Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

復元された東京駅にて

2013年01月26日 | 東京
 久しぶりに東京駅八重洲口の改札を出て、復元されたばかりの東京駅のレンガ作りの駅舎をゆっくりと眺めた。確かにこうして新しくなるとアムステルダムの駅舎にそっくりだ。東京駅の方がずっと静かで、整然とはしているけれど。
 私はデジカメを構えてこの写真を撮ろうとしたときに、すぐ横に年老いた母親とたぶん私よりもずいぶん年上の娘の二人が、私と同じように東京駅をしばらく黙って眺めていた。「きれいだね」とか「すばらしいね」とか、普通は言葉にしたりするものだろうが、とにかく無言だった。不思議な沈黙によって、私の身体は凍りついたようにその場から離れることができなくなってしまった。
 しばらくすると母親の方が静かに口を開いた。
 「戦争中みたいだね」
 それは、ある種の悲しみを込めた深いため息のような響きだった。そのとき私はハッと気がついた。復元された駅舎は、その建築美だけではなく、戦争という深い傷を蘇らせる悲しい装置であるということを…。