朝早く電話がかかってきた。「コロナ禍で会えなかったので、声が聴きたかった」と言う。もうすぐ90歳になる先輩は、カミさんと長男と3人で暮らしているが、カミさんはデーサービスで家にいないし、長男も仕事でいないので、「電話した」と話す。
「時間のある時でいいから、いっぺん会えんかね」と言うので、「じゃー、10時に行くわ」と約束する。行けば愚痴を聞くことになるが、誰かが聞かなければますますストレスが溜まるだろう。先輩は耳が遠いし、膝に水が溜まって痛むのでまともに歩けない。
家族から「人に迷惑をかけるから」と、自宅謹慎を命じられている。だから「自分のことが分かっている人に会って、おしゃべりがしたい」という訳だ。自宅に上がったが、台所も食卓もきれいにしてあった。トイレと風呂場の壁の仕切りを無くして広く改修したいが、長男が「そんなことまでしなくていい」と言うと嘆く。
手すりが無ければ動けないのだから、もう少し親父の言うことも聞いてくれればいいのにと愚痴ばかり出てくる。昼に「ウナギが食いたい」と言うので、介護士になったつもりで出かけた。ところがウナギはまだ提供していないと言うので、天ぷらと手羽先を注文する。
食事の後、「買い物がしたい」と言う。ピアゴに連れて行き、「ショッピングカートを持ってくるから」と車で待ってもらう。ひとりでは全く歩けないが、カートがあればヨタヨタでも歩ける。
晩御飯に食べたいものを何点か買った。食事の用意は自分が3人分しているそうだ。並べればすぐ食べられる物ばかりだが、とろろ芋が入っていた。「料理できるの?」と尋ねると、「台所にもたれていれば芋はすりおろせるし、ダシ醤油があるから簡単にできる」と言う。
車から降ろして家に入れ、買ってきた物を冷蔵庫にしまい、役割を果たす。「あんたに会えたから、元気が出た。月に1回は付き合って欲しい」と言う。買い物は結構疲れた様子だったから心配になるが、話し相手がいれば元気になれると言うなら、先輩に付き合うのは後輩の務めである。
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