ヌマンタの書斎

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会社法その5 改正の背景

2006-08-23 09:42:55 | 経済・金融・税制
6月に四回連続で書いて以来、久々の会社法です。次は会社の定款自治について書くつもりだったのですが、今日まで延ばし延ばしとなっていました。

実を言うと、あまり書きたくなかった。あまりに変わりすぎて、あまりに自由度が高すぎて、何を勧めたら良いか、私自身が迷ってしまったからです。

改正点をダラダラと書き連ねるのなら、馬鹿でも出来る。私は実務家ですから、改正点をどのように考え、どのように活用するかでなければ意味がないと思い、1ヶ月以上延ばしてきました。いろいろな本を読み、弁護士、公認会計士、税理士の諸先生方の講演を聴き、自分なりにまとめることが出来たので、僭越ながら書かさせて頂きます。私の私見、偏見、独断が若干入り混じっていることは、予めご了承して頂きたいと思います。

従来の商法会社編は基本的に大企業を対象とした法律でした。しかし、日本の企業の九割以上は中小企業ですから、社会の実態に即していない法律でした。そこで今回の会社法は、中小企業向けに作られています。

もう一つの特徴は、旧・商法が事前規制型で、行政の裁量を大きく認めていたのに対して、今度の会社法は、事後監督型であり、法律重視で司法的解決に方向性を出していることが大きな違いです。

つまり従来の行政指導重視から、ルール(定款)による自治と司法による統治重視に変わっているのです。もっといえば、自由度が飛躍的に拡大したがゆえに、その結果責任が重みを増した形になっています。要するに「自由と責任」に重点をおいたのが、新会社法だと思います。

では、何故このような形に改正されたのでしょう。やはり社会の変化と無縁ではありません。高度成長を終え、熟成した社会となった今日の日本では、従来の会社・経営者重視から消費者重視へと変わりつつあります。また小選挙区制の影響だと思いますが、特定業界に偏った態度では有権者の多数を握ることが難しくなった政治家事情も影響しています。そして司法の世界の拡大といった事情もあります。

実際問題として、公害訴訟でも最近は原告(消費者等)が被告(企業)に勝つケースが増加しています。またPSE法に見られるように、消費者の権利を社会が擁護する傾向は今後も増加するでしょう。

政界では一部の業界の代弁者と見られることは、政治家にとってマイナスとなっている現実もあります。小選挙区制度は、比較多数を握らなくては勝てませんから、多数派である声なき有権者たちの反感を買う行為は、きわめて高いリスクとなっています。

数年前の商法改正により、総会屋が株主総会から締め出された一方、会社法務を得意とする弁護士たちが株主総会になくてはならぬ存在になっています。株主代表訴訟は増える一方ですから、企業社会における司法の存在感は高まるばかりです。その一方天下り官僚の民間への転出は敬遠される現象がおきており、行政の存在感は以前より縮小したのはたしかです。

このような社会の変化を受けての、今回の会社法改正がなされた訳です。そこで次回は自由な経営システムの構築と、それに伴う責任について書こうと思います。
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