院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

劇場での飲食

2012-12-10 06:59:53 | 芸能
 中村勘三郎が亡くなった。先代の勘三郎は人間国宝だったという。人間国宝が出演する舞台を飲み食いしながら鑑賞できたのだろうか。少なくとも私が幼いころは、歌舞伎は飲み食いしながら観る娯楽だった。

 祖母に連れられて歌舞伎座に行ったときには、酒と重箱に入れた弁当を持って行った。弁当を食べながら観た演目は「土蜘蛛」だった。主役が蜘蛛の糸のような細い紙を撒くところだけ面白く、ほかは意味が分からなかった。

 場末の映画館には売店があって、そこで買ったせんべいや牛乳を飲み食いしながら映画を観た。当時から禁止されていたが、場内でタバコを吸っても注意されなかった。最近、映画館に行ったことがないが、今でも食い物を売店で売っているのだろうか?それを場内で食べてもOKなのだろうか?(たぶん駄目だろう。)

 学生時代、モダンジャズのライブハウスでは飲み食いしながら演奏を聴いた。たとえナベサダが来ても飲食した。演奏がよいと、客は大騒ぎをした。ところが、最近はそうでない。ライブハウスの客のお行儀がよくなってしまった。演奏が始まると、みな飲食をやめてしまう。演奏に対して声掛けをしない。拍手だけである。まるでクラシックの演奏会のようだ。

 昔、ライブハウスは飲食が主で、音楽はBGMに過ぎなかった。ところが今、ロックのライブでも音楽だけが主で、客はペンライトなどを持って音楽に集中している。大騒ぎはするが、それはアーティストが大騒ぎを奨励するからで、規律正しい大騒ぎである。

 大昔、歌舞伎役者は河原乞食と言われた。今は芸術家である。モダンジャズの演奏家も芸術家である。

 AKB48は昔なら「ジャリタレ」(砂利タレント)と言われたところだが、今やスターである。庶民に娯楽や暇つぶしを提供して食べていく人たちの社会的地位が格段に上がった。

 その代わりに、大学の教室で飲食しながら授業を聴いている学生が出てきたという。私の学生時代には信じられない行為である。学者先生よりも役者やミュージシャンの地位が高くなってしまったということだろうか?