友だちの別荘での2日間はあっという間だった。子どもの頃に戻ってトランプに興じたり、秋の山道を散策したり、野趣豊かな露天風呂に入ったりもした。それでいて今朝は、劇団・新感線の『SHIROH』を観に出かけた。初の本格的ロック・ミュージカルとうたわれていたが、音楽はイマイチだった。聴かせる曲がなかったし、俳優も主演の中川晃教さん以外は歌がうまいとはいえなかった。
『SHIROH』は江戸時代初期、「島原の乱」を指導したといわれる天草四郎の物語だ。脚本は中島かずき、演出はいのうえひでのり。初めの部分、つまり人物設定や筋立ての説明が長すぎて眠かった。侍の子で乱を指揮したといわれる四郎と、外国人とのハーフで歌がうまく人々の心をとらえた四郎と、四郎がふたりいたという設定は面白かった。天草四郎の内面をふたりが分ける形だった。
重税とキリシタン弾圧とで苦しめられていた人々は救世主の出現を待ち望んでいた。その救世主に祭り上げられた侍の子・四郎は自分にはそんな力がないと悩んだ。歌うたいの四郎はなぜ神は人々に犠牲を求めるのかと悩んでいた。「島原の乱」は徳川幕府の重鎮、松平信綱が幕府に不満を持つ豊臣の残党とキリシタンを一掃するために仕組まれたとふたりの四郎は知る。歌うたいの四郎はそれが神の望みならと闘う決意をするが、侍の子の四郎は生き残る道を探ろうとする。
どうやらこの芝居のテーマは「死に方」にあると気が付いた。どうにもならない運命を受け入れて全うするか、最後まで抵抗し続けるか、どの道を選ぶとしてもそれは自分の全てを賭けた戦いである。生きることはどうしてこんなにも苦しいのだろう。高齢者の運転事故が多発していると報じられている。自衛隊の「駆け付け警護」が閣議決定された。世の中の流れのなかで、私はどう生きていくのだろう。
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