俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜 季語で一句 (49) 〜
◆『くまがわ春秋』2023年12月号(第93号)が発行されました。
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R5.12月号)
行く秋(ゆくあき) 「秋-時候」
檜鼻幹男
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行く秋や二行書きては破る文
【永田満徳評】
「書きては」の助詞「は」の使い方がポイント。「二行」書いたところで、何度も、「文」を破っているのである。名残惜しい気持の行く秋と、心残りのする恋文とをうまく取り合わせていて、心惹かれる。
【季語の説明】
「行く秋」は「秋去る」とともに、過ぎさってゆく秋のことで、秋から冬へと移ろい行くさま。秋の季節の終わりを指す。去り行く秋を見送る思いがこもり、寂寥感に満ちて、秋を惜しむ気持が現れた季語。移ろい行く季節を、旅人になぞらえて「行く」と形容するが、春と秋だけのもので、「行く夏」「行く冬」とはいわない。
後の月(のちのつき) 「秋―天文」
中野千秋
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身の飾り外してよりの十三夜
【永田満徳評】
服飾を着飾った時よりも、「身の飾り外して」、くつろいだ時の気持の良さを表現している。名月とは違った趣向の「十三夜」と取り合わせることによって、余裕のある、粋な女性を表現したところがいい。
【季語の説明】
「十三夜」は「十五夜」に次いで美しい月とされていて、栗や豆の収穫期に当たるため、「栗名月」「豆名月」と呼ばれる。十三夜は旧暦の9月13日で、現代の暦では年ごとに異なる。十三夜の月を鑑賞するという風習があるのは日本独自のもの。名月とは違った趣を楽しもうという日本人独特の美意識が働いている。
狐(きつね) 「冬―動物」
西村楊子
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ふさふさの尾をひたひたと銀狐
【永田満徳評】
「銀狐」は銀色に輝く毛並みで、モフモフ毛に長い尻尾が特徴。雪原の上、前足の跡に後ろ足を乗せて、一本のラインを残しながら歩く。オノマトペだけを使って、銀狐の尻尾と歩行の特徴を見事に描いている。
【季語の説明】
「狐」はイヌ科の中でも群れを作らず、食性は雑食で、毛や耳の長さによって異なる種類がある。人を化かす動物と考えられたり、稲荷神社の神の使として信仰されたりしている。狐は女はもちろん、妖怪、灯籠、馬や猫に化けるほか、雨(狐の嫁入り)や雪の自然現象を起こすなど、バリエーションに富んでいる。