院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

「医は仁術」の意味

2014-08-30 18:28:40 | 医療
ヤフオクより引用。)

 「医は仁術」とは「医は博愛の道である」という意味で、古くは唐の宰相、陸宜公が言いました。丹波康頼の『医心方』や貝原益軒の『養生訓』にもこの言葉は見えます。 もっとも有名な出典は山本周五郎の『赤ひげ診療譚』でしょう。

ですが、『赤ひげ診療譚』では、「医は仁術」という言葉は否定的に使われているのをご存じでしょうか? 山本周五郎は赤ひげ先生に次のように言わせています。(原文のままではありません。)「最近の医者は”医は仁術”なぞとぬかす。体のことはまだ何も分かっておらぬのに、自然治癒したものを自分の手柄のように言う」ということが書いてあります。 

意外に思ったので取り上げましたが、赤ひげ先生の言葉は、現代の医学にもそのまま当てはまるものです。

鑑定留置について

2014-08-30 00:04:39 | 医療

(私が若いころに勤務していた精神科病院(当時)。畑の真ん中にありました。)

 佐世保の女子高生殺害事件で「殺してみたかったから」と同級生を殺害した女子高生が「鑑定留置」に付されました。「鑑定留置」とは精神障害が疑われる被疑者の精神鑑定を行うために精神科病院に移送することです。

 「鑑定留置」は、鑑定医が毎日拘置所へ赴く時間がなく、また看護師らによる24時間の観察ができないために、精神科病院に被疑者を泊まらせる制度です。病院では被疑者は被拘置者としてではなく患者として遇されます。ところが、「留置」という用語が付いているために、刑罰の一種と誤解されたり、精神科病院が「代用監獄」との印象を一般の人に与えます。

 「鑑定留置」はあくまでも観察、診断、治療が拘置所ではできないから設けられた制度で、そのことをマスコミは報じないから、精神科病院が拘置所や刑務所と混同されることになります。

 私は若いころ上の写真の病院で、母親殺しの犯人である息子の「鑑定留置」を経験しました。鑑定を行ったのは私ではなく先輩医師でした。殺害現場の写真を見ましたが、母親はめった刺しにされ、首が半分えぐられたむごたらしものでした。

 息子は統合失調症で幻覚妄想にかられた犯行であることは明らかで、鑑定もやさしいものでした。息子はそのまま同じ精神科病院に入院となりましたが、おとなしい人で淡々と入院生活を送りました。この人のどこにあれほど激しい母親殺しのエネルギーがあったのだろうかと、意外に思わせる患者でした。

 病気がよくなって退院していきましたが、むろん刑に服することはありませんでした。ここのところが、一般の人が理不尽と感じる部分なのでしょうが、論評はいずれ行います。

 とにかく、マスコミは「鑑定留置」の説明を省いてしまうから、いつまでたっても精神科病院は収容所や刑務所と混同されるのだと、今回はそれだけを指摘しておきましょう。

※佐世保の殺人女子高生は絶対に精神障害ではありません!!