれた。
相手の動きよりも早く動けば勝てると。立ち合いで相手を見ていたら掴まえらてしまう。掴まる前に懐に入って押し倒すか、相手の足を掴まえて上げれば相手は倒れる。「やってみろ」と何度もやらされたが、やっているうちに要領が分かって来た。
小学6年の時、砂場で隣のクラスと相撲合戦になった。私の前の子が隣のクラスの担任に負けたので、次に私が対戦することになった。「ハッキョイ」の掛け声と同時に、私は担任の足に食らいつき身体ごと押し込み、見事に勝利した。
本当かどうか定かではないが、義理の兄は予科練帰りと言う。「身体の小さい者が、大きい者にケンカで勝つ方法を教えてやる」と言い、真珠湾攻撃のように相手の体制が整わないうちに、「不意打ちを食らわせろ」と言う。そんなケンカ攻撃がやって来るとは思わなかった。
中1の1学期、私は学級委員だった。授業が始まるのに、悪ガキ2名がなかなか席に着いてくれない。私が「席に着けよ」と言うと、「なんだと、えらそうに」と向かってきたので、私は一気に男の身体に飛びついて倒した。それから男の身体を持ち上げ、教室の壁に叩きつけた。
悪ガキにいじめられることは無かったが、隣のクラスの男の子に「おとなしい顔してるのに狂暴だな」と言われた。人生で暴力を振るったのはその時しかない。「舐められたらダメだ」という思いが、私に暴力を振るわせた。弱い人ほど、必死に強く見せようとする、そんな事件だった。
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