リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バッハの無伴奏チェロ組曲第6番の編曲(5)

2015年04月07日 20時18分22秒 | 音楽系
Shin-Ichiro Yokoyama氏の論文には興味深いことが沢山書かれていました。既にCD第1集に録音した4番に関してもとても興味深いことが書かれていましたが、もう録音したのであとの祭りです。(笑)それにみんな私と同じように弾いているし・・・

第6番に関しては「二つの忘れ去られた♯」というのが特に興味を引きました。ひとつはガヴォットの前半の終わりから2小節目のバスです。

この部分は
のアンナ・マグダレーナの写本では「ミ♯・休み・ミ(ナチュラル)・休み」
となっています。(当時の記譜ルールでは、臨時記号は原則として1音のみ有効です。現代では、1小節有効となっています)

これは気がつきませんでした。というかシャープがあったのは知っていましたが、単純に写譜上の間違いだろうということで、スルーしてたんですね。ミ♯のバスに対してどんな和音が付くだろうかを真剣に考えてみますと、減七の和音(ミ♯、ソ♯、シ、レ)が合います。それで弾いてみると、驚くなかれ、ハッするような美しい和音です!この減七の和音、バロック時代に使われていない和音ではなく、転調するときに使われたり、緊張感のあるところでよく使われる和音です。

この小節、バスを「ミ・休み・ミ・休み」にすると何となくすわりが悪い感じがしていたのですが、最初のミ♯を減七、次のミを四度、三度とすることでとてもいい感じでぴったりという感じになります。

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2 コメント

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ガヴォット (kawahara)
2015-04-12 21:01:29
こんばんは
ガヴォットのこの箇所、A.ビルスマ氏は(ミ・休み・ミ・休み)でした、鈴木秀美氏は(ミ・レ・ミ・休み)を採用していました。
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re (nakagawa)
2015-04-14 00:30:55
ミ・休み・ミ・休みの人は、アンナ・マグダレーナ写本のみを参照しているか、18世紀の資料はまったく参照していないということになりますね。

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