’23年「春」（７）

　今年は春の来るのが遅れているのだろうか。庭のボケの白い花がまだ咲かないし、西側の傾（なだ）れにそろそろ蕗の薹が顔を出してもいいはずだと行ってみてもまだだった。
　そう言えば、昨日ようやく春を告げる山鳩の懐かしい声を聞いたが、今朝はあのボウ、ボウと鳴く声がしない。やはり、近くにあった祠「大崎様」の檜だかサワラの木を伐ってしまったから、毎年今のころには春を告げにやって来た鳥は、もう、来なくなってしまったのかも知れない。早春の風景がひとつ消えてしまったようだ。

　すっかり散歩にも出なくなってしまった。やはり夜の方が合っていたのか、昨年に比べたらその回数は半分以下に減ってしまい、中天に大きく見えていたオリオンもそろそろ後姿を見せ始めつつある。
　週の半ばには用事ができ、来週は高齢者を対象にした自動車運転講習会に行かねばならない。こんなふうにポツン、ポツンと用事が入ってくると、安気気楽に過ごしてきた冬ごもりからもついに這い出す日がきたぞと、そんな自覚を強いられている気がする。気になっている入笠行も延びのびになるばかりだ。
　過ぎてしまえば5か月は短かった。一体何をしていたのだろうと、呆気なく過ぎた時をいつもの年よりかさらに強く感じている。牧場が始まるのも、あと1ヶ月と少ししかない。

　今、朝風呂に入っていたら、山鳩の声がした。しかし、以前ならしつっこいと思うほど鳴き続けていたのに、あっさりと鳴き止み、どこかへ行ってしまったのかもう声はしない。1曲歌っただけで幕間に消えてしまった歌手のようだが、もっといい舞台となる大木を見付けてそこへ行く前に、お義理で1曲だけ歌ってくれたのかも知れない。
　
　covid－19、人々はこの流行り病に慣れて来たのか、以前のように話題にならなくなった。報道する側の量が減った影響も大きいだろう。ともかくも今月の13日からだったか、マスク着用が緩和されるらしい。それで、普通の暮らしが戻ってくればいいのだが、果たしてどうなるか。
　考えてみればこの3年間、中高生、いや大学生も、まともな授業が行われないうちに、卒業していくことになる。これはかなり彼ら、彼女らのその後に影響を及ぼすような気がする。
　よく、学生時代に生涯を通じた友人ができると言われたが、われわれの時代はひと頃言われたマスプロ教育に加えて、学生運動や学校封鎖などの影響もあり、そういう友人があまりできなかった。今になって大きな損失であったと思っているが、そんな折、数少ない友人の訃報が届いたりすると、今さらながら余計にそのことを思う・・・。
　
　本日はこの辺で。