入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’21年「夏」(31)

2021年07月07日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                 Photo by Ume氏

 雨に濡れたコナシの木の向こうに薄ぼんやりと見えてるのは第2検査場の牧柵で、今は使われていない。放牧頭数が多かったころは一か所だけでは入牧、中間、下牧時の検査が間に合わず、この検査場も10年くらい前までは盛んに使われていた記憶がある。
 そのころは頭数も100頭以上、年によっては200頭近くいて、5か所の牧区全てが使われた。信じられない話だがもっと以前は、300頭を越えたこともあったと言う人もいる。ならば県の三大公共牧場の一つの名に恥じまいが、これは明らかに行き過ぎというものである
 それが今は、これだけの広さ(公称305㌶)の牧場に入牧頭数が激減してしまって、今年は後期と合わせてもよくて50頭ギリギリだろう。近年は赤字にはなっていないはずだが、この頭数から想定する事業規模を訊かれても、とても口になどはできない。
 原因は、牧畜農家の減少、ひいてはその頭数の減少、人工授精を始め繁殖、育成方法の変化、畜産農家の置かれている立場、近隣住民との関係などなどが考えられるが、山の中にいては、里の情報は少なく心許ない。
 
 しかし、では閉牧すればいいかというと、決してそうではないと思う。ここら周辺の自然環境や景観は他に代えがたいものがあり、これを守っていく意味でも当面、牧場の存在は大きいはずだ。それに何よりも安易な観光化の波から、牧場が防波堤になっていることは間違いがない。
 今、つい「当面」と呟いた。そう、あくまでも当面であって、時代の流れの中では変貌を余儀なくされることは充分に考えられるし、仕方のない場合もあるだろう。将来の展望をゆっくりしっかりと見据え、長い時間をかけて少しづつそうした変化に対応していってほしいと、マサカリをどこかに置き忘れ、頼りのクマからも去られてしまった老いた金太郎のような気分で、若い人たちには機会があるたびに伝えている。

 雨は止みそうにない。霧も深い。今1台の大型トラックが小黒川の谷を下っていった。あの美しい谷にも久しく行ってないが、荒れた林道はその後どうなったのだろうか。この国の7割を山林が占め、その半分が国有林である。つまり我々国民の山であるのだが、大規模伐採が行われているのは西谷なのか東谷なのか、はたまた南沢なのか、ここにいてもそれさえ知らない。

 本日はこの辺で。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする