’20年「春」 （５）

　こんな小黒川の源流にも、春の息吹が人知れずに訪れていた。細い水流が作った水溜りのようなよどみには明度の高い春の陽が射し、最早手が切れるような冷たさは感じない。凍結していた辺りの沼地も融け出し、鹿の新しい足跡が残っていた。大きく伸びをしたくなるような、新しい季節がもたらした自然の活気を、しみじみとそこら中に感じた。



　また昨日、上に行ってきた。TDS君と仙流荘へ風呂に行く予定を急遽変更して、二人で牧場へ上がることにした。雪の量は前回よりもさらに減っていた。いつもなら苦戦する焼き合わせを過ぎた二カ所ある大きな曲がりも難なく過ぎ、さらにしばらく行くと、森林管理署の顔見知りの職員が引き返してくるのに出会った。彼は例のド日陰の大曲の、氷化した道を嫌ったようだった。少し話したついでに「13年、国の森林政策を見てきたけれど」と、つい余計なことまで口走りかけたら後続車が来て、そこで話を打ち切って別れた。
　ド日陰の大曲は日中に融けた雪だか氷が夜間に凍結し、昨日はそれがまだ融け出す前で、かなり手前からツルツル状態だった。しかし、それでも上り切ることができ、近年の冬用タイヤの性能と、運転云々を褒めてやらなければならないと思ったくらいだ。ただこのままの状態が例年のように連休まで続くようだったら今年は、今から高遠城の花見で忙しい市の行政ではあっても、除雪をやるように願い出るつもりでいる。
　会話を中断させてくれた車も結局、邪魔しただけでやはりそこから引き返していった。

　急に話題を変えるが、伊那市と富士見が共同で製作する入笠の案内冊子、そこにある伊那側の情報不足についてはこれまでも苦言を聞かなかったわけではない。今年は伊那市が担当するわけで、その小冊子に紹介されている高遠城の桜や鹿嶺高原のことなど省いても、今回こそは肝心な入笠の伊那側の情報発信をきちんとして欲しいと担当者には言ってある。その後の進捗状況が一向に聞こえてこないので問い合わせたら、業者が決まったという回答が来た。「業者」、力が抜けた。
　詳細は控えるが、伊那側の情報がもっとしっかりとしていたなら昨日、TDS君と二人で仙流荘の風呂でで快適なひと時を過ごしていたはずだった。そうしなかった理由があって上がったのである。
　
　世間は新型コロナウイルスが世界的規模で拡がりを見せ、ついにオリンピック開催までが心配されようになった。行き場を失った休校中の子供やその親の中には、逃げ場にキャンプ場を思いつく人もいるだろうが、設備の乏しいそういう場所にあまり多くの人が押し掛けるのは考えものだ、控えた方がいい。状況によっては、当牧場の山小屋、キャンプ場の営業も今年はどうなるか分からない。

　以上、本日もお粗末な独り言。