院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

だるま産業

2012-12-14 06:00:57 | 生活
 小学4年生のとき、群馬県前橋市に住む伯父のところへ遊びに行った。東京から前橋へは高崎で一回乗り換えなくてはならなかった。電化されていたのは高崎までで、高崎から前橋へはSLで行った。県庁の所在地なのにずいぶん田舎だなと思った。

 伯父の家には、大小のだるまが沢山あった。非日常的なだるまという張りぼての人形が、30個も40個も家に置いてあるのは異様だった。(当時の前橋の住宅がぜんぶこうだったとは言わない。伯父は必ずしも趣味がよい人とは言えなかった。)

 聞けば、高崎がだるまの名産地で、だるま市というのがあって、買っているうちに貯まったのだという。50年以上前の話である。

 だるまと言えば、選挙事務所に置いてある。昔は片目のだるまで、当選したらもう片方の目を墨で描いたものだが、昨今は片目のだるまは身体障碍者を連想させるので、最初から両目のだるまを置くようになった。

 このたびの総選挙で、高崎のだるま工場は大忙しになったそうだ。選挙が公示される前から生産に入り、フル生産にかかったらしい。

 そこで思うのは、もう50年以上も(いや、もっと前から)だるまだけを作って衣食している人がいるのだな、ということである。

 だるまという何の役にも立たないもの、床の間や玄関に飾るのにも似合わないものを作っている工場や職人がいるのだ。選挙の時だけ異常に忙しくなるだるま工場。このような「無駄な」産業をもっている我が国は、昔からほんとうに豊かだったのだと感に耐えないのである。