入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’21年「夏」(40)

2021年07月17日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                      Photo by かんと氏
 
 午前5時半、快晴、気温13度。日はまだ山の背後から昇ってこない。鳥の声がしない朝で、風が冷たい。下界では熱中症が心配されているようだが、現在の気温からでは、それを想像するのは難しい。日中になれば、それでもきょうは25度を超すかもしれない。

 昨夜、9時ごろだったか、星空を眺めようとして外に出たら、小屋の前にあるはずの軽トラがない。驚いた、慌てた。盗まれたのかと思い、次には制動をかけ忘れてどこかに突っ込んでいないかと考えた。急いで部屋に戻り、ヘッドランプ(いくら片仮名は避けようとしても「前照灯」では無理だろう)を持って再び外に出た。しかしどこにも白い軽トラの姿型などない。
 長年使えてくれた軽トラを走行距離20万キロ直前で乗り潰したため、あの車はまだ乗り始めて1ヶ月かそこらしか経っていない。中古車ながらかなり程度の良い、走行距離も3万キロというシロモノで、大切に乗っていた。買換えは農協にとってもかなりの出費だったはずで、それをたった1ヶ月かそこらでなくしてしまったとなればそれこそ面目が立たないし、買換えを承諾してくれた人々に顔向けもできない。
 当てもなくしばらく途方に暮れながら歩いた。盗まれたのならもうそこら辺にあるはずもなく、探しても無駄だと思いつつも、それでも仕方なくトボトボと林道の方へ歩いていった。すると、ヘッドランプの光りの先に何か白い物がボウッと浮かぶように見えた。
 目下、2頭のホルスを検査場に置いて飼っている。給餌、給塩、給水と、それなりに手がかかる。草だけなら体重の12パーセントを1日に食べてしまうと言われているから、あの牛2頭でも60㌔やそこらは必要になる。草は牧場内にふんだんにあるが、昨日はわざわざ北門の外まで若くて柔らかいカヤやヨモギなどを食べさせようと出掛けてもいった。牛はカヤの葉を好む。よくあの鋭い葉で舌を切らないものだと不思議に思うくらいだ。
 昨夜、翌朝の草を用意しておこうとキャンプ場の近くで草を刈り、すっかり車のことを忘れてそのまま小屋に戻ってきてしまったのだと、ようやく分かってきた。第1牧区から下ってきて、露天風呂の水漏れの手当などをして、そのまま小屋へ来てしまうということはままある。しかしそういう時は、すぐにそのことを思い出す。
 昨夜はそうでなかった。慌てふためき、焦った。「耄碌」という言葉が頭に浮かんだ。
 天空には薄い雲を透かして、今年初めて見る夏の大三角形が何かもの言いたげに鈍く光っていた。

 きょうの映像は、400枚ほどの写真を合成したものだとか。時季が少しズレましたが、かんとさんの力作を載せることができました。本日はこの辺で、明日は沈黙します。
 
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