入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’21年「夏」(26)

2021年07月01日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 激しい雨の音で目が覚めて、しばらくそのまま布団の中にいた。寝付かれそうにないので起き出したら、時計は午前3時を少し回っている。深夜、強い酒を飲みながら独り言をする。いい時間だ。
 
 やはり、こういう雨の夜は牛のことが気になる。いくら「元は野生だから」と言われても、明らかに牛たちは雨を避けようとして木の下に移動するし、それに長年にわたりあれだけ品種改良されてきた牛が、今でも野生と言えるだろうか。
 その点では、ホルスばかりか和牛にしてもそうだ。ここに来ている牛たちは子を産むことが役割の繁殖牛だから少しは長い寿命を貰えたとしても、せいぜい10年とかそこらだろう。初めから肉を得るために肥育される育成牛の場合は、たった2年程度で市場に出荷されてしまう。
 繁殖も育成のやり方も、繁殖家や肥育家による長年の研究努力の成果ではある。しかし、例えば育成牛なら、人間にとって良質とされる肉を得るためにひたすら育てられるわけで、その過程おいての多くは、牛への多大な負担をもたらすことになる。
 牛守だから、ここで過ごす牛たちのことは分かるが、それは彼女らの一生のうちの4か月という極く限られた期間のことでしかなく、里での牛のことまではよくは分からない。それでも、牛についてはこの仕事を始める前に読んだ本からの少しの知識と、漏れ伝わる情報だけで充分だと思っている。
 人間も、野菜だけ食べていたなら、牛たちは野生のままで今よりノンビリと暮らせたかも知れないなどと極端なことを考えたりすることもあるが、それは車のない社会を想像するのと同じくらい、非現実的な話だ。せめてここにいる間だけは、ご苦労な牛たちのためにできるだけ大事にしてやりたいと思う。

 半日と見ていた昨日の電牧下の草刈りは1日を要し、その間に来てくれたキャンプの予約者は連絡が取れないまま、やむなく別の場所へ行かざるを得なかったようだ。そのような連絡が下からあった。玄関の戸に携帯の電話番号を記した紙片を貼っておいたが、電話をしてくれたとしても草刈り機の音で気付かなかったのだろうか。申し訳ないことをした。
 何だか昨日は妙に気が立っていて、他にも昼ごろ小屋の様子を見たいと訪ねてくれた人たちに、牛に接するように気を遣って対応することができなかった。どうも、自然と牛を相手の理想の暮らしも、もっと気を付けないとさらに野生化が進んでしまいそうだ。

 それから3時間ほど眠った。雨脚は少し弱まりウグイスの声がしている。囲いの中の2頭のホルスと1頭の和牛も普段と変わらない様子だから、激しい雨の一夜を無事に乗り切ったようだ。これから他の牛たちのご機嫌を伺いに外へ出る。電牧の下の草を刈ったから、漏電計は全く異常なしだ。本日はこの辺で。

 
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