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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

インドネシア風中華食堂「ラハユ」

2017年01月13日 | バリ

 このメニュー表を見て、「ああ、あそこね」「懐かしいわ」なんて思う方は、デンパサール市街の北、トゥリジャタ通りの北にあるこのインドネシア風中華食堂「ラハユ」をごひいきにしていた(している)方々である。中華系のおじさんとおばさん(今ではおじいさんとおばあさんというのが正確なのだろうが)が経営するこのお店、私が留学していた1986年にはすでにトゥリジャタ通りでは有名な食堂だった。うちの下宿でも、作ったおかずがなくなったり、あるいは一品足りなかったりすると、ここに野菜炒めなどをテイクアウトで買いに行った。だいたいそんな時間は各家からお手伝いさんが、そうして1,2品のおかずを買いにきていて、待ち時間も相当だった。
 この通りの先には日本人を含む外国人を大勢教える有名な踊りの先生の家があるし、だいたい私も含めて日本人が代々住んでいた通りなので、知らないうちにここの主人は日本人だとわかると、「こんにちわ」「こんばんわ」「お元気ですか」「何を買いますか?」なんて日本語で聞いてくれる。そんな気遣いが嬉しいものだ。
 今回、数年ぶりにこの店に行ってみた。昔とかわらないたたずまい、決してきれいとはいえない店の内装、そしてやっぱりひっきりなしに訪れるお客さん。ちょうどぼくの注文が最後でお客さんが途切れたとき、主人はぼくの前に座ってこう言った。
 「もう年をとったよ。中華鍋が重く感じるからね。おまえがこの店に最初に来たのは何年だい?」
 「1986年だと思うな。ほとんどここで昼食食べてたかな」
 「そりゃ、お互い年をとるね。今度はいつ来るんだい?」
 「なんだか店がなくなっちゃうみたいじゃないか。8月にはまた顔を出すよ。」
 そんな会話が終わると、彼は何事もなかったように厨房の前に立った。直前の会話がまるで嘘だったかのように、大きな中華鍋を自由自在に操り始めた。「まだ当分、大丈夫だよ。」そんな彼の後ろ姿を見てなんとなく嬉しかった。