入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’21年「冬」(96)

2021年03月01日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 夜景ばかりではと思い昨日、散歩道の昼の顔でも写真に撮ろうかと外に出てみた。しかし、慣れ親しんだ夜と違い、昼の道はまるで知らない他人のような表情で素っ気なく、気を変えて萱野高原へ上がった。
 牧場へ行けば、当然のように目にする穂高や槍の姿を久しぶりに目にしたが、その中では常念岳の白い山容が一番目を惹いた。この山は、前衛の山に邪魔されることなく、山腹のかなり下方までピラミッドのような特徴のあるどっしりとした姿を見せ、さらにまるで袈裟懸けにでもされたような鋭い切込みが山肌に刻まれている。牧場からもそうだが、見る場所、時によっては、穂高や槍にも劣らず主役級を張ることがある。まさに昨日はそういう役割だった。
 ここからの天竜川を中心にした伊那谷の眺めに期待したのだが、すでに西山に迫りつつあった日のせいで1枚の写真も撮れず、さっさと諦め、仕方なくそこからもみじ湖へ下ることにした。途中で、有害駆除中の地元の猟友会の人と出会ったので声をかけてみたら、20人以上もの会員が出たというのに獲物はサッパリで、その上に犬が戻ってこないとあって捜索の最中だと言う。あの辺りの山域では鹿さえも減ってしまったと聞いてはいたが、その上犬まで失くしたとあっては、やっていられないだろう。犬は山を越えて、藤沢の谷にまで行ってしまった可能性もあると言っていた。
 下りの山道は氷結している所があるから気を付けろと言われ下ってきたら、ギアを落とす間もなくそういう場所に出くわし、自動制動装置(ABM)が作動して思うように減速できず、あの程度の雪道には慣れているつもりだったのに肝を冷やした。雪用のタイヤがあれほど滑ることもあるのか。
 牧場の帰りに守屋山の山腹を巻いてこの湖を通て帰っても、千代田湖経由で高遠の街を通ても距離的には変わらないので、いつもながらの芝平へ下らず、たまには気分転換にこの経路を利用することもある。昨秋以来のことで久しぶりだった。ここももみじ湖の名の通り、紅葉のころは大した人出になるが、この時季は静かな山の中の湖に戻っていて、ようやく人心地ができた。
 HALが元気なころ、キクが生きていたころ、まだ信州に帰ったばかりで小太郎と名付けた犬のいたころ、どれもここへ何度か連れてきた。湖の周囲を連れ歩いていて、臆病なHALは抱いてやらなければ木の橋を渡ることができなかった。キクはいつもオテンバで、それが当然のように勝手に遠くへいってしまった。小太郎は雄だったから、何かを追いかけとんでもない急な崖を駆け上がってみせた。もういない3匹の犬たちのことを、いつにも増して神妙に思い出し帰って来た。どの犬にも愛情に差はないが、短命で、亡骸も見付けてやれなかったキクが不憫と言えば一番不憫だ。
 きょうから3月。風が強い。本日はこの辺で。
 
 
コメント
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