入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’21年「夏」(44)

2021年07月23日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 それなりにキャンプ場も賑わい、忙しい日が続く。昨日はTDS君が息子のF君を連れてきてくれた。テイ沢の一番上流に位置する壊れた丸太橋の修理のためで、生憎TDS君は腰を痛め重量物を持つことが困難なため、それでF君を連れてきたわけだ。
 
 丸太橋はどこも木が古くなり、そのことにまず二人とも改めて驚いた。無理もない、もう、10年以上は経っている。その間には3回だか4回大雨のために流れてもいる。大規模な修理や架け替えをしなければいけない時期がきてしまったことを痛感したが、果たして再びそれができるのか、ここで断言することは難しい。
 下から2番目の丸太橋は少し傾いてしまい、上から下りてきた女の子が渡れないと大きな声を上げているのを見て、声を掛けた。夫婦が淵には太い流木が2本も流れ込み、行き場を失っていた。またそのすぐ上には2本の木が倒れ込んでいた。
 そういうところを目にしてあれこれ考えながら6番目の橋を渡った所で、小学校低学年と思われる20人以上の子供を連れた団体と出くわした。前にも会ったことのある人物が先導していて、思わず声を荒げてしまった。丸太橋には手摺りがなく、不安定で、あんな小さな子を多数連れて通行することなどもともと考えていなかった。大阿原からテイ沢に下る場所にも、丸太橋が痛んでいるので通行を自粛するようにと注意書きも出してある。
 今年は、富士見側からの牧場内を通る林道の枝打ちに多くの時間を取られ、気にはしていたがテイ沢まで手が回らなかった。草も予想以上に伸び、丸太橋の状態は今呟いた通りだった。良かれと思ってしたことだが、そんなこんなで、近い将来に思いがけない事故でも招くことになるなら、丸太橋は補修するよりか逆に落としてしまった方が無難かも知れないなどと、思案を重ねながら歩いていた時だった。
 
 後味の悪い思いをじっと抱きながら、それでもともかく二人に協力して貰って、一応は橋を架けるだけは架けてきた。まだ手を入れなければならない箇所もあったが、雷鳴がして雨が降り出し、番線が尽きてしまったのをしおに切り上げた。

 丸太橋の架け替えする以前、森林管理署は、あの沢に架けた丸太橋はあくまで作業用のもので、それが終了した以上、維持することは考えていないと言っていた。
 あの沢は美しい。もしかしたら人の訪れることなど稀な、静かな自然のままの渓にしておくべきだったかも知れないと、その思いは以前からずっと今も、気持ちのどこかにはある。

 O沢さん、結構です。今夜にでもTELします。かんとさん、承知しました。本日はこの辺で、明日は沈黙します。

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     ’21年「夏」(43)

2021年07月22日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

 昨夜というか、時間はすでにきょうになっていたが、突然、何か持って来いという英語の声で目が覚めた。驚いて外に飛び出し、声のする方へ行ってみると、以前にも来たことのあるフランス人2名を含む、予約6名のうちの先行した4名だった。いくら何でもそんな夜中に来るとは考えていない。しかも、断りもなく前回と同じ場所にテントを張ろうとしているところだった。
 フランス人は顔見知りだったが2名の男女は新顔で、歓迎せざる応対に明らかに戸惑い、困惑していた。後で分かったが、どうやらその2名の日本人はキャンプ場ではなく、どこか山の中ででも過ごすものと思って来たようだった。
 もう一つ気になったのは、彼ら彼女らはマスクをしていなかったことだ。当然そのことも強く指摘した。前回と違うあまり友好的でないこっちの態度にフランス人は面食らいつつ、それでも4名は言われるままテントの張る場所を移動した。勝手も違い不満もあっただろうが、あんな夜中に事前の連絡もなく来た方が責められるべきで、他の人のことに無頓着なのは困ると言っておいた。やがて後続の2名も来て、とにかくその場は治まった。

 ここを訪れた人々は皆が楽しみ、満足して帰っていってもらいたい。そのために、混雑しないように人数も制限し、毎回テントの設営場所に頭を悩ませ、訪問者の意向も聞かないわけではないけれど、ある程度は事前にテントを張る場所も決めている。加えて完全に予約制で、中には9月の予約までが入っている。
 こんなふうに呟くと、ここはかなり堅苦しい場所かと思われるかも知れないが、毎年のように、それも複数回にわたり来てくれる人たちもいるわけで、どうかあまり敬遠せずにアナタにも来てもらいたい。

 きょうのUme氏のPHと同じく、いかにも夏らしい青空に真っ白な雲が浮かんでいる。昨夜は前述の彼らのお蔭で、美しい星空を眺めることもできた。昼の気温25度、晴れ。いい風が吹く。ここにいれば、下界の炎暑を忘れることができるだろう。本日はこの辺で。

 
 
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     ’21年「夏」(42)

2021年07月21日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

  午後3時、気温25度。きょうは昼ごろからあまり気温は変わらない。牛たちは喉が渇いたのか、いつもなら夕方なのに水を飲みに下りてくるのが早かった。ついでに塩も欲しかったらしく、あまり品のよくない声が聞こえてきた。どうもあの牛の群れには塩をせがむ役がいるらしく、古ぼけた汽笛のように聞こえる咆哮の主は毎回同じ気がする。
 水場に行ってみると、ホルスも和牛も全頭らしく、その中の何頭かの和牛が近寄ってきて、いつもの警戒心の強い和牛2頭は群れの外へ出ようと浮足立つ様子を見せた。数えてみたら1頭足りない。もう一度数え直してもやはり結果は変わらなかった。念のため、全頭を耳に付けている牧場の管理番号を記録しながら確認しても依然として1頭足りない。
 近くのコナシの林の中を流れるちょっとした沢に行ってみても、牛の姿はない。1頭だけが確認できないなどということは滅多にはないから、当然、何らかの事故の可能性が強まる。折角、きょうは頭数確認が簡単に済むと思っていたのに、どこにいるのか分からない牛、その段階ではすでにホルスだと分かっていた、を探して小入笠を頂点にした三角形の放牧地を歩き回らなければならない。そう思ったら、急に疲れを感じ、目の前の急な斜面がうらめしく思えた。
 きょうは朝から東部支所に出掛け、さらに1週間ぶりに草だらけの家まで足を伸ばし、そして再び牧場に戻ってきた。走行距離は100㌔近くになっていたし、途中の山の中でも余計なお節介仕事までしてきたからバテ気味であった。
 仕方なく塩袋を車に戻し、代わりにいつもの仕事道具を持ってヨロヨロと歩き出した。群を探すよりか、1頭のはぐれ牛を探すのは何倍も大変だが、それでもともかく無事にいてくれることを願うしかなかった。
 きょうは三角形の底辺のほぼ真ん中から頂点の頭を目指すことにした。いつもの調子がでないまま、しばらく登った。そして何気なく見上げたら、帯状に残るコナシの樹々の間に何かが動いた。目を凝らすと、白いものが動き、さらに食い入るように見たら、案じていたホルスタインだった。
 ああいうふざけた行動する牛はすぐに分かった。No.3の未経産のデブで、いつだったかも小入笠の中腹で電牧を切って牧区外に出て、憎ったらしいほど悠然と草を食んでいた牛だ。しかも、電流に触れたはずなのに、他の牛の確認を終えて戻ってきたら自分で勝手に牧区内に戻っていた。人もそうだが、牛も分からないのが時々上がってくる。

 遠くで雷鳴がする。空気も心なしか冷えてきた。一雨来るかも知れない。本日はこの辺で。
 
 
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     ’21年「夏」(41)

2021年07月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 久しぶりに真夜中に起きて、長いこと棚の上に置きっ放しにしていた古いウイスキーを飲んでいる。1杯目はお湯割りにして、2杯目は生のままにした。アルコールは感覚を鋭くさせるのか、山の中の夜の静寂を耳に痛いほど感じている。いつの間にかここでの暮らしが6日続き、そろそろと思うも、まだ下に帰る予定が立たない。

 昨日は午前9時の段階で気温が25度まで上がっていた。下界の伊那では最高気温36.1度を記録したとかで、これは長野県内でも最も高かったようだ。気象予報では「低い土地の浸水、土砂災害」への注意喚起が熱中症対策に変わり、「こまめに水分補給を」とことあるごとに聞かされる。COVID-19、オリンピック・パラリンピック、炎暑と、夏の到来をあまり歓迎できない人が多いのではないか。

 時々、今年は山小屋、キャンプ場の営業をしているのかという問い合わせが来る。殆どが馴染みの人たちだが、そうでない人もいる。それに対しては「細々と」と応え、予約に余裕があれば受け付け、昨年のように断ることはしない。昨夏は営業を開始したのは8月からだった。
 昨日の夕方、下見に来た中年の男の人は「ここは全然宣伝してないですね」と言って、不思議そうな顔をした。「全然」してないわけではないが、確かにそう思えるかも知れない。それに応える代わりに、静かな牧場の夕暮れの味わい深さを伝えたら頷いてくれていた。
 
 気になっていたテイ沢の壊れた丸太橋に使う、結束用の板を昨日富士見で買ってきた。あそこには、あんな丸太橋などない方がいいかも知れないとも思い修理を怠ってきたが、すでに4本の丸太を運び込んであるし、近日中に誰でも渡れるようにしようと思っている。
 今年は登山口からここまで来る牧場内の林道に被さる、コナシやモミの枝打ちにかなりの時間を取られ、牧場の外にまで手が回らなかった。その間、大雨が降っても、橋が流れなかったのは有難かった。

 以前は「ナシの木」、現在は「貴婦人の丘」と呼んでいるあそこは、20年以上も前にテレビの番組に使われ、いまだに未知の人からその場所への立ち入りを希望する旨の問い合わせが来る。気持は分からないどころか充分に察せられるが、原則お断りしている。何かのついででもあれば別だが、個人のこうした要望にいちいち応じる時間も、人もいないのが実情で、是非ご理解いただきたい。
 本日はこの辺で。
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     ’21年「夏」(40)

2021年07月17日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                      Photo by かんと氏
 
 午前5時半、快晴、気温13度。日はまだ山の背後から昇ってこない。鳥の声がしない朝で、風が冷たい。下界では熱中症が心配されているようだが、現在の気温からでは、それを想像するのは難しい。日中になれば、それでもきょうは25度を超すかもしれない。

 昨夜、9時ごろだったか、星空を眺めようとして外に出たら、小屋の前にあるはずの軽トラがない。驚いた、慌てた。盗まれたのかと思い、次には制動をかけ忘れてどこかに突っ込んでいないかと考えた。急いで部屋に戻り、ヘッドランプ(いくら片仮名は避けようとしても「前照灯」では無理だろう)を持って再び外に出た。しかしどこにも白い軽トラの姿型などない。
 長年使えてくれた軽トラを走行距離20万キロ直前で乗り潰したため、あの車はまだ乗り始めて1ヶ月かそこらしか経っていない。中古車ながらかなり程度の良い、走行距離も3万キロというシロモノで、大切に乗っていた。買換えは農協にとってもかなりの出費だったはずで、それをたった1ヶ月かそこらでなくしてしまったとなればそれこそ面目が立たないし、買換えを承諾してくれた人々に顔向けもできない。
 当てもなくしばらく途方に暮れながら歩いた。盗まれたのならもうそこら辺にあるはずもなく、探しても無駄だと思いつつも、それでも仕方なくトボトボと林道の方へ歩いていった。すると、ヘッドランプの光りの先に何か白い物がボウッと浮かぶように見えた。
 目下、2頭のホルスを検査場に置いて飼っている。給餌、給塩、給水と、それなりに手がかかる。草だけなら体重の12パーセントを1日に食べてしまうと言われているから、あの牛2頭でも60㌔やそこらは必要になる。草は牧場内にふんだんにあるが、昨日はわざわざ北門の外まで若くて柔らかいカヤやヨモギなどを食べさせようと出掛けてもいった。牛はカヤの葉を好む。よくあの鋭い葉で舌を切らないものだと不思議に思うくらいだ。
 昨夜、翌朝の草を用意しておこうとキャンプ場の近くで草を刈り、すっかり車のことを忘れてそのまま小屋に戻ってきてしまったのだと、ようやく分かってきた。第1牧区から下ってきて、露天風呂の水漏れの手当などをして、そのまま小屋へ来てしまうということはままある。しかしそういう時は、すぐにそのことを思い出す。
 昨夜はそうでなかった。慌てふためき、焦った。「耄碌」という言葉が頭に浮かんだ。
 天空には薄い雲を透かして、今年初めて見る夏の大三角形が何かもの言いたげに鈍く光っていた。

 きょうの映像は、400枚ほどの写真を合成したものだとか。時季が少しズレましたが、かんとさんの力作を載せることができました。本日はこの辺で、明日は沈黙します。
 
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