リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュートの寓意(2)

2024年11月22日 19時04分52秒 | 音楽系

次の絵はピーテル・ブリューゲル(父)「死の勝利」(1562-1563頃)です。

ブリューゲルの絵はプラド美術館蔵の作品で「大軍団で襲いかかる骸骨に立ち向かう人間の悲壮な戦いを描いている」とあります。そんな中リュートに合わせて歌を歌っている男女(右下)とかその後ろにはフィドルみたいな弓で弾く楽器を弾いている骸骨がいます。(この作品が書かれた時代はまだヴァイオリン属は普及していません)右下には骸骨を積んだ荷車に乗った骸骨がハーディ・ガーディを弾いています。

フィドルとハーディ・ガーディを弾いていた人間は骸骨にすでに取られていますので、リュートの人たちも骸骨にやられるのは時間の問題ですが、恋に溺れている二人は周りが見えていないみたいです。リュートは恋は盲目の象徴なんですね。

バーゼルにいたころよく通ったバーゼル美術館にも確か同じような絵があった記憶がありましたので調べてみましたらピーテル・ブリューゲル(大ピーテル)の息子ピーテル・ブリューゲル(小ピーテル)が模写した作品のようです。

模写といっても随分アレンジされています。同じテーマで自分流に描いてみたという感じです。骸骨が弾いているフィドルのように見えた楽器もここでは18世紀のヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの古いタイプの楽器だとわかります。