昨日の佐藤正雄県議の一般質問の内容を紹介します。
なお、福井県議会HPでは録画と、項目ごとの音声データで質問と答弁をきくことができます。ぜひ、お聞きください。
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1、安倍政権と県民の暮らし、農業TPP
日本共産党の佐藤正雄です。安倍政権のもとで消費税増税、年金削減、医療・介護の改悪、生活保護の切り下げ、非正規労働者の拡大、TPP推進と家族・地域営農の切り捨てなどがすすめられ、国民の貧困化がさらにすすめられようとしています。
さらに安保法制・戦争法で戦争する国づくり、憲法改憲の緊急事態条項では国会承認なしに法律制定がおこなえることまで計画しています。
こういう安倍政権がしかけた地方創生政策が意図するところをよく見抜いて、地に足をつけて県民の暮らしと地域の再生と発展をすすめることが福井県庁と県議会の責務ではないでしょうか。
■TPP
①まず、TPPについて質問します。
アメリカ、日本など12カ国が参加し、関税の原則撤廃などを盛り込んだ環太平洋連携協定(TPP)が署名されました。署名された協定は各国で批准の手続きが取られますが、アメリカと日本がともに批准しなければ発効しません。アメリカ大統領選でも反対の声がひろがっています。危険なTPPを阻止するため、日本の批准を中止させる取り組みが重要な局面です。
もともと自民党は12年の総選挙では「TPP反対」を宣伝しましたが、安倍晋三首相の政権復帰後わずか3カ月で公約を投げ捨て、交渉に参加してきました。
TPPは交渉中の内容は秘密で、昨年10月の「大筋合意」後も安倍政権は「概要」などを小出しにするだけで、秘密交渉の結果を国民に押し付けました。
明らかになっている内容だけでも、TPPが日本経済と国民生活を破壊することは明白です。国会は交渉参加にあたって、コメ、牛・豚肉など重要5項目を関税撤廃の例外とするよう決議しましたが、5項目のなかでも3割の品目は関税撤廃に追い込まれ、残りも関税の大幅引き下げや特別輸入枠などが押し付けられています。農林水産物全体では8割を超す品目の関税が撤廃され、残りの品目もTPP発効から7年後はアメリカ等が要求すれば関税撤廃の協議などが義務付けられています。
安倍政権は日本を取り戻すなどと言いますが、TPP問題をみても日本を外国に売り渡す政治です。
そうしたなかで議会には県の影響試算もだされていますが、国の試算よりも影響割合を小さくするとともに、米についても専門家に依頼した計算ではなく大雑把な試算にすぎず、実際のところ福井県庁も影響についてはよくわからない、というのが実態でしょう。
大前提として県が16年目の影響としている点でも、TPPは協定発効後関税撤廃への協議が順次はじまる仕掛けであり、従来の協定とは本質が異なります。
東大の鈴木宣弘先生が、「TPPのような徹底した関税撤廃は強い農業を生み出すのではなく、日本において強い農業としてがんばっている人をつぶしてしまう。コメで言えば、日本で1俵9000円の生産コストを実現して大規模経営している最先端の経営も、1俵3000円のコメがゼロ関税で入ってきたらひとたまりもない」と述べている事態がせまってくるのです。
私はTPPからの撤退をつよく求めるものです。
★県として専門家の協力も得て、もう少し精緻な影響試算をおこなわないと、対策案自体の有効性も疑問になるのではありませんか。見解をおたずねします。
②また、ふくいの農業・林業・水産業の各基本計画改定内容もTPP対応にあわせるために張り合わせたのでしょうが、具体的な展開には乏しい面があります。
これでは、本当に福井の農業を将来にわたってささえていく人材育成ができるのかどうか、農業ビジネス展開に希望はあるのかどうか、輸出拡大と言うがその中身はどうなるのか、などの中心課題の具体的な展望がみえてきません。
福井の農業産出額477億円の約7割の336億円が米によるものです。しかも、その担い手は圧倒的に兼業農家であり地域の集落営農体ではありませんか。
また、県はポストコシヒカリを開発し高級ブランドとしての売り込みをはかる計画のようですが、越前ガニの「極」のようにはいかないでしょう。国からももっと山形の洋ナシのようなものができないのか、と指摘されているとお聞きしました。国は福井のコメをけむたがっているのか、と疑いたくなります。
そもそも福井県でブランド米を生産し、海外や県外に売り込み、TPPではいってくる外国産米を福井県民の食卓にのせていく風景というのは明らかに異常です。
県は規模拡大をうたいますが、北海道をみてもわかるように、構造改革路線の大規模化は農村の衰退と過疎化を進行させただけでした。北海道の人口は全国一の減少をつづけています。福井でも同じ道をすすめば、いっそう過疎化がすすみます。つまり、田畑を守り、農村社会を維持していく基盤がなくなるからです。
そこでおたずねします。農林水産部の基本計画で農村地域に住み、従事する人口、新規就農者はどの程度増えると考えているのですか。わたしには、今回提案されたTPP対策とセットの基本計画は県全体で取り組まなければならない人口流出、人口減少対策とはまったく逆行する政策に思えますが、見解をおたずねします。
■労働災害
つぎに労働災害に関して質問します。
染料や顔料の原料を製造する三星化学工業(東京)の福井工場(福井市白方町)で、従業員ら5人がぼうこうがんを発症した問題について質問します。同工場では、40~50代の男性5人がぼうこうがんを引き起こすとの指摘がある「オルト―トルイジン」を扱い、2014~15年にぼうこうがんと診断され、労災を申請しています。
オルト―トルイジンは、国際がん研究機関の発がん性リスク一覧にも掲載され世界的にその危険性は周知されており、ヨーロッパなどでは使われておりません。
このような危険物質が労働者にその危険性が知らされないまま、県民の被害が拡大したことに怒りを禁じえません。発がん性物質を規制していないずさんな政府の対応の問題、そして企業の責任がきびしく問われなくてはなりません。
わたしは福井県にたいし、今回の労働災害事件について県の対応を照会いたしました。ところが、県は、「労働災害への対応は国が一元的に所管しているため、県では調査、対応は行っていません」との回答であります。福井県が造成した工業団地テクノポートで、福井県が誘致した企業によって、県民にがんの発症という重大な労働災害がおこったというのに、福井県が知らぬ存ぜぬですませようとする態度は許されません。なんのために企業誘致をすすめるのか、県民がその企業によって健康被害をおこしてもいいのか、という行政活動の基本が問われるのではありませんか。とにかく企業であればブラックだろうがなんだろうが構わない、というのでしょうか。わかっているだけでも5人の福井県民にがんが発症した大事件です。
③そこでおたずねします。
労働災害は労働過程が安全であれば基本的に防げるものです。そもそも県として誘致した企業がどういう製品を製造する会社なのか、その製品またはその製造過程で今回のように発がん性物質など危険物質をあつかう工程はないのかどうか、扱う場合には労働災害を防ぐ予防措置がどのようにとられているのか、という基本的な調査、確認の措置を怠っていたのではありませんか、県の見解をおたずねします。
④また、アスベスト被害でも明らかなように、被害者はその工場での労働者だけに限られない恐れがあります。今回の工場でも発がん性物質がもうもうと舞い上がる中で換気装置を動かしながら作業をしていたそうであります。とういうことは、発がん性物質がひろく工場外に排出されていたと考えるのが妥当です。アスベストによる肺がん認定では工場から数キロの範囲で因果関係が認定されています。
県としてただちに国とも協議し、近隣の事業所の労働者をふくめ一定の範囲で膀胱がんなどの発症事例があるのか、ないのか、ほかの地域と比べてその割合が高くなってはいないか、などを念のために調査することを求めます。県民の命と健康を守る立場から迅速な対応を求めますが見解をおたずねします。
2、福島原発事故から5年
つぎに原子力問題で質問します。福島原発事故から3月11日で5年となり、6年目にはいりますが原発事故の復旧の道は遠く、土地や住居を奪われた住民の苦悩はますます拡大しています。こういうなかで老朽化原発である高浜原発1,2号機の再稼働まですすめることは許されません。
⑤福井県は、県民への説明会開催と意見交換の場をもつこともなく、高浜原発3,4号機の再稼働を認めました。しかも、福島原発事故以前よりも危険なプルトニウム利用のプルサーマル発電を拡大しています。3号機ではプルサーマルの燃料棒を3倍に増やし、4号機では実施していなかったプルサーマル発電を始めて実施します。
関西電力や県は県議会に対して福島原発事故以前より安全対策を重視していることを強調していますが、肝心の核燃料については、専門家からも「制御棒の効きが悪くなる」「労働者被曝が増大する」などの批判がある危険な方向に拡大しているのです。
実際、福島原発事故でもプルサーマルを実施していたところが一番、放射線量が高くなっている、とのことです。
この点で、今回の再稼働は福島原発事故の教訓をいかしていないのです。重大事故時には普通の発電よりも被害を大きくする危険があるプルサーマル発電の拡大をなぜ県は認めたのですか。いまからでも新たに4号機でプルトニウム利用の発電をおこなうことは県民の安全最優先の立場から中止を求めるべきではありませんか、見解をおたずねします。
⑥また、ほかの原発立地県にはない危険な役割を福井県は担っていることも重大です。
敦賀市にある福井県若狭湾エネルギー研究センター内に国際原子力人材育成センターをつくり、海外研修生を受け入れ、原子力発電の技術的研修、国民に原子力発電を理解させる手法の研修をおこなっています。
県の資料では、この5年間で中国、ベトナム、インド、カザフスタン、カタール、スーダンなど世界18か国から350名もの研究者・研修生を受け入れています。
原発の再稼働と海外輸出を一体でおこない、「国際原子力ムラ」原発利益共同体の一員として、安倍政権とともに原発輸出推進のために相手国の人材育成を担っている状況です。
福島原発事故を起こした日本の欠陥技術を世界に拡散すれば、世界中に原発事故の危険を広げることにつながります。しかも、国際情勢のなかでその国の政治情勢が変われば、福井県が協力した核技術が兵器転用などにすすまない保障はありません。北朝鮮で問題になっているように人工衛星の発射技術と、攻撃ミサイルの発射技術のベースは共通であるのと同様です。
西川知事、世界中に核を拡散させるこのような危険な役割からは手を引くべきではありませんか、見解をおたずねします。
3、教育行政
つぎに、特別支援学校寄宿舎について質問します。県議会総務教育常任委員会でも視察をおこない、その役割、重要性について視察参加者があらためて認識したところです。
しかし、特別支援学校13校のうち、寄宿舎があるのは6校のみであります。職員は、2000年には正規職員90名、臨時5名だったが、現在は正規職員69名、臨時26名、非常勤2名という状況です。
寄宿舎は209人のこどもたちが利用しており、こどもの自立のためとか、通学困難などの理由が多くなっています。
お話しをお聞きした高3の子のお母さん。「中学から寄宿舎に入り6年目。私と重度の自閉症の子供の2人暮らし。寄宿舎へ入れるきっかけは医師から、同じ空間と生活パターンでは自立できない、といわれたこと。寄宿舎生活のなかで好き嫌いがなくなり、入浴、トイレなども改善した。人間関係でも成長できた6年間です」と語られていました。
要望として、現在の入浴は週2回だが、毎日入れるようにしてほしい、とのことでした。
また、中3の子のおかあさんは「中2から寄宿舎に。スクールバスのルート変更にともない、送迎がむずかしくなったために入れた。重度のダウン症で、家にいると同じ事ばかりしている。寄宿舎では季節のお風呂やクリスマス会など楽しんでいる」と話され、要望としてトイレは洋式化して欲しい、とのことでした。
また、「部屋以外の暖房がなく、お風呂からでたりするとものすごく寒い。生活する場なので一番に考えてほしい」とか、「お風呂がサッシでなく木枠のガラスで、割れたことがある。安全面を強化してほしい」、あるいは、「給湯設備がなく、洗面所にお湯がでない。こどものあかぎれが多い。泊りの子は大変です」とか、「天井から汚水が部屋に漏れて異臭がすることもある。リフレッシュ工事をしてほしい」との声もお聞きしました。
また、嶺南東では、「どんどん生徒が増えている。寄宿舎の部屋までつかって教育している。寄宿舎は一人3年間だけとの期限をもうけないと次の子が入れない。寄宿舎の増築をしてほしい」との声もあります。
⑦そこでおたずねします。
教育予算の使い方として、さまざまな障害をもつこどもたちをささえる立場で、県の教育施設である寄宿舎に対して抜本的な強化策が必要でありませんか。
せめて毎日お風呂に入れたい、洋式トイレにしてほしい、朝の洗面などでお湯をつかえるようにしてほしい、・・なにもぜいたくな要望ではありません。ただちに親御さんと子供たちの願いにこたえることをつよく求めます。
そのためには、寄宿舎内のトイレの洋式化や暖房ふくめてリフレッシュ工事を急ぐべきではありませんか、また、急増する利用希望にたいして計画的な新設と増築をおこなうべきではありませんか。子どもたちの日常をささえる教育現場の貧しい現実こそ克服すべきではありませんか。予算配分と教育計画に責任をもつ知事の責任ある答弁をもとめます。
⑧つぎに再任用を拒否する問題について質問します。歴代政権のもとで年金制度が改悪され、支給開始年齢があがっています。60歳で定年退職しても年金受給は2年間とか空白期間が生じるために、本人が働き続けることを希望すれば再雇用しなくてはなりません。今後はこの期間がさらに5年間へと長くなるのです。
ところが福井県では希望しても再任用しないケースが少なくないとお聞きしました。これが事実なら、役所が先頭にたって県民の雇用破壊をすることになります。まさにブラック県庁、ブラック教育委員会といわれかねません。
そこで、来月退職予定の人数、再任用の希望をだした人数、うち4月以降も再任用する人数を、知事部局と教育委員会とにわけて答弁願います。また、再任用を拒否する理由についても答弁をもとめます。
4、消費者教育推進計画について
⑨最後に、提案されています消費者教育推進計画について質問します。
基本理念では、消費者と生産者・事業者にそれぞれ社会との関係での自覚を促し、「豊かで発展し続ける安全で安心なふるさと福井を実現し、将来世代に継承していく」ことを掲げています。
これは、消費者教育が消費者被害の問題にとどまらず,地域経済の循環型経済への移行や地域経済活性化など,地域全体を安全で豊かなものにしていく重要な意義をもつものであるとの認識に立脚するものと考えます。そこで今回、この計画策定にのぞんだ知事としての課題認識をおたずねするとともに、今後の推進方向、特に教員研修と教材作りが重要なポイントとなると思われますがそのスケジュール、そして、仕事をすすめようとすればその推進体制が必須ですが、県庁の消費者問題担当部局の拡充と,消費者教育の拠点としての消費生活センターの拡充をどのようにするのか、おたずねします。
各部にまたがりますので、知事にまとめて明快な答弁をもとめ、私の質問を終わります。