リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バッハのリュート作品(21)

2007年10月01日 20時52分20秒 | 音楽系
ヨハネの第19曲目の編成は、ヴィオラ・ダ・モーレ2台、リュート、低音楽器、歌(バス)ですが、ヴィオラ・ダ・モーレの代わりにヴァイオリン2台+オルガンで通奏低音が入ったら、かそけきオブリガート・リュートのアルペジオなんてほとんど聞こえなくなるでしょう。そのかそけきアルペジオを聴かせる工夫がされているというわけです。

マタイの第57曲目のアリアのオブリガートも割とリュート・フレンドリーに書かれていて、他のリュート独奏用とされる曲と比べたらえらい違いです。だからこそ、これをヴィオラ・ダ・ガンバで弾くと大変なのはある意味当然なのかも知れません。でもここまできちんとリュートを念頭において作られた曲であるのに、別の楽器でオブリガートを演奏する版があるということはどういうことでしょうねぇ。考えられるのは、リュート奏者が不足していたということかも知れません。バッハの時代、リュートはフランスのスタイルを受け継いで脈々とその伝統を引き継いではいましたが、ぼちぼち時代の波に対応しずらくなりつつあったころで、奏者数もかつての時代に比べたら減少していたことでしょう。

もちろんヴァイスのようなスーパープレイヤもいましたが、もともと数も多くない上にうまく演奏する人はもっと少なく、ギャラも高い。バッハがリュート・オブリガートのアリアを別の楽器用に直したのは、そのような時代背景があったのかも知れません。