入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’21年「夏」(16)

2021年06月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 朝に、鳥の声を聞きながら日の登るのを待ちつつ茶を喫す、それとも更けてゆく夜の帳の中で無音の音を聞きながら強い酒を飲む、どちらがいいのかを一概には言えない。山の暮らしがいいのか、里の暮らしがいいのか、これも同じく甲乙を点けるのは難しく、とりあえず今は山に暮らし、早朝の山の気を感じながら一日を始めることに格別な不満や不便を感じていない。
 昨日、covid-19のワクチン接種を受けるため山から下りてきた。たった一夜を過ごせばまた山の生活に戻るだけだというのに、長い留守をするかのような錯覚に陥り、小屋の冷蔵庫の中の食料を気にしている自分を嗤った。
 ふる里を離れ都会で暮らしていた者が、たまさかの休みで田舎の実家に帰る時のような気持で山室川の流れる谷を下っていくと、あの悪路を春から秋までの7か月、毎日のように通っていた自分のことが他人のように感じられたものだった。それも15年にもなる。
 こういう年の取り方を選んだのは自分だ。それでも、気づかない何かの力が作用したような気がする。いや、そう思いたい。もうしばらくこうした暮らしが続けば、それで充分だと考えている。

 今から2時間ばかり前になる、ブスッではなくスーと第1回目のワクチン接種を受けてきた。配慮と統制の取れた会場は混雑もせず、受付、検温、問診、接種、待機などすべてが滞りなく整然と行われ、関係者の対応も丁寧で大変に良かった。
 周回遅れなどと、接種の遅れを諸外国との比較で識者からさんざん言われてきたこの国は、しかしいざとなればやはりかなりのことができるのだと、そんなことまで感じながらそぼ降る雨の中を上ってきた。

 接種を受けるに際して混雑を避けたかったから、街中を避けて久しぶりに天竜川の西岸に広がる段丘を走ってみた。雨にけぶる水田のずっと先の中央アルプス・西山は見えてなかったが、それでも南アルプスを背景にした東岸の盆地を含めて、伊那谷は本当に美しい所だとしみじみ感じた。「伊那谷」という名称は嫌いではない、好きだが、飯田線の列車から眺めた狭い範囲を指しているだけだということが、春日街道や大規農道を走ってみればよく分かる。

 雨が降っている。それでも鳥の声がする。クリンソウの花の季節もそろそろ終わる。小止みになったら昨日行った草刈りの片付けでもしようかと思いつつ、本日はこの辺で。明日は沈黙します。

 

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