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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

燃えた市場

2007年11月14日 | バリ
 今年の5月、デンパサールの市場の一つが火事になった。市場といっても食品や日用品を扱う場所ではなく、「クンバサリ」と呼ばれていたおみやげ物の市場である。世界各国からバイヤーが買い付けにくるような大型の店もあれば、一坪ほどのスペースで個人経営の土産屋がひしめきあうまさに「市場」の様相を呈していた。しかしその市場はたった一晩で消えてしまったのである。
 20年前に留学していた当時から、家族や友人が来るたびにこの市場に案内した。最近ではこの年の3月に学生をバリに連れていったときにこの市場に出かけた。20年の間に売られるお土産はだいぶ姿を変えたが、それでも店々の雰囲気は昔のままだった。学生を連れて迷子になりそうな細い市場の路地を廻りながら、ノスタルジックな気分に浸った。
 留学を終えるとき、勉強の援助をしてくれた両親に何かお土産を買おうとこの市場にふらりとでかけ、そこで大きな木彫のレリーフを買った。帰る日までの日数を指折り数え、必要なお金だけを残して、それ以外の所持金の大半をそのレリーフ代につぎ込んだことを、今なお鮮明に記憶している。そしてこのレリーフは今もなお、実家の玄関を飾っている。
 たくさんの思い出がつまった燃えた市場を遠目に眺めるだけで、なんだか胸が詰まる思いがする。無くなって初めて気づいた自分と「クンバサリ」の距離。


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