
雨が降っている。それもかなり強い。ウグイスがすぐ近くのコナシの木に来ているらしく、こんな天気でも歌うのを止めない。それに今朝は、しばらく森の舞台から遠ざかっていた郭公の声も、遠くからだが聞こえてくる。あれはどこへ行っていたのだろうか。
すっかり上での暮らしに慣れてしまい、どうやら現住所は入笠牧場になってしまった。たまには里のことも気にはなるが、あの距離をこれまで14年以上も毎日往復していたのは、自分のことでありながら他人事のように感じてしまう。
それで少しは身体は楽になったが、相変わらず体力を酷使する日々が続き、その上ここですることは毎日同じような仕事ばかりで、あまり代わり映えしない。それでも、目にする自然はここに暮らす上で充分に、親しい友人の代わりになってくれている。
9時過ぎ、雨が止んだので、きょうもいつものように電牧の点検や、牛の頭数確認を普段よりか少し丹念に行い、その後、電牧下の大分伸びた草を刈った。あんな細い草でも、束にすればそれなりの量になるから、それが漏電の原因となる。きょうは通電したままで草刈りをしたから、感電してはたまらないとそれなりに神経も使い、かなり疲れた。汗もかいた。燃料が尽きたので車まで下りてきたら、それを待っていたようにまたしても雨が降り出した。あの草刈りはもう半日もあれば終わるだろう。
夕暮れとともにまた霧が降りてきて、その中からウグイスの声が今もしている。権兵衛山もすっかり霧の中で、囲いの中の3頭の牛たちは寝る前の腹ごしらえに余念がない。草を食む牛ばかり見ていないで人間も、そろそろ夕餉の準備でもしよう。まだ今夜は何を作るか決めてないが、ビールと日本酒だけは変わらず、それらを飲みながら考えることにする。
それにしてもこんな山の中で、仕事以外にも炊事、洗濯、掃除までやる。それで格別不満などないが、アレが見たらどう思うだろう。
1年前のきょうがHALがいなくなった日で、それに関しては長いながい1年だった。
本日はこの辺で。