入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「春」 (14)

2020年03月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 よく言ったものだと思う、「年寄りの元気春の雪」。昨日の朝方の雪はあっという間に融け、予定通り北原のお師匠と一緒に身延へと向かった。中央道を双葉からは最近途中まで開通した中部横断道を一路身延まで。川幅の広い富士川は春の日を浴びゆっくりと流れ、気が和む風景は変わっていない。思いがけず沿道の桜がちらほらと咲き始めていて、長い冬が終わったという実感からか、途端に安堵感が湧いてきた。
 到着した時は10時を少し回っていた。コロナ騒ぎで訪れる人も少ないだろうと思っていたところ意外と人の出があって、狭い参道には行き交う人ばかりか、交通整理をする人も目に付いた。エレーベーターを利用して本堂へ向かう参拝客用の駐車場はすで満車状態に近く、ここでもせっかちな悪癖が出て少し焦る。しかしお師匠はそんなことなど意に介さない。周囲の桜の花を愛で、褒め、手にした2本の杖を突きながら歩く。速度はウサギとカメくらいの違いだが、これまた師はそんなことに頓着はしない。
 本堂周辺にはそれなりの人の数が見られた。多くの人は仏閣ばかりか名の知れた枝垂れ桜が目当てらしく、その花は荘厳な伽藍を飾り、そればかりか時折桜吹雪までが青空や寺院の屋根に舞った。普段は山桜こそ本当の花だなどと言いふらしていたが、すっかり古刹・久遠寺の花に接し圧倒され、古人(いにしえびと)並みに酔った。やはり、日本人にとって花は桜だ。
 さてお師匠、生憎にも持参したカメラが電池不足で、得意の撮影を断念するはめに。ところが、手にしていたスマホで気を取り直し、ただし自分では操作できぬからと振られる。そして、機械音痴に向かってあれを撮れ、これも撮れ、オレも撮れとなり、うろたえる。
 さらに師は、ロープウェイで奥の院の「思親閣」へも参拝すると、当然のように言う。殺し文句は「これが最後だから」。で、何十年も前に歩いて登った微かな記憶の残る奥の院へ。
 ところが師は、奥の院にはそれほど興味を示さず、それよりか近くの展望台から4,5年前に夫婦で登っ七面山を遠望し、しばし感無量の様子。無理もない、遠く七面山の山頂の近くに米粒大の建物が見えていたが、85歳を過ぎて、何時間もかけてあの急な長い尾根を登り1泊したのかと思うと、その話は聞いていたが驚き、言葉をなくした。つくづくその鋼鉄の一亥さを思い知らされ、いや、頭が下がった。またそこでは絶えず日蓮上人へと思いが行くらしく、しきりにその名を口にした。
 
 終わりに、お師匠様へ。野生の弟子とあらば、噛付きはせぬまでもご無礼の段、お詫び申し上げまする。是非来春もと期待しつつ、御身のご息災を祈り申されてこそ候へ。

 本日はこの辺で。
 

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