院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

森重文君のこと

2012-08-11 05:02:59 | 学術
 森重文君と気軽に呼んだが、私が彼を一方的に知っているだけで、彼の方は私のことを知らない。

 彼を知ったのは高校時代、「大学への数学」という少々マニアックな雑誌においてだった。この雑誌には、高校生にとって相当に難しい問題が載っていた。私はほとんど解けなかった。

 だが、どんな問題でも解いてしまう高校生がいた。それが森重文君である。その実力は驚異的で、雑誌にかかわる数学の先生をして、「怪物くん」と呼ばしめていた。私も驚いていた。

 森君は、小学校から算数、数学ともに100点以外は取ったことがないという。当然のことのように彼は京大数学科にはいった。それで、いったん彼の消息は私の視野から消えた。

 ふたたび出会ったのが、彼が数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞したときだった。あの広中平祐が受賞した賞である。日本人では3人しかいない。

 彼や私の受験年は、大学紛争のため東大と東京教育大(筑波大)の入試が中止となった年だ。彼は、東大の受験がなかったから京大へ行ったらしい。だがそれは、彼にとってかえって幸運だった。彼は京大だったからこそフィールズ賞が取れたと言われている。

 天才というものの人生行路を、森君は40年近くをかけて私に見せてくれた。