今朝は鳥の声がしないと思っていたら、霧が晴れたら郭公の声が聞こえてきた。そしてまたすぐに鳴き止み、もうどこからも鳥の声がしない。昨夜の雷雨に鳥も放心でもしているのだろうか。
一昨日、囲いを開放し、牛たちは自由に第4の放牧地へ出せるようにしてあるが、和牛を中心に10頭ばかりが移動しようとしない。そのうちの1頭が、咆哮した。確か、この和牛の群れは一度は囲いから出たはずだが、再び戻ってきてしまった牛たちだろう。
臆病というのか、神経質な牛たちで、新しい環境に出ていくのが怖いようだ。牛本来の性格もあるが、集団でいるところを見れば、これまでの生育環境の影響が大きいという気がする。
ようやく日が昇ってきた。いい天気になりそうだ。午前6時、気温10度、どうやらあの牛の鳴き声は仲間を呼ぶ声だったようで、先程まで見えていた和牛の姿が消え、ここからは1頭のホルスしか見えない。
いや、囲いの奥の一番高い草地に1頭のホルス(No.20)とその親衛隊のような和牛(No.19)がいるが、このホルスは腹に子がいて、近いうちに里に下ろすことになっている。だから、囲いの中にいてくれた方が有難い。あの2頭の牛たちの分だけなら、あそこでも草はまだ充分にある。
今のところ、一番懐いているのは和牛のNo.4だが、やはりこの牛も妊娠していて、中間検査で下牧が決まっている。和牛のNo.21は左後ろ足が少し不調のようだったが大分良くなったとか、同じ群れの中のNo.23
は異常なくらい警戒心が強いとか、入牧して半月もすると扱いやすい牛、扱いにくい牛の判断が付くようになる。
古来稀なる歳を過ぎてなを、それでもこんな山の中で自然と動物を相手に一人暮らしを続けている。これは若いころに求めた生き方には違いないが、そう思えば思うほど、肉体を使い気も遣うこの仕事の、生産性のあまりの低さ、それに牧場ばかりか周囲の自然に関しても、これから先のことがどうしても気になってくる。
いや、きょうもいい一日になるだろう。
テイ沢の丸太橋、気遣ってくれるだけでも充分に有難く感じています。
本日はこの辺で。