実は以前からタイトルだけは、知っている本だった。1日一回は必ず本屋さんを覗く習慣のある私は、この本が大量に売れていることは知っていた。ただ、食指が働かなかった。原因?タイトルが陳腐すぎる。更に言うなら、当時アニメ嫌いだった私は、この本をかっこいい宇宙船やらロボットやらが出てきて、平和と戦争に悩む若者を描いた作品であろうと、勝手に憶測していたのが、読まなかった理由でもある。要するに宇宙戦艦ヤマトや、ガンダム(観てないけどさ)の亜流だと思っていたのだ。
当時、いかに楽して死ねるかを悩んでいた私は、当然になげやりで捨て鉢な気分だった。死ぬ前に読み残しは嫌だったので、とりあえず読んでおくことにした。気分が落ち込んでいる時に、自分に似合うかどうかも考えずに服を買うようなものだった。第一読まなきゃ、批判も出来ない。
ところがだ、案に相違して、この本は面白かった。SFものだと思っていたのだが、実際は架空歴史ものと評するほうが相応しいものだった。実際、著者の田中芳樹は歴史に大変造詣が深く、その考察力も並々ならぬものであることが読み取れた。主人公とそのライバルの造形も見事だが、それ以上に百人近いと思われるその他の登場人物の描き方が見事だった。
今でも即座に、主人公以外の数十人の登場人物の生き様を思い浮かべることが出来る。これは凄い。こんな思いをしたのは、吉川英治の「三国史」以来だと思う。実際、この作品はSF版三国史の様相をみせているが、そのことを意識させないほど、ストーリーは変化自在だ。
現金なのか、馬鹿なのか。私はこの本に夢中になったことで、とりあえず自殺は先延ばしにすることにした。なにしろ全10巻外伝4巻あるので、全て読破するには私でも2週間ほどかかった。こうなると、この著者の他の作品も読みたくなるのが人情だ。「マヴァール年代紀」「アルスラーン戦記」「創竜伝」Etcと読み出したらきりがない。おまけに、この著者、極めて遅筆なので、未完の作品が多い。
そうこうしているうちに、12月となり夏の税理士試験の結果発表の日がきた。当然に私は不合格だが、翌日当時通っていた専門学校に挨拶に赴くと、合格に喜ぶ受験仲間たちの姿があった。正直言えば、妬ましかった。少なくとも入院直前までは、私のほうが勉強は出来ていたはずだ。しかし、これが受験の現実。たった一回の試験ですべてが決まる。
猛烈に悔しかった。これを機に、再び受験勉強を再開することにした。同じ失敗を繰り返さないために、勉強は一日3時間に限定した。どうやら疲労の蓄積が病気の再発に影響があるようなので、疲れない範囲で、勉強を集中的に行うことにした。
再び私に生きる目的が出来た。まだ死ぬことを忘れたわけではない。死ぬまでに、一科目でいいから合格して、生きた証を残すこと。それが私の目標になった。以来十数年がたった。私はのうのうと生きている。
実は私はファンレターなるものを書いた事は一度もない。もし書くとしたら、この場を借りて田中芳樹先生に伝えたい。あなたの本で自殺を思いとどまり、今を生きながらえた青年がいたことを。そして感謝の念を持っていることを。
当時、いかに楽して死ねるかを悩んでいた私は、当然になげやりで捨て鉢な気分だった。死ぬ前に読み残しは嫌だったので、とりあえず読んでおくことにした。気分が落ち込んでいる時に、自分に似合うかどうかも考えずに服を買うようなものだった。第一読まなきゃ、批判も出来ない。
ところがだ、案に相違して、この本は面白かった。SFものだと思っていたのだが、実際は架空歴史ものと評するほうが相応しいものだった。実際、著者の田中芳樹は歴史に大変造詣が深く、その考察力も並々ならぬものであることが読み取れた。主人公とそのライバルの造形も見事だが、それ以上に百人近いと思われるその他の登場人物の描き方が見事だった。
今でも即座に、主人公以外の数十人の登場人物の生き様を思い浮かべることが出来る。これは凄い。こんな思いをしたのは、吉川英治の「三国史」以来だと思う。実際、この作品はSF版三国史の様相をみせているが、そのことを意識させないほど、ストーリーは変化自在だ。
現金なのか、馬鹿なのか。私はこの本に夢中になったことで、とりあえず自殺は先延ばしにすることにした。なにしろ全10巻外伝4巻あるので、全て読破するには私でも2週間ほどかかった。こうなると、この著者の他の作品も読みたくなるのが人情だ。「マヴァール年代紀」「アルスラーン戦記」「創竜伝」Etcと読み出したらきりがない。おまけに、この著者、極めて遅筆なので、未完の作品が多い。
そうこうしているうちに、12月となり夏の税理士試験の結果発表の日がきた。当然に私は不合格だが、翌日当時通っていた専門学校に挨拶に赴くと、合格に喜ぶ受験仲間たちの姿があった。正直言えば、妬ましかった。少なくとも入院直前までは、私のほうが勉強は出来ていたはずだ。しかし、これが受験の現実。たった一回の試験ですべてが決まる。
猛烈に悔しかった。これを機に、再び受験勉強を再開することにした。同じ失敗を繰り返さないために、勉強は一日3時間に限定した。どうやら疲労の蓄積が病気の再発に影響があるようなので、疲れない範囲で、勉強を集中的に行うことにした。
再び私に生きる目的が出来た。まだ死ぬことを忘れたわけではない。死ぬまでに、一科目でいいから合格して、生きた証を残すこと。それが私の目標になった。以来十数年がたった。私はのうのうと生きている。
実は私はファンレターなるものを書いた事は一度もない。もし書くとしたら、この場を借りて田中芳樹先生に伝えたい。あなたの本で自殺を思いとどまり、今を生きながらえた青年がいたことを。そして感謝の念を持っていることを。