一枚の写真に目を奪われた。「なんだ、これは!」
人間が宙に浮いている。いや、正確には、岩壁に手と足の末端が付いているから、浮いているわけではない。でも、ありえない構図。トリック写真?傾斜は90度(垂直)を超えて130度近い。つまり、覆いかぶさるような岩壁。しかも凹凸は少なく、その微かな岩のへりに手をかけ、足を置き岩壁にへばりついている。
これがアメリカの伝説的スーパークライマーであるジョン・ギルとの遭遇でした。今でこそ当たり前のフリークライミングですが、1950年代から既にフリークライムを行っていたギルは先駆者といっていい。
実はフリークライミングの歴史は、ベトナム反戦運動が盛んであった1970年代に始まるとされていた。当時は環境運動の一環として、自然を傷付けずに岩壁を登るクリーン・クライミングが、ロイヤル・ロビンスやシュイナードらにより提唱されていた。
それまでは登攀が難しい岩壁には、ドリルで岩に穴を穿ち、ボルトを打ち込んで、縄梯子をかけて登っていた。今で言う人工登攀(エイド・クライミング)だ。しかし、自然を傷つける行為が非難の対象とされ、ナッツやカムを岩に挟み込み(岩を傷つけないとされた)登るクリーンクライミングが推奨された。
しかし、クリーン・クライミングは無理があったと思う。硬い花崗岩やクラック(割れ目)のある岩場ならいいが、とっかかりが少ない砂岩の岩壁や、天候などの理由で時間的制約があるビック・ウォール(大岩壁)には不向きな方法だった。
そのためこれまで登山の一環とされたクライミングが、クリーン・クライミングが可能な一部の岩場に限定して行われるようになった。いわばゲレンデ限定の登攀遊戯となったわけだ。この限定された岩場(ゲレンデ)での登攀は、手と足の力だけで登るフリークライミングへと発展していき、今日のような屋内の人工岸壁での競技につながる。
フリーといっても、墜落の危険から身を守る道具(ロープやハーネスなど)は当然に使う。またフリークライミング専用の特殊な登山靴も必要不可欠だ。ちなみに登山靴以外の道具を拒否し、ロープも使わず墜落死の覚悟さえ決めて登るフリークライミングは、フリーソロという。トム・クルーズが映画MIⅠのオープニングで見せているのがそれだ。
屋内の人口岩壁ですら行えるフリークライミングだが、その原点はボルダリングにある。これは河原などにある巨石や、川や海の切り立つ崖などで行われていた登攀遊戯だ。単に登るだけでなく、横に移動(トラバース)したりもする。実はけっこう難しく、また奥が深い。フリークライミングをする際の練習やウォームアップとして行われることが多いが、ボルダリング自体を楽しむこともある。落ちても安全な高さで行われることが多いので、手軽に楽しめるのも魅力だ。
実のところ、表題のジョン・ギルという人は、登山家(クライマー)としての意識は薄かったらしい。むしろボルダリングを極端な難しさで行うことに魅力を感じていたらしい。まだ専門のクライミングシューズではなく、体育館履きのような運動靴でそれをやっていたのだから驚異としか言いようがない。今日でも、ジョン・ギルの設定したルートは高難度の課題として、フリークライマーたちを惹きつけていると聞いたことがある。
元祖フリークライマーであるジョン・ギル。たかが岩登りを、かくも真剣に遊び倒す凄みを体現している人だと思います。たかが遊び、されど遊び。何事にせよ、真剣に打ち込むことって素晴らしいと思います。
人間が宙に浮いている。いや、正確には、岩壁に手と足の末端が付いているから、浮いているわけではない。でも、ありえない構図。トリック写真?傾斜は90度(垂直)を超えて130度近い。つまり、覆いかぶさるような岩壁。しかも凹凸は少なく、その微かな岩のへりに手をかけ、足を置き岩壁にへばりついている。
これがアメリカの伝説的スーパークライマーであるジョン・ギルとの遭遇でした。今でこそ当たり前のフリークライミングですが、1950年代から既にフリークライムを行っていたギルは先駆者といっていい。
実はフリークライミングの歴史は、ベトナム反戦運動が盛んであった1970年代に始まるとされていた。当時は環境運動の一環として、自然を傷付けずに岩壁を登るクリーン・クライミングが、ロイヤル・ロビンスやシュイナードらにより提唱されていた。
それまでは登攀が難しい岩壁には、ドリルで岩に穴を穿ち、ボルトを打ち込んで、縄梯子をかけて登っていた。今で言う人工登攀(エイド・クライミング)だ。しかし、自然を傷つける行為が非難の対象とされ、ナッツやカムを岩に挟み込み(岩を傷つけないとされた)登るクリーンクライミングが推奨された。
しかし、クリーン・クライミングは無理があったと思う。硬い花崗岩やクラック(割れ目)のある岩場ならいいが、とっかかりが少ない砂岩の岩壁や、天候などの理由で時間的制約があるビック・ウォール(大岩壁)には不向きな方法だった。
そのためこれまで登山の一環とされたクライミングが、クリーン・クライミングが可能な一部の岩場に限定して行われるようになった。いわばゲレンデ限定の登攀遊戯となったわけだ。この限定された岩場(ゲレンデ)での登攀は、手と足の力だけで登るフリークライミングへと発展していき、今日のような屋内の人工岸壁での競技につながる。
フリーといっても、墜落の危険から身を守る道具(ロープやハーネスなど)は当然に使う。またフリークライミング専用の特殊な登山靴も必要不可欠だ。ちなみに登山靴以外の道具を拒否し、ロープも使わず墜落死の覚悟さえ決めて登るフリークライミングは、フリーソロという。トム・クルーズが映画MIⅠのオープニングで見せているのがそれだ。
屋内の人口岩壁ですら行えるフリークライミングだが、その原点はボルダリングにある。これは河原などにある巨石や、川や海の切り立つ崖などで行われていた登攀遊戯だ。単に登るだけでなく、横に移動(トラバース)したりもする。実はけっこう難しく、また奥が深い。フリークライミングをする際の練習やウォームアップとして行われることが多いが、ボルダリング自体を楽しむこともある。落ちても安全な高さで行われることが多いので、手軽に楽しめるのも魅力だ。
実のところ、表題のジョン・ギルという人は、登山家(クライマー)としての意識は薄かったらしい。むしろボルダリングを極端な難しさで行うことに魅力を感じていたらしい。まだ専門のクライミングシューズではなく、体育館履きのような運動靴でそれをやっていたのだから驚異としか言いようがない。今日でも、ジョン・ギルの設定したルートは高難度の課題として、フリークライマーたちを惹きつけていると聞いたことがある。
元祖フリークライマーであるジョン・ギル。たかが岩登りを、かくも真剣に遊び倒す凄みを体現している人だと思います。たかが遊び、されど遊び。何事にせよ、真剣に打ち込むことって素晴らしいと思います。