ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

沢登り

2007-07-28 13:08:00 | スポーツ
夏の遊びとして欠かせなかったのが川遊びだった。

大学に入ってから覚えた川遊びが、沢登りだった。通常登山は尾根筋を登るが、沢伝いに登っていく道もある。わざわざ川のなかにジャブジャブ入っていき、登っていくのを「沢登り」と称する。どうも、日本独特の登り方らしい。

夏の沢登りは、実に楽しい。岩登りの技術を駆使しつつ、遊び心一杯に沢を遡上する。時にはザイルを張らねばならない危険な箇所もある。実は沢筋のルートは、登山道のなかでも崩壊が多く、必然的に事故が多い。

余談だが、山で道に迷った時は、断じて沢筋に降りてはいけない。沢を下れば、間違いなく人里に出れるが、下るのは登るより難しい。まして沢筋は危険が多く、山での事故の多くは沢筋の斜面で起こる。道に迷ったら、必ず尾根を目指す。日本の山なら、尾根筋には必ず道があります。尾根を下るのは難しくない。

ところがだ、危ないからこそ面白い。ある程度経験を積むと、回避できる危険、挑んでも克服できる危険の判断が出来るようになる。沢登でも、あまりに危ない時は迂回して登る。実は沢登りは頂上を踏むことを目的としていない。沢を詰めれば、大概が尾根の鞍部にたどり着く。別にわざわざ頂上を行く必要はない。たどり着くまでの過程が面白い、山遊びだからだ。

私のお気に入りは、東京の奥庭である奥多摩の御前山界隈の沢だった。滝というより、ウォータースライダーとでも称したくなる斜面を、水を浴びつつ登るのは、実に爽快だった。初心者向けの沢でもある。

大学の遭難対策委員会の企画で、いくつかのアウトドア・サークルの希望者を募って、沢登りをするつもりだった。前日に台風が通過したので、少し天候が心配だった。しかし、奥多摩の駅を降りると、夏の青空が気持ちよく迎えてくれた。

バスを降り、林道を歩いて目指す沢にぶつかったところで、山に分け入る。すぐに快適な滝が出迎えてくれるはずだった。ところが、鬱蒼とした雑木林の奥から低い轟音が鳴り響く。何の音だと首を傾げながら林を抜けて、滝つぼに出た我々は絶句した。

いつもなら50センチほどの幅の滝が、3倍以上の太さで轟音を響かせている。ドラム缶2本分くらの太さの水流が、凄まじい勢いで滝つぼに突き刺さっている。東京の街中では、ザッ~と雨が通り過ぎただけだったが、奥多摩では豪雨であったらしい。

講師役の山岳部の若手の顔が引きつっている。こりゃあかん。私とて、初心者を連れては、とても登りきる自信はない。やむなく大きく迂回して、水量の少ない上部の沢だけの登攀で我慢した。いや・・・上部も相当な水量で、内心ヒヤヒヤだった。

自然は怖い。ほんの一晩の雨でこれだ。登山なんて遊びは、自然の寛容さに甘えての遊びなんだと、つくづく思い知った。
コメント (10)
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