凪良ゆうさんの小説『星を編む』を読んで、『汝、星のごとく』の続編という意味がよく分かった。『汝、星のごとく』に登場してきた人物の、さらに詳しい経過が描かれていたからだ。凪良ゆうさんは「人生の選択」をテーマに、どのような選択をしたかで人生が決まっていく様子を綿密に描いている。
人は誰も平等に生を受けるけれど、その生涯は様々に違う。恵まれた環境の人もいれば、不幸な環境の人もいる。能力に長けた人もいれば、能力は無くても周りに支えてくれる人がいる場合もある。どう生きるか、どう選ぶか、それはその人の自由だが、選ぶことの出来ない環境の人もいる。
『星』は、私たち一人ひとりのことだと思った。一人ひとりのそれぞれの思いを綴り、読み手に自分を振り返させる小説だった。私は昔の友だちを思い出した。彼は高校時代から付き合っていた女性と結婚した。そしてある時、同じ職場の15歳も年下の女性と恋に落ちた。彼女の方から誘われたように言うけれど、男女は互いに惹かれ合うものが無ければ恋に落ちることはない。
ふたりで名所旧跡を巡ったり、誕生日には名のあるレストランで食事をしたり、映画や講演会にも出かけ、「まるで恋人同士のように楽しかった」とのろけ話を聞かされた。今も大事にしているというふたりのツーショットの写真を見せてもらったが、確かに可愛い女性だった。
ところが、10年ほど続いていた熱い関係が、ある時、携帯電話が繋がらなくなった。そのうち連絡が来るだろうと待ったけれど、全く無しの礫だった。そして彼も、終りが来たことを悟った。「いいじゃーないか、いい思い出だったんだろ」と、私は慰めたつもりだったが、心の中では羨ましく思っていた。
好きで結婚した人でも、他の異性に目がくらむことはある。その思い出は、そっと胸に仕舞い込んでおくべきだろう。それで、もっと忘れられない思い出になったとしても、それは自分が選択したことなのだから。
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