入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「春」 (2)

2020年03月09日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 遅咲きの梅の花がようやく咲き出した。まだ数えるほどとはいえ、朝の光を受けて開花したばかりの白い花が清々しい、輝いて見える。諦めかけていた無名の白い花が今年も岩の陰に遠慮がちに花を開いたし、やがてボケも大ぶりの白い花を咲かせるはずだ。これで、冬ごもりから抜け出せずにどっちつかずでいた気持ちは、自然と春に移っていくだろう。



 昨夜9時から、テレビ朝日の開局60周年記念番組を見た。番組は、制作者一行が目的地であるネパールヒマラヤの最奥の村、ティンギューを目指し10日以上もかけた険阻、苦難な山道に苦しむところから始まった。道中、一行のカメラは荒々しい風景に、時折目の覚めるような美しい眺めも加えながら、ようやく目的地の村に辿り着くことができた。そして、初めてカメラの入ったというその村に長期滞在をして、500人くらいの村民の長年変わらない、つましくも伝統的な暮らしぶりを記録した。番組は2時間半近くの特別企画で、民放としては異例の大作だと言えよう。
 こうした番組を見てまず思うことは、今でさえ行くのが困難なヒマラヤの隔絶したあんな奥所に、どういう事情があって400年も前から人が住み着き、以来ずっと今まで村は守られてきたのかということだ。飛ばされたわけでも、流されて行ったわけでもない。何らかの意志であのような不毛とも思える奥地へ幾つもの峠を越えて歩いて行ったはずだが、何故か。
 過酷な風土のせいもあってか、ボン教や原始仏教が人々の暮らしと密接に結びついていて何となく安堵して見ていたが、また一方で子供たちの身に着けている衣料からは、余計かどうかは言えないまでも、他所からの文明の影響が及んでいることが分かった。
 あの無邪気な笑顔を見せる子供たちが、自分たちの不便な暮らし向きと大きく異なる社会があることを知った時、どう反応するのだろう。われわれの文明がより利便性や快適さを求めて発展してきたように、彼らもきっと、われわれに追い付こうとするだろう。もちろんそれを止めることはできない。彼らの現在の生活ぶりと比較して、われわれの暮らし方を省みるくらいしかないだろう。
 昨夜の番組には「ドルポ」とか「ポクスンド湖」など耳覚えのある名前に加え、100年以上も前に、当時は鎖国中だったチベットに潜入した僧、川口慧海の名も出てきた。世田谷の「九品仏」に墓があり、訪ねたことがある。そしてもう一人、大谷映芳氏が古巣の記念番組に案内役を兼ねて出ていた。現役のころ、ヒマラヤを始め多くの辺境の地を訪れ紹介した名ディレクターで、もう74歳になっていたのには驚いた。それでも5千メートルを超える峠を、タルチョーと呼ばれる5色の旗が引きちぎられんばかりにはためく強風の中、淡々とした足取りで超えていった。

 以上、本日もお粗末な独り言。 

 
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