友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

向田邦子と高倉健

2014年11月19日 18時47分20秒 | Weblog

 昨日は名演の例会で、文学座の『くにこ』だった。『くにこ』は脚本家の向田邦子さんのことで、世話好きで頭の回転の速いひとりの女の子が、「物語の母」になっていくまでを描いたものだ。演劇としてはかなり斬新で、場面展開は暗転だけで行なわれ、とてもテンポがよくてセリフも歯切れよく、どんどん観客を引っ張っていく。幕を下ろしての休憩はなかった。オマセな女の子が戦争中は軍国少女となり、やがて戦争が終わると大学へと進む。

 下宿した母方の実家では、大人たちの「死ぬの出て行くの」という色恋沙汰を目にしたり、人の生き様や色恋の哀れを学ぶことになる。国語の先生になるはずが、民間会社に就職し、そこで妻子のある男性と恋に落ちたり、父親が女性を囲っていることを知ると、その家に乗り込んでいって「分かれてくれ」と談判したり、ドロドロとする場面も全て喜劇仕立てで、思わず笑ってしまった。

 昨夜のテレビニュースで俳優の高倉健さんが亡くなったと知った。向田邦子さんの脚本の中に高倉健さんが出演していた『あ・うん』があったことを思い出した。高倉健さんといえば、私たちの青春時代の花形映画スターで、確か東大の大学祭でヤクザ姿の高倉健さん似のポスターを見たことがある。どうして高倉健さんを反逆のシンボルと見ていたのか分からないが、「止めてくれるなおっかさん」と学生たちは思っていたのだろう。

 実を言えば、私は高倉健さんの映画を見たのは、もうヤクザ役から卒業していた『黄色いハンカチ』だけのような気がする。どんな役をやっても、そんなに変わらない俳優で、それが逆に口数の少ない存在感のある役者と見られるようになった。話し方はいつも同じでちょっと間があり、顔の表情も大げさなところは全くない、それでも大俳優と言われるのは「高倉健」に徹したからだろう。最後の作品『あなたへ』を観てみたい。

 向田邦子さんのドラマも実は見たことがない。ずいぶん面白い人だと昨日の演劇で知ったけれど、テレビドラマを書いていた頃の向田邦子さんの作品を見る機会を作らなかったのは、私の食べず嫌いで、ホームドラマは健全過ぎて面白くないと決め付けていたからだ。最近、女性作家によるテレビドラマを見て、考え直すべきだと思うようになっていたところだった。

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