ヌマンタの書斎

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公益法人等への課税

2006-08-21 09:50:40 | 経済・金融・税制
あまり知られていないが、公益法人等にも申告納税の義務はある。原則非課税の扱いだが、収益事業に関しては、当然に法人税課税となる。消費税の申告が必要な場合もある。

ここ2~3年、時折新聞紙上にこれらの公益法人等が脱税との報を見かけることが増えた。記事はあまり詳しく書かれていないが、おそらくその多くは消費税の脱税であろうと推測できる。実は消費税の申告実務は、けっこう面倒で、なかでも公益法人は非常に煩雑な計算が必要となる。

脱税との報道は、すべて間違いとは思えないが、消費税については、おそらく計算間違い、解釈見解の相違が原因だろうと推測できる。これを脱税と評するのは、少し辛い気がする。間違いが出るのが当然と言えるほど、消費税の条文が難しすぎるからだ。

消費税には、課税と非課税があることは分かると思う。でも非課税には、消費税法上の非課税と、消費税法の対象外となる不課税があることは、経理の専門でないと判らないと思う。更に公益法人等には、特定収入と特定収入以外の収入という特殊な概念がある。

このあたりのことは、消費税法60条第四項、消費税法基本通達16-2-1あたりに記載があるが、非常に読みにくい条文であり、これを間違えるのはいたし方ない気がする。また計算実務も非常に煩雑で、実に厭らしい。

とはいっても、悪法であっても法は法。あまりに間違いが多いせいか、国税庁・国税局はここ数年、公益法人等を重点調査対象と定めて税務調査を奨励し、間違いを正す方向でいるようだ。それゆえ、自体地の厳しい管理下にある公益法人等での脱税報道が増えているわけだ。

でもね、多分これは伏線だと思う。現在、財務省が狙っているのは、公益法人等に対する課税強化のはず。原則非課税の扱いを止め、原則課税、非課税対象を限定列挙する方向に持っていきたいらしい。おそらくは平成19年の税制改正大綱に盛り込みたいと考えているらしい。

ただ、これは非常に難しい。なにせ公益法人等の範囲には民法34条法人が含まれている。つまり、宗教法人や学校法人だ。これらの法人は当然に課税強化に反発している。しかも政治力が相当に強く、これまでもその実力をみせつけてきた経緯がある。

それ以外にも、この課税強化の範囲には「人格なき社団」が含まれる。PTAや市民団体などに代表されるこれらの存在は、やはり相当な政治的発言力を持つ。

相当な反対があるとの予想を覚悟のうえで、それでも財務省は課税強化を推し進めてくるのだろう。来年は参院選があるし、連立与党も難しいことになりそうな気はする。私見だが、おそらく先送りの可能性は高いと思う。それでも、なんらかの形で課税強化をしてくると思う。それほどまでに、日本の財政状態は悪化しているようだ。
コメント
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