市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…弁護士費用情報不開示の審査請求で総務省審査会へ意見書送付

2018-01-19 23:50:00 | 群馬高専アカハラ問題
■2018年1月16日付で総務省情報公開・個人情報保護審査会事務局から、諮問番号:平成29年(独情)諮問第86号事件に関する、諮問庁の高専機構(実質は群馬高専)が提出した理由説明書とともに、意見書又は資料提出の通知が当会事務局に届きました。それによれば、意見書等の提出の場合は、提出期限が2月6日(火)とされています。そのため急きょ意見書をまとめて、本日1月19日に、簡易書留で審査会事務局あてに郵送しました。

意見書の簡易書留郵便物等受領証と領収書。

 これまでの経緯は当会の次のブログ記事をご覧ください。
〇2017年10月13日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…群馬高専と高専機構の経理についてのレポート
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2436.html
〇2017年11月16日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示取消訴訟の弁護士費用がほぼ不開示とされる
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2462.html
〇2017年11月17日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ隠蔽を受け継ぐ山崎現校長の弁護士費用不開示に審査請求
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2463.html#readmore
〇2018年1月16日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…「弁護士費用」部分開示の審査請求で高専機構が当会宛に諮問通知
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2528.html#readmore
〇2018年1月17日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…「弁護士費用」部分開示審査請求で高専機構の理由説明書が届く↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2530.html#readmore

*****総務省審査会への意見書*****PDF ⇒ 2018011900.pdf
               意見書
                             平成30年1月19日
総務省 情報公開・個人情報保護審査会事務局 御中

                  審査請求人:
                   郵便番号  371-0801
                   住  所  群馬県前橋市文京町一丁目15-10
                   氏  名  市民オンブズマン群馬
                         代  表 小川 賢(65歳)
                   連 絡 先  TEL:027-224-8567
                         事務局長 鈴木 庸(66歳)

 下記1の諮問事件について、諮問庁の理由説明書に対する審査請求人の反論および追加意見を、下記3、4の通り審査会に提出する。

1 諮問事件
 諮問番号:平成29年(独情)諮問第86号
 事件名:特定の訴訟に係る弁護士への報酬に関する特定年度支払決議書等の一部開示決定に関する件

2 開示請求に係る法人文書の名称
 独立行政法人国立高等専門学校機構(以下「諮問庁」という)が被告代理人として選任した弁護士の所属する法律事務所との委任契約等に関する文書で以下の情報
 ・諮問庁の会計歳出のうちどの部分から弁護士費用が捻出されているのかに関わる情報
 ・諮問庁の予算内から当該法律事務所に対してこれまでに支払われた、および支払われる予定の報酬等(着手金・日当・交通費等の一切)の総額およびその内訳が把握可能な全ての情報
 ・諮問庁と当該法律事務所との間に結ばれた契約内容のうち、報酬等に関わる部分

3 審査請求人の反論および追加意見
 審査請求人は、平成29年10月11日付で、諮問庁に対して、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という)第4条第1項の規定に基づき、前項2の法人文書(以下「本件情報」という)について開示請求を行ったところ、機構は平成29年11月10日付で以下の処分1および2をなした(まとめて以下「本件処分」という)。
 
 (処分1)群高専総総第212-1号「法人文書開示決定通知書」において、「平成28年度支払決議書」中情報のうち、審査請求人の求める情報も含め大半を不開示とした。

 (処分2)群高専総総第212-2号「法人文書不開示決定通知書」において、「委任契約書」を不開示とした。

 このため、審査請求人は平成29年11月17日付で審査請求を行い、それに対して平成30年1月16日付情個審第85号別添で諮問庁の理由説明書が送付されたため、ここに次のとおり審査請求人の反論および追加意見を述べる。


(1)諮問庁は、処分1に関し、起票部署を公にした場合には、当該業務に携わった担当者が他の情報と照合することにより、特定の個人を容易に推測されることになる旨主張する。しかしながら、

 ・部署名から直ちに特定の個人を「容易に推測」することは各部署の人数からして不可能である。
 ・常識的に考えて、組織内で会計業務や契約締結等を担当する部署というのは決まっている。
 ・そもそも部署から直ちに特定個人を突き止められるような「他の情報」は存在しない。
 ・上3つの事実を無視しても、当該業務は当然公務(加えて言えば、役職から当然想定されうる業務の範囲内)としてなされているものであって、仮に担当者が判明したところで当該人物に不利益が生じたり、事務の適正な遂行が妨害されることは考えづらい。

 以上の理由により、諮問庁の主張は、当を得たものとは認めづらい。

(2)諮問庁は、支払決議書番号及び支払管理番を公にした場合には、当該校における支払業務に関わる件数から事業規模が明らかになると主張する。しかし、常識的に考えて「決議書番号」「件数」「事業規模」の三者はまったく無関係なものであり、率直に言って意味不明である。少なくとも、一般的に支払案件に対し順番に付与されていく決議書番号/管理番号から「事業規模」を明らかにする方法があるとは考え難い。
 また、もし仮におおまかな事業規模が推測されたとしても、それにより即座に諮問庁ないし当該弁護士事務所の業務に悪影響を及ぼすという理屈はない。

(3)諮問庁は、摘要のうち内訳に該当する部分および品名/件名のうち内訳に該当する部分を公にした場合には、事務処理上の機微にわたり業務内容が容易に推測されることになる旨主張する。
 この「業務」が諮問庁・当該弁護士事務所どちらの業務を指すのか判然としないが、どちらを指すとしても、契約相手が弁護士事務所であることから、一般的な弁護士任用の費用体系から言って着手金・日当・交通費・成功報酬といった品名しか有り得ないのであり、名称に多少の違いはあるにしても、弁護士業務という性格から通常想定されうる名目の範疇であると考えられる。したがって、特別に事務処理上の機微として扱われるべき情報とは言い難く、加えて名目を公開することによって「業務内容を容易に推測」し、それが「事務の適正な遂行」に支障を及ぼすことは考え難い。

(4)諮問庁は、当該弁護士事務所への報酬等金額を明らかにしない理由について、当該弁護士の今後の業務に影響を及ぼし、その権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるからという旨主張し、次いで援用する形で2つの答申例(平成29年度(行情)答申第76号、平成28年度(独情)答申第96号)を引用する。

 しかしながら、答申の原文を読めばわかる通り、諮問庁(機構)の引用箇所は「審査会が確認したところの当該諮問庁の主張」であり、決して審査会の判断そのものではない。

(参考:平成29年度(行情)答申第76号より一部引用)
(4)不開示部分4について
 ア 当審査会事務局職員をして、諮問庁に対して、当該部分の不開示理由を改めて確認させたところ、諮問庁は、おおむね以下のとおり説明する。
 (ア)当該部分は、・・・(以下諮問庁引用部分と同じ)

(参考:平成28年度(独情)答申第96号より一部引用)
 イ 等(ママ)審査会事務局職員をして、諮問庁に対し、文書1を不開示とした理由等について、改めて確認させたところ、諮問庁は、おおむね以下のとおり説明する。
 (ア)法5条2号イ該当性について
   文書1に記載された事項は、全て、委任した・・・(以下諮問庁引用部分と同じ)


 このように、諮問庁の引用は、あたかも審査会が実際にそう意見したかのようにミスリーディングさせる非常に悪質なものであり、そもそもが「答申」の引用ではない。公機関である諮問庁がこのような稚拙な情報の切り取りを行うことは、決して許されることではなく、また審査会や答申への侮辱とすら形容してよいものである。

 また特に、諮問庁が平成29年度(行情)答申第76号を援用していることについて、アイデア等が事業運営や競争の核心となる私企業と弁護士事務所を同列に、あるいは入札という形で競争を行う私企業と、競争なきままに選定理由も明らかとされず随意契約という形で任用される弁護士事務所を同列に扱うことは明らかに妥当ではない。
 加えて、この答申例においても、競争上の不利益が生ずるとまではいえない費目については金額の開示が認められており、むしろ諮問庁自身が金額の不開示が妥当ではないことを証明する形となってしまっていることも特筆すべき事柄であろう。

(参考:平成29年度(行情)答申第76号より一部引用)
(エ)経費の内訳部分について
(・・・途中省略・・・)
 c しかしながら、支出項目部分のうち原処分において既にその全てが開示されている支出項目名は、諸謝金、人件費、旅費といったごく一般的なものであり、それに見合う項目ごとの金額(計画額小計部分)を開示しても、詳細な積算単価・積算内訳が判明するものでもないため、競合他社との間で競争上の不利益が生ずるとまではいえず、法5条2号イに該当しないことから、開示すべきである。
   また、当該計画額小計部分を開示することにより自ずと明らかになる事業計画書の 1枚目(10頁)の内訳欄及び同計画書の38枚目(47頁)の再委託金額欄の金額についても、法5条2号イに該当せず、開示すべきである。


(5)そもそも、争訟に関する弁護士任用にかかる費用というのは、その任用時に着手金(相場:20~30万円程度)が支払われ、裁判所への出廷時に決まった日当(相場:数万円程度)と交通費(実費)が支払われ、さらにかかった印紙・郵送代等が実費で支払われ、判決時にその勝訴の度合いに応じて報酬金が支払われる、という体系となっている。
 つまり、諮問庁や当該弁護士がどんな訴訟方針や戦略を立てているか、具体的にどのような業務を行ったかに一切関わらず一定のルールに基づいて弁護士費用は支払われるものなのであり、この具体的金額のみをもって係争中事案の具体的事情を推測することは不可能である。
 加えて言えば、具体的金額が開示されたところで、諮問庁ないしは当該弁護士事務所がかかる案件を難しいと評価してその価格をつけたのか、比較的簡単なものと評価してその価格をつけたのか、その他どのような評価をしてその価格をつけたのか、外部の人間は知るすべをもたない。
 したがって、弁護士起用にかかった費用、特にその総額を開示することによって訴訟当事者である諮問庁や当該弁護士事務所の利益が阻害されることはありえないし、加えて、当該弁護士事務所は、依頼者が私人や私企業ではなく公的責任の大きな国家機関(諮問庁)であることを承知の上で当該案件を受注したのであるから、情報開示制度によって当該情報が開示されいささかの不快の念を覚えたとしても、それは受忍すべき限度の範囲内に留まると考えるのが妥当である。

4 本件処分が妥当でないことを示す答申例・判例等
 本項では、本件情報について諮問庁がなした不開示処分が妥当でないことを示す答申例・判例等を、審査請求人によるコメントと引用を交えつつ列挙する。なお、これら答申例・判例については、本意見書末尾に一覧を別表として付記したうえで、写しを資料として添付する。

(1)総務省(旧内閣府)情報公開・個人情報保護審査会による答申例
 審査請求書にも記した通り、平成15年度(行情)答申第41号(資料1)と平成15年度(独情)答申第16号(資料2)が存在する。

 このうち平成15年度(行情)答申第41号については、総務省の公開する答申選に掲載されており(資料3および4)、選任弁護士の報酬額が法5条2号イおよび6号ロに該当しないことがすでに明記されている。

(参考:答申選掲載事件名一覧より一部抜粋)
 58 答申15(行情)41「特定訴訟に係る国側代理人弁護士と国との間の訴訟代理等に関する文書の不開示決定に関する件」
 ・選任弁護士の報酬額について、法5条2号イ及び6号ロ該当性を否定


 また、これと平成15年度(独情)答申第16号については、総務省行政管理局の作成した「情報公開法に係る主な答申等について」(資料5)においても掲載されており、訴訟代理人弁護士の報酬額は「公にすることにより、当該法人又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」ではないと明記されている。

 これら答申例は、総務省自身が作成した答申選や主要答申の一角として挙げられていることから、その重要性・影響力・決定性においてはその他と一線を画すものであり、諮問庁がこれに従うべきであることは明らかである。

(2)地方自治体による答申例
 地方自治体レベルにおいては、任用した弁護士の報酬に関わる情報の開示を妥当としている例は枚挙にいとまがない。むろん従うべきが法と条例という差異はあるものの、根本的な判断基準のところでその性質を異にするものではない。

 例えば、神戸市平成14年答申74号(資料6)においては、弁護士の氏名、事務所の所在地、電話番号、報酬額について開示が妥当であると裁定されている。

(参考:神戸市平成14年答申74号より一部引用)
イ 争訟事件の処理を委任した弁護士の氏名、事務所の所在地、事務所の電話番号
 弁護士の氏名は、神戸市から争訟事件の処理を受任したことを示す情報である。これを公開しても、当該弁護士の依頼者に神戸市が含まれていることが明らかになるだけであり、これを非公開とする理由は認められない。また、事務所の所在地、事務所の電話番号についても、これを非公開としなければならない理由はない。
 したがって、弁護士の氏名、事務所の所在地、事務所の電話番号は、(中略)非公開とした決定は妥当ではなく、公開すべきである。
ウ 弁護士に対して支払った報酬の額
 (中略)
 弁護士報酬の額が明らかになり、当該弁護士の他の依頼者が自己の支払う報酬額と異なることを知ったからといって、神戸市以外の依頼者から当該弁護士に不信、不満を抱き、信頼関係が損なわれ、当該弁護士の事業活動に支障が生じるとは認められない。
 したがって、弁護士に対して支払った報酬の額は、改正前条例第7条第2号に該当せず、これを同号に該当するとして非公開とした決定は妥当ではなく、公開すべきである。


 また、京都市平成20年答申第82号(資料7)においても、弁護士報酬を明らかにしたからといって当該弁護士の活動に具体的な支障が生じるとは認められないとして、開示が妥当と判定している。

(参考:京都市平成20年答申第82号より一部引用)
2 条例第7条第2号に該当することについて
(2)謝金の額については、評点を基に決定されるが、金額のみが明らかとなったとしても、その具体的な算定根拠までが明らかになるわけではない。
 また、謝金の額については、最高裁平成8年7月19日判決以降、他都市において公開されている事例があり、それによって当該弁護士の活動に具体的な支障が生じているとは認められない。
 さらに、弁護士の報酬については、弁護士法改正に伴い、個々の弁護士が自ら報酬に関する基準を整備し、かつ自己の報酬に関する情報を広く知らしめるよう努めることとなった。したがって、謝金の額が明らかになることによって、当該弁護士が、競業している弁護士、また、当該弁護士に依頼をしようとする第三者から、その能力についての誤解を受けるとは考えられない。
3 条例第7条第7号に該当することについて
 ア 京都市が争訟事件を処理するにあたり弁護士へ支払う謝金の額については、他の公共事業に要する額と同様に公金の支出に関する情報であり、納税者に対する説明責任がある。
 イ 他都市において弁護士の謝金が公開されていること、また、京都市が行う他の公共事業に要する額が公開されていることにより、特段の支障が生じているとは認められず、謝金の額を公開したとしても、京都市と弁護士との間の信頼関係が著しく損なわれ、今後の争訟事件の処理という京都市の事務事業の円滑な執行に著しい支障が生じるとは認められない。


 さらに、千葉県平成15年答申第119号(資料8)を見ても、公機関が選任した弁護士の報酬額が明らかとなったとしても、その競争上もしくは事業運営上の地位に不利益を与えるものではないと判定されている。

(参考:千葉県平成15年答申第119号より一部引用)
 しかしながら、公的機関が依頼者となる事件の弁護士報酬額は、予算の適正な執行という点からすれば、当該事件処理により確保される経済的利益の価額に基づいて客観的に決定されるべきもので、私人や会社が支払う弁護士報酬額よりも、より定型的に算出されているのが実態と考えられる。
 本件についても、実施期間は、「千葉県企業庁争訟事件の報酬等に関する規定(内規)」に定めるところの経済的利益の額に対応する額の上限額を使用し、弁護士報酬額を決定したものである。
 このようにして決定された弁護士報酬額が明らかになったとしても、事業を営む個人の競争上若しくは事業運営上の地位に不利益を与えるものとまではいえない。


 加えて、滋賀県平成29年答申第98~101号(資料9)においても、弁護士報酬は特定事案における契約状況の一端を示すにとどまるものであり、当該弁護士の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとまではいえないと判断されている。

(参考:滋賀県平成29年答申第98~101号より一部引用)
 確かに、弁護士との契約金額や委任契約の内容については、法律事務所報酬規程に基づき、事件の内容や難易度、依頼者の資力など事案毎の事情を考慮して決定されているものと考えられるところである。
 しかしながら、当該非公開情報は、実施機関と弁護士との契約内容や契約金額そのものであると認められ、これを公にしたとしても、特定事案における契約状況の一端を示すにとどまり、当該弁護士の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとまでは言えない。
 当該情報が公金の支出に係る情報であることに鑑みれば、県民等に対する公開の要請が強いものと言うべきであり、実施機関の説明からは、非公開情報該当性を認めるべき具体的な理由は見当たらないものである。

(3)公機関の選任した弁護士の報酬を開示することが妥当とした判例
 このような判例としては、大阪地裁平成8年(行ウ)118号(資料10)がある。この中で、大阪地裁は、公機関の支払う弁護士報酬は、私人や会社が支払う場合と異なり一定の基準に基づき客観的に決定されるものであり、さらにこのことを当該弁護士が承知した上で受任するものであるから、報酬額を開示しただけで当該事務所の営業上の内部方針等が明らかになったり、業務に影響を与えることはないと判定している。また、それまでにも公機関の選任した弁護士の報酬が開示されてきた事例が幾多あり、それによって具体的に当該弁護士の利益が損なわれたケースは存在しないという事実を理由として採用している。

(参考:大阪地裁平成8年(行ウ)118号中判決理由より一部引用)
1 本件条例六条三号本文該当性について
 (三)しかしながら、本件情報は、(中略)、私人や会社が支払った弁護士報酬の場合とはやや趣が異なる。すなわち、地方公共団体が支払う弁護士報酬の額は、予算の適正な執行という点からも、日本弁護士連合及び各弁護士会が定めた報酬規定による基本報酬額や当該事件処理により確保した経済的利益の価額により、一定の基準に基づいてできる限り客観的に決められるべきものであり、依頼を受けた当該弁護士もそれを承知でこれを承諾するもので、その決定に当たって依頼を受けた弁護士との間の人間関係は考慮されるべきではない。このような意味において、地方公共団体が支払う弁護士報酬の額は、私人や会社が支払う弁護士報酬の額よりも、より定型的に算出される傾向があるといえる。このような弁護士報酬額及びその算定に当たって考慮された事項が明らかになったとしても、当該弁護士の他の依頼者が自己の支払った報酬額と比較するなどして、当該弁護士の事業活動上の内部管理に属する営業上の方針が明らかになって、当該弁護士と依頼者との信頼関係が損なわれるとは考えられない。

2 本件条例六条八号該当性について
 (二)本件情報に係る弁護士報酬は、地方自治体が支払った弁護士報酬であって、その性質は、前判示のとおりである以上、本件情報(その額およびその算定に当たって考慮された事項)が公開されたとしても、それは、大阪市の予算執行の内容が公開されたもので、報酬額の決定が適正にされている限りにおいては、それによって、大阪市から依頼を受けた他の弁護士が大阪市に不信感を抱き、それによって、大阪市における同種の事件処理を行うにつき支障が生じる事態はあり得ないというべきである。
 また、調査嘱託の結果によれば、大阪府、徳島県及び徳島市等の地方自治体においては、すでに事件処理の依頼により支払った弁護士報酬の額を公文書公開条例に基づく請求に応じて公開した例があり、そのうち大阪府の担当者は、その報酬は府が定めた一定の基準に基づきその額を支出するという定型的な処理をしており、公開することによる具体的な支障は生じないと判断していることが認められる。

(4)弁護士報酬等情報の公開の普遍性
 上記の答申・判決等を見ても一目瞭然のとおり、すでにわが国の情報公開制度において公機関の選任した弁護士報酬等情報は長らく公開されてきていて、開示を妥当とする答申も蓄積されているものである。例えば橿原市が平成21年に受けた情報公開請求の内容一覧(資料11)を見ても、たった1つの市にたった1年で十数件もの弁護士費用に関する情報公開請求がなされており、しかも報酬等については問題なく開示されていることがわかる。
 このように、弁護士報酬等情報(係争中の事案も含む)が幾多開示されてきたにも関わらず、諮問庁が主張するように、開示によって「業務に影響を及ぼし、当該弁護士等の権利、競争上の地位その他正当な利益が害された」具体的な事例は、皆無と断言してよいものである(仮にあったのだとすれば、それは諮問庁が立証しなければならない)。よって、そのようなおそれも、当然生じ得ないと考えるのが妥当である。

5 結言
 かかる状況を、あらゆる観点から検討、分析、熟慮しても、諮問庁による本件処分には妥当な根拠がなく、その速やかな取消を求める。

6 付言
 また、本件情報に関わる弁護士事務所の所属弁護士が、審査請求人と諮問庁との間で行われている係争の諮問庁側代理人であることは事実であるが、すでに本意見書提出時点で控訴審が終結間近であり、民事裁判において上告が受理されることが一般的に極めて困難であることを考えれば、本審査請求に対する答申が出て開示がなされるまでには係争はすでに諮問庁・当該弁護士事務所の訴訟方針を反映することが不可能な段階に達しているあるいは終結しているであろうことから、現在係争中であることは本質的な問題ではない。仮に係争中であることが不開示事由に加味されるとしても、係争が終わり次第開示することを確約すればよいだけだから、いずれにせよ本質的な問題ではない。

                             以 上

*****別表1*****
別表1 添付資料一覧
●資料番号:1
PDF ⇒ 20180119011.pdf
〇名称:平成15年度(行情)答申第41号
〇作成者:総務省
〇概要:選任弁護士の報酬額について、法5条2号イ及び6号ロ該当性を否定
●資料番号:2
PDF ⇒ 20180119022.pdf
〇名称:平成15年度(独情)答申第16号
〇作成者:同上
〇概要:同上
●資料番号:3
PDF ⇒ 20180119033.pdf
〇名称:答申選掲載事件名一覧
〇作成者:同上
〇概要:平成15年度(行情)答申第41号が答申選掲載案件であり重要かつ決定的な答申であることを示す。なお、表紙と該当箇所のみ抜粋(58番が該当箇所)
●資料番号:4
PDF ⇒ 20180119044.pdf
〇名称:答申選
〇作成者:同上
〇概要:同上
●資料番号:5
PDF ⇒ 20180119055.pdf
〇名称:情報公開法に係る主な答申等について
〇作成者:同上
〇概要:平成15年度(行情)答申第41号、平成15年度(独情)答申第16号が総務省自身認める主要答申例であり重要かつ決定的なものであることを示す。なお、表紙と該当箇所のみ抜粋(14頁目下部が該当箇所)
●資料番号:6
PDF ⇒ 20180119066.pdf
〇名称:神戸市平成14年答申第74号
〇作成者:神戸市
〇概要:弁護士の氏名、事務所の所在地、電話番号、報酬額について開示が妥当であると裁定
●資料番号:7
PDF ⇒ 20180119077.pdf
〇名称:京都市平成20年答申第82号
〇作成者:京都市
〇概要:弁護士報酬を明らかにすることで当該弁護士の活動に具体的な支障が生じるとは認められないとして、開示が妥当と判定
●資料番号:8
PDF ⇒ 20180119088.pdf
〇名称:千葉県平成15年答申第119号
〇作成者:千葉県
〇概要:公機関が選任した弁護士の報酬額が明らかとなったとしても、その競争上もしくは事業運営上の地位に不利益を与えるものではないと判定
●資料番号:9
PDF ⇒ 20180119099.pdf
〇名称:滋賀県平成29年答申第98~101号
〇作成者:滋賀県
〇概要:弁護士報酬は特定事案における契約状況の一端を示すにとどまるものであり、当該弁護士の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとまではいえないと判断
●資料番号:10
PDF ⇒ 201801191010.pdf
〇名称:大阪地裁平成8年(行ウ)118号
〇作成者:大阪地裁
〇概要:公機関の選任した弁護士の報酬を開示することが妥当とした判決(判決要旨、主文、理由のみ抜粋)
●資料番号:11
PDF ⇒ 201801191111.pdf
〇名称:橿原市行政文書公開請求内容一覧表(平成21年度)
〇作成者:橿原市
〇概要:地方行政レベルにおいても、選任した弁護士の報酬等費用情報についての開示が問題なく行われていることを示す。なお、表紙と該当箇所のみ抜粋(99番から116番が該当箇所)
**********

■先日の「校報」人事情報不開示(諮問番号:平成29年(独情)諮問第71号)といい、今回の弁護士情報不開示(諮問番号:平成29年(独情)諮問第86号)といい、国立高専機構=群馬高専の情報秘匿体質は異常なほど際立っています。

 そのため、当会ではそうした体質を改善させるために2件の審査請求手続きを執っています。2018年1月16日に総務省の審査会事務局(TEL03-5501-1760)に確認したところ、2件の審査請求手続きの進捗状況は次のとおりだということです。
**********
①校報:平成29年(独情)諮問第71号
 既に意見書を頂いており、写しを機構にも送って、審査会で審議の段階にある。審査会の開催履歴と、協議対象事案は総務省のHPに掲載している。
 ただし、書類の整った順番に審査にかける上に、行政手続法で定める回答期限というものも決められていないので、いつまでに必ず答申するという確約はしていない。こうして電話で問い合わせいただければ、ファイルの検索に少し手間取るが、個別にお答えさせていただいている。
当会注:ちなみに「校報」人事情報不開示の審査請求は、第5部会で審議中です。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/jyouhou/kaisai.html
 また、第1回目の審議は2017年11月22日に開催されており、次の議事の項目等(4)番に本件事件について記述があります。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000518776.pdf

②弁護士費用:平成29年(独情)諮問第86号
12月25日に諮問のあった事案。ちょうど1月16日の本日付で理由説明書を審査請求人(市民オンブズマン群馬)あてに郵送したばかりなので、まもなく受領できるはずなので、確認いただきたい。
なお、①に比べて②が相対的に遅れている理由は、年末年始にかかり、その分、業務多忙のしわ寄せの影響をうけてしまい、結果的にお待たせいただくことになり申し訳ない。
**********

■今回、上記②の弁護士費用等情報不開示審査請求にかかる当会の意見書を審査会ではどのように評価するのでしょうか。読者会員の皆様と注視してまいりたいと存じます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…オンブズマンが機構=群馬高専への附帯控訴状を東京高裁に提出

2018-01-19 22:06:00 | 群馬高専アカハラ問題
■群馬高専を巡るアカハラ事件について、最初に同校関係者のかたから情報提供を受けたのは、2015年3月でした。その後、同年4月15日に初めて同校に対して公開質問をしてから、今年春で3年が経過しようとしています。このアカハラ事件にかかる情報開示請求は2015年6月26日に同校に提出しましたが、同校では情報の存否応答さえ拒否したため、異議申立て(現在は審査請求といいます)をした結果、同校ではアカハラ情報の存在は渋々認めたものの、再度、アカハラ情報を不開示としました。そのため当会は、2016年10月26日に東京地裁に提訴しました。その1年後、2017年11月24日に東京地裁は「被告が平成28年4月27日付で原告に対してした法人文書不開示決定のうち、別紙記載の各部分を不開示とした部分を取り消す。」とする判決を言い渡しました。

冬木立を前にした東京高裁。10階以上の高層階用エレベーターがアスベスト問題で1基しか稼働しておらず、待ち時間がハンパない。予め余裕をもって出かけること。

〇2015年6月27日:群馬高専をめぐるアカハラ問題で、市民オンブズマン群馬が情報開示請求書を同校に提出
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1651.html#readmore
〇2017年11月24日:【速報】アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示訴訟で東京地裁が原告一部勝訴判決
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2476.html#readmore

 客観的に見て、東京地裁での第一審では、被告高専機構寄りで、かつ極めて無難な判決でした。ところが、機構=群馬高専は、判決正本を受領した日の翌日から起算して2週間の最終日までに控訴状を東京地裁に提出したのでした。一審の裁判長が最大限、国側に配慮しつつ、ちょっぴり原告側の主張を取り入れた温情判決にすら文句をつけて、自らの主張を全て押し通そうという機構=群馬高専の態度は、到底開かれた教育機関とは言い難く、その上から目線の姿勢には、あいた口が塞がりません。

 一審の判決は、
・保護者向けに配布された説明文書は個人情報除き大部分開示
・告発文書・内部調査書類は題名・作成年月日以外不開示

とするもので、そのままでも開示されるのは既に配布済の保護者向け文書がメインとなる群馬高専にとって非常に穏当な判決でした。

 正直言って、裁判所が行政に対して可能な限り配慮した上での判決ですから、普通に考えてもこれ以上の箇所を不開示とすることは難しいものと考えられます。

 しかし、群馬高専はそれすらも外部には出さないとする強硬姿勢を貫いてきたことになります。

■普通このような場合、弁護士も敗訴を恐れて控訴案件は請けたがらないのが普通ですが、今回被告から訴訟代理人に指名された田中・木村弁護士事務所の場合、いくら敗訴して名声が低下したところで、文科省や機構という「お得意様」がいる限りは安泰ということで、「上訴したい」と言われれば二つ返事で請け負う気になったのではないでしょうか。

 というより、弁護士事務所側も勝敗に関わらず着手金が入ってくるので、徹底的に訴訟を続けるよう被告に「アドバイス」をしているのかもしれません。

 それでも、機構=群馬高専にとっては、今回の訴訟を継続したところで、最大でも保護者向け文書程度を不開示にできるくらいしかメリットがありません。

 訴訟継続による業務負担や弁護士費用も考えると、そのまま手打ちにして原判決に従い開示とした方が遥かに楽に済むはずなのですが、もはやそうした冷静な利益・不利益の比較判断は不能になっており、ひとえに"メンツ"のみを気にしている様子が伺えます。

 結局のところ、メンツあるいは時間稼ぎの為だけに本控訴にあたって、追加でさらに弁護士に追加着手金数十万円が支払われ、更に印紙代等で数万円が「群馬高専の」予算から支払われてしまう(しまった)ことになります。

 そしてこれまでは「西尾前校長時代の負の遺産を受け継いだだけ」、あるいは「オンブズマンが提訴してきたので応訴しただけ」という立場を保って居られた山崎現校長ですが、これからはそれは通用しなくなってしまいました。

 彼は自分の意思と責任でアカハラに関する情報を完全不開示とし、その為に群馬高専の貴重な予算を湯水のように使うことを決めたことになるからです。

 群馬高専が控訴審の終了までに費やすであろう訴訟・弁護士費用の合計は、ゆうに70万円は軽く超えると推察されます。これは群馬高専の後援会が学生の留学にあたり補助する額(5万円)の14人分に相当すると考えられます。

 学生に使われるべきおカネを、こうまで無駄に消費されていくのですから、群馬高専の学生・保護者・後援会も随分と軽く見られたものです。

■市民オンブズマン群馬としては、判決内容に不満はあるものの、文書を早期に受け取り迅速な解決を行うことを優先して、控訴は行わないでいました。

 しかし、予想に反して機構=群馬高専が控訴してきたため、こちらも応じて控訴せざるを得なくなりました。

 こちらが控訴しなければ、再検討は被告の控訴箇所についてのみ行われるため、原告オンブズマン側が一方的に負担と原判決取り消しのリスクを背負うだけになってしまいます。ですが、相手の攻撃=控訴に応じてこちらも附帯控訴を行えば、リスク軽減に加えて原判決取り消しで逆転勝訴の目も出てくる為、控訴なしの場合に比べ大幅に有利になります。

 そこで、当会では縷々内部で検討した結果、座して不利な立場に甘んずるよりも附帯控訴に踏み切る方を選択することに決しました。ちなみに、附帯控訴については民事訴訟法第293条に次の定めがあります。
**********
(附帯控訴)
第293条 被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができる。
 附帯控訴は、控訴の取下げがあったとき、又は不適法として控訴の却下があったときは、その効力を失う。ただし、控訴の要件を備えるものは、独立した控訴とみなす。
 附帯控訴については、控訴に関する規定による。ただし、附帯控訴の提起は、附帯控訴状を控訴裁判所に提出してすることができる。

**********

■このように附帯控訴は、口頭弁論の終結に至るまで、それを行うことができるとされていますが、1月15日に東京高裁から「控訴審の口頭弁論期日が2月28日に決まった」という連絡があったことを受けて、当会としては、とくに附帯控訴を遅らせる理由もないことから、機構=群馬高専の訴状に対する答弁書と同じく口頭弁論前に、カウンターとして行なってしまおうと考えました。

 そこで、本日1月19日に、次の内容の附帯控訴状を東京高裁17階の高裁訟廷事務室の窓口に持参して提出することにしました。

*****附帯控訴状*****PDF ⇒ 20180119tir1rtaop.pdf
             附 帯 控 訴 状

   東京高等裁判所第9民事部 御中

 〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10(送達先)
   附帯控訴人(被控訴人,第1審原告)  市民オンブズマン群馬
                同代表   小川 賢
                 電 話 090-5302-8312
                 (市民オンブズマン群馬代表・小川賢)
                  又は 027-224-8567
                 (市民オンブズマン群馬事務局長・鈴木庸)
                 FAX 027-224-6624

〒193-0834 東京都八王子市東浅川町701-2番地
   附帯被控訴人(控訴人,第1審被告) 独立行政法人国立高等専門学校機構
             同代表理事長  谷口 功

 法人文書不開示処分取消請求附帯控訴事件
 訴訟物の価額  金160万円(算定不能)
 貼用印紙額 金19,500円
 上記当事者間の東京高等裁判所平成29年(行コ)第376号法人文書不開示処分取消請求控訴事件について,被控訴人(附帯控訴人)は,控訴に附帯して,同控訴事件の第1審である東京地方裁判所平成28年(行ウ)第499号法人文書不開示処分取消請求事件について平成29年11月24日に言い渡された判決に対して控訴を提起する。

第1 附帯控訴の趣旨
1 原判決中附帯控訴人敗訴部分を取り消す。
2 訴訟費用は,第1,2審とも附帯被控訴人の負担とする。

第2 附帯控訴の理由
   附帯控訴人は,次のとおり附帯控訴理由を提出する。
   なお,固有略称は原判決で用いられたものを踏襲する。また,原判決「事実及び理由」中の第1「請求」,第2「事案の概要」の事実内容について誤りがないことを認める。

 1 アカデミックハラスメント調査の期間・概要・方法の部分開示可能性
   本件文書3(本件高専におけるアカデミックハラスメントに対する事実関係の調査文書)の開示可能性に関して,原判決は,第3-1(3)ア中において「本件文書3には,(・・・中略・・・)⑥同校において行った調査(期間・概要・方法,調査に至った経緯,調査担当者の所属・属性,調査結果。これらの中には,関係当事者の氏名の記述を含む。)が具体的に記録され,④ないし⑥の中には申告者及び申告の対象者の氏名・所属・属性の記述が含まれていることが認められる。」と事実認定をした上で,同イにおいて,「上記認定事実によれば,上記アの④ないし⑥は,申告者,申告の対象者,申告者以外の行為の相手方及び調査担当者の氏名・所属・属性の記述がある上,その他の内容も具体的であることからすれば,上記各個人に関する情報であって,それらの個人を識別することができるものに当たると解される。したがって,本件文書3に記録されている上記アの④ないし⑥の情報は,法5条1号本文の個人識別情報であると認められる。」と判示し,以降法6条による部分開示の可能性は一切検討されないまま,⑥箇所については全面的に不開示が妥当であるとする結論へと至っている。

   しかしながら,「調査が何月何日から何月何日まで行われたか」,「学生何名,教員何名が調査の対象となったか」,「どのような方法で聞き取りを行ったか(たとえば記名式ないし匿名式アンケートで行われたのか,直接聴取したのか,その場合録音等が行われたのかといったこと)」といった情報は,特定個人のプライバシーとは成り得ない極めて一般的な話であり,対象者個々の事情に左右されたものでもない。したがって本件文書3の⑥該当箇所のうち,関係者(ハラスメントの当事者,調査の対象者,調査担当者,文書作成者)の氏名・属性等を除いた調査の期間・概要・方法については,自明に個人識別情報とは成り得ないものであるから,開示が妥当であると考えられる。
   しかるに原判決は,本件文書3の⑥該当箇所について,関係者の氏名やアカデミックハラスメントの具体的内容等個人識別情報と,調査の期間・概要・方法を分離し,後者のみの部分開示の可能性について検討すべきであったところ,開示可能な情報とそうでない情報を一纏めにした不合理な分類に何ら疑念を抱くことなくそれを採用し,全体として不開示が妥当とする判断に至ったもので,不当なものであるから,再検討および原判決取消を求める。

 2 関係者同意の際の文書開示可能性
   本件文書2・3に関して,1審原告(附帯控訴人)は,文書に記載のある関係者らの同意ないしは希望がある場合は,個人識別情報であっても氏名等情報を除いた箇所について部分開示すべきであり,その為に一審被告ないし附帯被控訴人は関係者らにその意志を確認すべきであると主張した。根拠となる主要事実および法的権利は以下の通りである。

 ◆本件文書2・3に記載のあるハラスメント被害者の多くが,原告に対して,彼ら自身の関連する箇所(氏名等情報を除く)の開示に同意,ないしは開示を希望していること(甲16号証,および民事訴訟法第159条1項に基づく原審終結時の被告の擬制自白の成立)。
 ◆被害者ら自身がハラスメントに関して情報公開請求や法的手段を取ろうとしても,時間的・金銭的・精神的負担があまりに多大なため,彼らの同意のもと権利能力なき社団である1審原告(附帯控訴人)がそれらを代替わりして行っていること。加えて,1審被告(附帯被控訴人)が,本件高専で発生したアカデミックハラスメント等事件やそれらに対する対応に疑念を抱く学生らに対し,進学・就職を台無しにすると受け取れる脅迫じみた通告をなし,被害者らによる表立った行動が著しく困難な状況に置かれているということ。
 ◆独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「保護法」)第9条2項1号には,本人の同意があれば個人に関する情報であっても外部への提供(すなわち開示も含む)が可能である旨規定されていること(甲8号証)。
 ◆あわせて保護法9条2項1号に規定される本人同意の確認は電話連絡のみでも成立し,対象となる人数も多大ではないため,1審被告(附帯被控訴人)の業務に深刻な影響を生じさせるものではないこと(甲13号証)。
 ◆かつて,本件高専において別個の重大事件(在籍する寮生3人が短期間のうちに次々自殺・不審死を遂げた事件)が発生した際,附帯控訴人が附帯被控訴人に当該事件に関する調査報告書等の開示を求めたところ,附帯被控訴人が関係者(特に遺族ら)に意思確認をした上で故人らの氏名等情報を除いた内部調査文書を開示した経緯があり,関係者らの意思確認とそれを踏まえた上での情報開示が可能であることは附帯被控訴人も認識しているはずであって,本事件についてのみそうしないという合理的な理由が認められないこと。
 ◆プライバシーを有する関係者ないしは被害者らの意思を無視する形で該当箇所を全面不開示処分とすることは,当該人物ら(なお,かかる該当者は全員成年である)の自己情報コントロール権の侵害であり,また原則開示を定めた法にも違反すること。

   これに対して,原判決は,第3-4中において,「そうすると,これらが開示された場合には,今後,自身のプライバシーに関わる情報が保護されないことをおそれて,ハラスメント等について関係者が申告をすることや調査に応じることに委縮し,被告が人事管理に係る事務を行うのに必要な情報を十分に収集することや記録化することが困難となるおそれがあるというべきである。」として法5条4号に該当すると認定したうえで,同5において「原告は,本件文書2及び3について,法人文書に個人のプライバシーに関する情報が含まれるとしても,当該個人が開示に同意した場合には,その人物に係る情報は開示されるべきである旨の主張をする。しかしながら,前記4のとおり,本件文書2および3に記録されている個人のプライバシーに関する情報は,法5条4号へのおそれがあるものとして同号の不開示情報にも該当するものであるところ,同号へのおそれは,今後の人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれをいうから,当該文書に係る当該個人がたまたまその開示に同意したからといって,今後における上記のおそれがなくなるというものではない。したがって,原告の上記主張は採用できない。」と判示する。

   しかしながら,本件情報を開示することが法5条4号ヘに規定されるおそれを現実に生じさせる場合というのは,情報のプライバシーに係る本人が関与・関知し得ないまま,あるいはその意志に反した状況で,文書保有機関により勝手に情報開示が行われた場合に限られるとする解釈が妥当である。
   なぜならば,そのようなおそれというのは,情報提供者その他が所属機関に対し証言した内容について,「無断で」外部に漏らされてしまう危険性が生じるからこそ,一種の恐慌を起こしせしめ,公正かつ円滑な人事に支障をきたす故に生じるからである。
   一方,本人同意の如何が開示に関する決定的な要件となっているのであれば,逆に「同意がなければ絶対に無断で開示はなされない」という一種の証明となるのだから,むしろのちの情報提供者等の安心感を盤石にすらするものであり,後々にわたってもそのような恐慌は起き得ないと考えるのが妥当である(無断ではなく,本人同意の下で開示が行われたと分かっている状況で,原判決が危惧するような「おそれ」が現実に生じるという合理的な説明は見当たらない)。
   したがって,法5条4号に規定される「おそれ」がそもそもどうして生じるのかといった要件や法の趣旨を検討,考慮することなく,最初から法5条4号に該当するということを検討不足のまま認定,既成事実化し,その上で判断を下した原判決は論理が逆転しており,極めて不当である。
   加えて原判決は,附帯控訴人が提示した保護法9条2項1号の規定,情報不開示によって生じる自己情報コントロール権の侵害とも整合性が取れておらず,それについて一切の検討,説明もなしていない。
   結局,本人同意を前提としたこうした運用は,法5条の意図するところとは何ら矛盾するものではないし,それを支持する保護法9条2項1号とも整合性が取れるものであるから,本件文書2および3については,附帯被控訴人が,係る関係者らに開示に関する意思確認連絡を行ったのち,同意ないし希望のあった箇所について,開示すべきである。

3 以上のとおり,原判決は検討不足や不合理な法解釈に基づくものであるから,取り消されるべきである。

             添 付 書 類
 附帯控訴状副本     1通
**********

■東京高裁が入る東京高等・地方・簡易裁判所庁舎についたのは午前9時40分ごろでした。入口で身辺チェックの列に並び、5分くらいかかって中に入ると、エレベーターホールに柵があり、「10階以上の人はこちら」という看板がありました。それを進むと、向かって左側の高層階用エレベーターには全て張り紙で使用禁止とあり、ドアの周囲にはテープで目張りがしてありました。

 これについて昨日1月18日に、東京高裁や東京地裁などが入る東京都千代田区の合同庁舎(地上19階、地下3階建て)のエレベーター8基で、国の測定基準値の3~15倍の濃度のアスベストが検出されたというニュースを思い出しました。


それにしても裁判所の中でアスベスト問題が発覚するとは・・・。

 報道によれば、アスベストが検出されたのは、かごが上下するエレベーターシャフトで、昨年9月の定期検査では異常はありませんでしたが、昨年12月の検査でアスベストがシャフト空間で検出されたため、東京高裁は1月10日に来庁者用エレベーター19基のうち18基の運転を停止し、検査を進めていました。うち10基については、検出結果が国の測定基準値を下回る濃度だったり、清掃で濃度が低くなったりしたとして、1月16日までに運転を順次再開させました。

 停止中のエレベーターは、現在、計19基中の8基で、いずれも10階以上の階に停止するエレベーターです。そのため、朝10時からの開廷が迫り、かなり混雑している時間帯に遭遇してしまいました。10階以上へのエレベーターは一つしかなく、1階に降りて来るまで10分ほど待たされました。

 ようやく乗り込んで、17階の高裁訟廷事務室受付にたどり着き、附帯控訴状の提出手続をしました。窓口で附帯控訴状を提示し、「収入印紙は1万9500円でよいですか?」と確認したところ、受付担当職員は「念のため、この一つ下の階にある第9民事部で確認してください」と言いました。また「郵便切手は2,260円が必要」と言われました。


郵便切手内訳表(2,260円の場合)。

 1台しかないエレベーターで地下1階にある郵便局まで往復することを考えると、いつ戻れるか分からないため、ウンザリした表情をしていると、見かねたのか担当職員が、「とりあえず内容をチェックして附帯控訴状だけは受領しますので」と言ってくれて、「少し時間がかかるので、そこでお待ち下さい」と言い残すと、奥に消えていきました。そして、5分ほどすると受領票をくれました。これを見ると、附帯控訴事件番号は東京高裁平成30年(行コ)第18号となっております。


東京高裁が発行した附帯控訴状受領おしらせ票。東京高裁第9民事部扱いの附帯控訴事件番号「平成30年(行コ)第18号」であることがわかる。
PDF ⇒ 20180119ti.pdf

 というわけで、収入印紙の金額はあとで第9民事部に念のため確認することにしました。受付の職員は「まだ2月28日の弁論期日まで時間があるから、収入印紙は切手と一緒に後日郵送してもらっても構いません」と言ってくれたので、とりあえず後日で第9民事部に送ることにしました。

 そして、午後、群馬県に戻り、さっそく第9民事部に電話をして、収入印紙の金額を担当書記官に聞いてみました。
「午前10時前に附帯控訴状を17階の高裁民事訟廷事務室に提出したのですが、窓口で、念のため収入印紙代については第9民事部に確認したうえで、切手代2260円と一緒に郵送で構わないからあとで送るようにと言われました。控訴では、住民訴訟のような訴額算定不能事件の場合、ネットを見ると1万9500円の収入印紙を貼ればよいというふうに書いてありますが、それで大丈夫ですか?」

 すると、当該書記官は次のとおり答えました。
「さきほど上の階にある訟廷事務室から、オンブズマンさんから附帯控訴状が提出されたと聞いており、収入印紙代等について確認するように持参者に伝えたと連絡がありました。こちらから連絡すべきところ、電話をいただいて恐縮です。実はまだ附帯控訴状の本文がこちらに回ってきていないので、内容を見たうえで収入印紙代と切手代を確定してから連絡さしあげます。書類がこちらに届くのは週明けになってしまいますが(距離的には1階しか違わないのに!)、内容を拝見させてもらったうえで、オンブズマンさんにご連絡します」

 ということで、収入印紙代と切手代は、高裁から確定金額の通知が来週前半あたりにあり次第、第9民事部あてに郵送で送る予定です。

■併せて第9民事部の書記官に、機構=群馬高専の控訴状副本などを同封した期日呼出状について、いつ東京高裁が当会宛てに発送したのかどうか、確認してみました。
「先日、うかがった2月28日開廷予定の事件の期日呼出状について、まだ当オンブズマン事務局に届いていないようなので、いつ送ったか教えてください」

 すると書記官は、次のように言いました。
「実は昨日オンブズマンさんの事務局あてに送りました。おそらく今日か明日あたり届くと思います」

 こうして、いよいよ群馬高専のアカハラ事件を巡る関連情報の不開示処分取消訴訟は、東京高裁の場で、控訴審と附帯控訴審が同時に繰り広げられる運びとなりそうです。引き続き読者会員の皆様には、控訴審・附帯控訴審での争訟の行方にご注目いただければ幸いです。


2月28日(水)13:30から東京高裁で再び問われる群馬高専の情報秘匿体質。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考情報「東京高裁からの控訴審弁論期日等にかかる電話協議の模様」
**********
電話先:東京高裁第9民事部 橋?(はし)書記官 電話番号:03-3581-2018
日時:2018年1月15日(月)16:21
連絡内容:
【オンブズマン】
さきほど当会事務局のほうに電話をいただき恐縮する。要件は何か?
【東京高裁】
連絡が遅くなり申し訳ない。控訴人である国立高等専門学校機構から、控訴状が提出されたので、初回弁論期日を設定したい。控訴人および東京高裁の都合により、2月後半以降の水曜日に設定したい。喫緊では、2月28日(水)の午前10:30ないし午後1時30分が開いており、その日は、控訴人の高専機構も午前午後どちらでもOKという。どちらが都合がよいか?
【オンブズマン】
2月28日(水)13時30分を希望する。
【東京高裁】
それではその日時に決定し、控訴人である高専機構の切手を使って、期日呼出状および控訴状の副本を郵送でオンブズマン事務局あてに直ちに発送する。
【オンブズマン】
ところで、この件ではいつ期日呼出状が到来するのか、控訴人にも聞いてきたところだが、2月28日に決まったことで、安心した。また、東京高裁には、附帯控訴の手続きについて以前相談したところ、期日呼出状が到来した時点で手続きを開始すればよいと教わっている。今回、期日呼出状が届いたら、いつの時点で附帯控訴状をどのように提出すればよいか?
【東京高裁】
期日呼出状が届いた時点以降であれば、いつでもかまわない。郵送であれは当第9民事部あてに送ってもらえれば構わないが、持参であれば、東京高裁17階にある「民事訟廷事務室事件係」が窓口となっているので、そこに提出してもらいたい。持参であれば、その場で不備等があれば直接説明ができるので、都合がよいと思う。そうすれば、2月28日の弁論期日に、控訴状も付帯控訴状も一緒に審理できることになる。
【オンブズマン】
了解した。すでに附帯控訴の書類の準備はほぼできているので、期日呼出状が届き次第、なるべく早い時点で、上記の東京高裁の窓口に伺うことにする。
【東京高裁】
期日呼出状と国立高専機構の控訴状の副本はなるべく早く送達するので、オンブズマン事務局にもそのように伝えておいてほしい。
【オンブズマン】
了解した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする