山陽新幹線で運転士が異音に気付きながら内規で定めた報告を怠ったことが大きな問題になっている。その異音を 「小動物に当った思った。以前にもトラブルにならなかったので大丈夫と思った」 との運転士の話しはすこぶる現実的で無いような気がする。
時刻表の発、到着時間を守るために秒単位の修正能力を持っている新幹線運転士にはある種の畏敬の念を持っていたが、この言葉を聞いて驚いてしまった。
私は車運転で突然飛び出してきた猫がぶつかったことがあったが、40キロくらいの速度でも大きな衝撃音だったことに驚いたことを憶えている。
それが200キロを越える速度で物体に衝突するエネルギーによって相当な異音がすることは明らかで、その時点で車体に何らかの損傷があったことを想像できないのであろうか?
運転士の言う 「小動物」 とは何を持ってそう決めつけたのであろうか判らないが、新幹線ではシュミレーターで物体と衝突した時の訓練は実施しているだろうか?
動いている物体を制御するには 「音」 は安全確保のための重要なファクターでもある。
私が永年経験したジェットエンジン・テストでも音は重要な役割を持っていて、高速で回転するエンジンは内部の部品損傷は即、異音となって現れる。また、飛行中に鳥を吸い込んでも異音が発生するだろう。
エンジンはマニュアルが指示する多くの制限値を守りながらテストするが、残念ながら音に関する規程は殆どない。だからオペレーターは異音などの事象やデータを自らの脳内に蓄積して知識度を高めることがプロの道に繋がってくる。
その感覚は高速回転するエンジンをテストするオペレーターでも、高速で新幹線車両を走行させる運転士でも同じように経験からの技能が引き出されて安全に繋がるものだだろう。
この運転士がなぜ異音発生を連絡しなかったのは 「安全は全てに優先する」 との原則を無視していることであり、多くの乗客の命を預かるその義務の深さを理解していないのは、JR西日本の本質かもしれない。
繰り返すが、私がエンジンテストで学んだのは常に 「音と振動」 をモニターすることだった。もし、急に音が発生したら何らかの異常発生、そして振動は何らかの部品の損傷が原因だと思え、と、厳しく教えられた。もし 「音と振動」 に異常を見付けたら、即、スロットルレバー (車のアクセルに相当する出力を制御するレバー) をアイドル位置に戻すか、緊急の場合にはエンジンシャットオフすることを常に対応できるように訓練されていた。
フロント部分が損傷したまま高速で走行した新幹線はそれなりに次ぎの危険な状態に進んでもおかしく無い。フロント部に何らかの物体が衝突したら異常を知らせるセンサーなどを張り巡らすことなどの簡単な防止策を講じるべきだろう。
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