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【殺意という名のただ一つの真実】知るかバカうどん「ゆめかわゆめちゃん」 感想

2017-01-26 | 知るかバカうどん
                                    











時折、無性にまとも過ぎる、正しすぎるお行儀の良い世界にうんざりする事がある
そりゃ、そういう感情だけで生きていけるなら話は別だけど、
人間そこまで殊勝な事ばかり考えてるのか?っていう気持ちもある
「あいつを殺したい」だとか
「めちゃくちゃにぶっ壊してやりたい」だとか、
それもまた普遍的で人間らしい心情の一つでしょう。

勿論、実際に行動に移したりはしませんよ?(笑)
ガキじゃあるまいし、そこは大人な考えで生きて行くのが「当たり前」
だけど、漫画やアニメの中でくらいそういった普段抑えつけてる感情を解放したい気持ちだってあるじゃないですか。
俺はあるんですよ。
だから、そういう意味合いで知るかバカうどんさんの作品ははっきりと自分にとっての“救い”に成り得ているんですよね。


人間、口だけなら、どんなに素晴らしい事でも言える
平気で以前言った言葉を不意に出来てしまう
それは、
法律では決して裁けないけど、ある意味犯罪よりも憎たらしい不条理じゃないですか?
そこで押し黙るんじゃなく、自分の手でめちゃくちゃにしてやりたい、幸せを奪ってやりたい
そういう悪意と憎悪と復讐に燃える想いもまた人らしい感情の一つだと言えるでしょう
あの言葉も嘘だった
あの約束も嘘だった
本気なのは自分一人だけだった
自分が精一杯あげた気持ちを、何も返してくれなかった
それは、、、やり切れない憤りであり、許し難い現実でもあります

だから、自分の想いもされたことも何も知らずに幸せそうに笑う「あいつら」を
突き落として殺して、文字通り地獄に叩き落としてやる、、、という、そういうお話です
完全にキマった表情で躊躇なくホームから妻と子を突き落として殺害するシーンなんかは、
ぶっちゃけ商業誌ではほぼほぼ描けないようなシーンになっているでしょう(笑
過ってしまった「現実」をなかった事にして、
責任も取らずただ自分の中だけで完結して平気の平左で進もうとしている男にとっては
正に青天の霹靂、お仕置きの一発としてはめちゃくちゃにキツいものだったでしょうね(笑

ただ、個人的には読んでいて妙にスカッとしたというか、
「てめえ一人だけ勝手に立ち直ってんじゃねーよ」って気持ちもあったので
奥さんと子に何も罪はありませんが、それでも、復讐の描写としてはかなり秀逸なものに感じました
狂気に満ちたゆめの表情とそこから感じられる心境に少なからず感情移入してしまった節があったのかもしれません。



ゆめは、いつだって本気だった
自分の自尊心を充たす為の道具として扱っていた男とは対照的に、
いつだってピュアで、
いつだって一途で、
いつだって誠実に向き合う器量を持っていた女の子だった
見合う女の子になりたくて努力もしたけれど、
そんな純粋な想いは「大人の事情」で全てかきけされた
ある意味、純粋過ぎてそんな気持ちの持って行きどころを見失ってしまったんでしょうね
脅迫じみた逆レイプに、辱めと自分一人だけが気持ち良くなる文字通りオナニーのようなセックス、
挙句の果てに奥さんと子供を転落死させる凶行に走って完全に人生がめちゃめちゃになっちゃってます
どうしようもない過程、
どうしようもない顛末、
ゆめが見たかったのは、奥さんと子供が死んだ景色ではなく、
その景色を見て青ざめる大輔の表情そのものだったんでしょうね。
大輔のせいで人生めちゃめちゃにされたから、
復讐として大輔の幸福を思い切り握り潰してやった。
そんな、復讐劇としては過激すぎるバカうどんさんならではの強烈な作劇が光っている新刊に仕上がっています
この血が滲むような悔しさ、そして憎悪、更にそれらが呼びだす狂気の表現は好きな方はとことん好きだと思う
いつもながらかなりハードコアな仕上がりですけど、その分ある意味真っ当な面白さに満ちている漫画
作画だったり演出のクオリティも益々進化されてるので、うどんさんファンは必見の同人誌です
別に薦めるつもりも薦める気もないんですが、
取り敢えず「俺は」大好きです。って、ただそう言いたいだけですね。

人間、表には出せない「正しくない感情」がいっぱいあるんです。
それをご丁寧に分厚く包んで出してるから結局そこでどこかがおかしくなってしまう。
そういう感情を解放する為には、もっとバカうどんさんのような表現者の台頭が必要でしょう。
去年の正月にバカうどんさんの同人誌の感想を書いて1年経ちますが、
今ははっきりとそんな事を思います。











ちなみに、途中まではなんと「イチャラブ」になってるので(笑)。
バカうどんさんの描く「イチャラブ」に少しでも触れられるこの本はある意味レアリティあります
そっちに振り切っても振り切らなくても、結局バカうどんさんの漫画は何やってもこの方の色に染まっているような、
そういう芯の強さと確かな“面白さ”があるので、そういう意味でもこれからのバカうどんさんのコミックがとっても楽しみなのです。
最近、どういう漫画アニメを見ても「頑張るんだ」「信じるんだ」「分かり合うんだ」のオンパレードですっごくイライラしてたので、
本当に気持ち救われた気分になりました。そういう感情だけで生きてる訳じゃないっていう。



                                    


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