■群馬高専の電子情報工学科を舞台に発生した陰湿極まるアカデミックハラスメント(アカハラ)事件。この忌まわしい事件に関連する情報公開請求を発端として、群馬高専側が情報秘匿体質を存分に発揮したため、現在、東京高裁で係争中であることは既にご報告のとおりです。この度、1月27日に当会事務局あてに、機構=群馬高専の訴訟代理人弁護士事務所から控訴理由書がようやく届きました。
東京地裁での判決言渡し以降の経緯は次のブログ記事を参照ください。
○2017年11月24日:【速報】アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示訴訟で東京地裁が原告一部勝訴判決!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2476.html
〇2018年1月21日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…東京高裁第9民事部から2月28日の弁論期日呼出状と控訴状が届く↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2536.html
あらためて、この訴訟事件のこれまでの経緯を振り返ってみます。
当会が群馬高専の複数の関係者の方々から、学内での深刻なアカハラ行為の実態について知ったのは2015年3月でした。そのためアカハラ事件に関する学校側の対応がどうなっているのだろうかと思い、情報公開請求を2015年6月26日に提出しました。以来、今日まで既にほぼ3年が経過することになります。
当会の情報公開請求に対して、群馬高専側が存否応答拒否を含む完全不開示決定をしたため、当会は異議申立てを経て1年ほどかかってようやく群馬高専側の存否応答拒否を引っ込めさせました。そこで再度、群馬高専側にアカハラに関する情報開示請求をしたのですが、またもや全面不開示処分とされてしまいました。
やむなく当会は群馬高専の上級機関である国立高等専門学校機構を被告として、不開示処分取消請求のための行政訴訟を提起し争ってきました。そして、その事件(平成28年(行ウ)第499号法人文書不開示処分取消請求事件)の判決言渡が、2017年11月24日(金)13時25分に東京地裁5階の522号法廷で行われました。東京地裁の古田孝夫裁判長は、一部原告の主張を認めた判決を出しました。
行政相手の訴訟では裁判所は最初から行政側から相談を受けて最大限、行政側に対して忖度します。今回は国の教育機関ということで、裁判所は最大限、機構=群馬高専側に配慮した判決を出しました。しかしあまりにも頑なな情報隠蔽体質に対して、古田裁判長は司法の良識を全て捨て去るわけにゆかず、一部原告の主張を認める判決を言い渡したのです。
市民オンブズマン群馬としては、判決内容に不満はあるものの、文書を早期に受け取り迅速な解決を行うことを優先して、控訴は行わないでいました。ところが、控訴期限ギリギリの12月8日(金)に機構=群馬高専は、控訴状を東京地裁に提出したため、こちらも応じて控訴せざるを得なくなりました。控訴を放棄すると自動的に原告敗訴部分が確定してしまい、機構=群馬高専の隠蔽体質を追認してしまうことになるためです。
既に1月20日に東京高裁から1月18日付けで弁論期日呼出状と、機構=群馬高専の控訴状が同封された答弁書催告状が当会事務局あてに1月20日に簡易書留で送られており、2月28日(水)午後1時30分に第1回口頭弁論が東京高裁8階の809号法廷で開かれることが決定済みです。
併せて、控訴答弁書の提出期限が、2月21日(水)と通知されたため、いつ、控訴人である機構=群馬高専から控訴理由書が到来するのか、逐次東京高裁第9民事部に問い合わせていましたが、先週末の1月26日(金)に確認したところ、担当書記官が休んでおり、月曜日に再度本人に電話をしてほしいと言われていました。
すると冒頭で報告したとおり、1月26日付の控訴人である機構=群馬高専の訴訟代理人から、1月27日に当会事務局に、控訴理由書が送られてきたのです。
■さっそく機構=群馬高専の控訴理由書の内容を見てみましょう。
*****送付書兼受領書*****PDF ⇒ 201801260tirt.pdf
準備書面等の送付書
平成30年1月26日
下記のとおり書類をご送付いたします。
受領書欄に記名・押印のうえ、この書面を当職及び裁判所宛FAX等でお送り下さい。
送 付 先:東京高等裁判所第9民事部A1係 御中
FAX 03-3580-3859
被控訴人 市民オンブズマン群馬 御中
FAX 027-224-6624
発 信者:〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
控訴人訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
TEL:03-3573-7041 FAX:03-3572-4559
事件番号:平成29年(行コ)第376号
当事者名:控 訴 人 独立行政法人 国立高等専門学校機構
被控訴人 市民オンブズマン群馬
次回期日:平成30年2月28日(水)午後1時30分
文 書 名:控訴理由書
送信売数: 枚 (送信書を除く)
相手方への送達の有無:有
=====受領書=====
東京高等裁判所第9民事部A1係 御中 (FAX:03-3580-3859)
控訴人訴訟代理人 弁護士 木 村 美 隆 宛 (FAX:03-3572-4559)
上記書類を受領しました。
平成30年1月27日
被控訴人 市民オンブズマン群馬
通信欄:
*****控訴理由書*****PDF ⇒ 201801261tir.pdf
<P1>
平成29年(行コ)第376号
控 訴 人 独立行政法人国立高等専門学校機構
被控訴人 市民オンブズマン群馬
控訴理由書
平成30年1月26日
東京高等裁判所第9民事部A1係 御中
控訴人訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
同 藍 澤 幸 弘
記
1 原判決の判示
被控訴人の控訴人に対する法人文書開示請求について,原判決は,同開示請求の対象となる各文書(原判決5から7頁,アないしウ記載の文書,以下原判決同様「本件文書1」等と略称する)のうち,原判決別紙記載の各部分を不開示とした控訴人の決定を取り消す,とする。
そして,その理由として,原判決別紙記載の各部分,具体的には本件文書1のうち作成者の氏名・肩書,作成日付等の部分,本件文書2のうち作成年月日や表題,宛先や,本件文書3のうち作成者の氏名・肩書,作成年月日,表題の部分は,不開示情報ではなく,不開示情報が記録されている部分は本件各文書から容易に区分して除くことができる,として,控訴人は原判決別紙記載の各部分につき開示すべき義務を負う,とする(原判決18から19頁)。
<P2>
2 部分開示が不可能であること
しかし,本件において,被控訴人は,本件文書1と推測される文書として甲第14号証,本件文書2と推測される文書として甲第11,12号証を書証として提出し(原審における被控訴人の平成29年4月11日付準備書面),これらの所掌を自身のホームページで公開している(乙7)。
これらの書証は,記載された個人名こそ黒塗りとなっているが,その余の部分については何ら修正が施されておらず,被控訴人がホームページで公開したことにより第三者にもその内容が明らかになっている。
さらに,本件文書1は群馬工業高等専門学校(以下「群馬高専」という)が同校の学生の保護者宛てに配布したものであり,本件文書2は群馬高専が作成した文書ではないため,被控訴人が何らかの経緯で本件文書1及び2を入手したことも考えられるのであり,甲第11,12,14号証を本件文書1及び2とする被控訴人の推測が,何ら根拠のないものと言うことはできない。
このような状況のもと,控訴人が原判決の認定するとおり,本件文書1について作成者の氏名・肩書,作成日付等の部分や,教職員,学生及びその保護者に係る所属・属性を除く部分を,本件文書2について作成年月日や標題,宛先を部分開示すれば,部分開示された文書と甲第11,12,14号証を付き合わせてその同一性を判断することが可能となる。両文書が同一であった場合には,被控訴人が個人名のみを伏して本件文書1及び2の開示を行ったことと実質的に同一の結果となるのであり,原判決が個人識別情報に該当し,かつ人の生命,健康(中略)を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報にあたらない,ないし人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に影響を及ぼすおそれがある,として不開示事由があると判断した部分を開示する結果となるに等しい。
以上からすれば,本件文書1及び2の作成者や作成年月日が不開示情報その
<P3>
ものにあたらないとしても,これを開示することにより実施的に不開示部分を開示した結果となるおそれがある以上,本件において作成者や作成年月日等のみを不開示情報が記録されている部分と区分して開示することが容易に可能であるということはできない。
被控訴人が,本件文書1及び2と解する文書をホームページで開示していることは原審裁判所において明らかであるところ,原判決ではこの点に触れられていない。控訴人としては,原判決の判断に従って,原判決別紙の各項目の部分開示を実施することに,躊躇を覚えざるをえない。
3 本件文書3の作成名義が人事管理に係る情報にあたること
群馬高専における各学科所属の教員がいずれも10名程度であることは,原判決(4頁)で認定するとおりである。本件のようなハラスメント事案の調査にあたっては,調査の中立,適性を確保する観点から,調査対象となる教員との職務上の接点が相対的に少ない教職員を調査担当者に選任する必要があるが,上記の群馬高専の教員数からすれば,調査対象者の選定には自ずと限界がある。
原判決は,「本件文書3(作成者の氏名・肩書,作成年月日及び法大の部分を除く)にもそのような情報が記録されていることが認められる。(中略)被告が人事管理にかかる事務を行うのに必要な情報を住民に収集することや記録化するおそれがあることが困難となるおそれがある」(18頁)と判示し,開示により人事管理に関する事務を行うことが困難となるおそれの対象から,文書の作成者の氏名を除外している。しかし,上記の群馬高専の人的構成からすれば,本件文書3の作成者の氏名,肩書が開示されることにより,今後同様の調査の必要性が生じた場合に調査担当者の候補者自身の氏名が開示されることをおそれて就任を固辞するなど,調査担当者の選任困難となり,これにより人事管理に関する事務を行うことが困難となることが予想される。
<P4>
そうである以上,本件文書3における文書の作成者及びその肩書もまた,人事管理に係る事務に関する情報として,不開示情報に該当するというべきである。
以上
**********
■ここで、あらためて、今回、機構=群馬高専側が控訴を行った意味は一体何なのか、について考えてみたいと思います。
というのも、そもそも原判決自体が群馬高専寄りであるため、群馬高専が得られる利益は「保護者向け文書を不開示にできる」ということしか無く、さらに群馬高専寄りの原判決ですら不開示が認められなかった箇所について不開示主張を堅持するのは、客観的に見ても著しく困難と思われるからです。
つまり、群馬高専は訴訟費用・弁護士費用を追加投入し、さらに職員を動員してまで、極めてハイリスク・ローリターンの勝負に出てきたことになります。常識的に考えれば、さっさと保護者向け文書だけ開示して手打ちにすればそれで良さそうなものですが、どうも山崎校長の頭の中は違うようです。
当会が予想するに、恐らく理由のひとつは、地裁判決が確定した場合、開示日が入試直前になってしまうことから、「またもや出願者数に悪影響を及ばしかねず、例え保護者向け文書であっても開示するのは好ましくない」という政治的な判断があったのかもしれません。
言うなれば、今回の控訴は、勝ち負け度外視の単なる時間稼ぎという見方もできるわけです。しかし、臭い物に蓋をして綺麗な群馬高専だけを見せて入学させようというのは、言い方を悪くすれば詐欺であり、あまりに新入生らを愚弄した態度であると思います。また、このような学校として、本来あるまじき「保身第一主義」のために、何十万という税金・授業料がドブに捨てられるのですから、あまりに納税者や学生をコケにしきった態度であるとも思います。
あるいは単純に、一分一厘でも自らの非を認めたくない、という「メンツ至上主義」が、今回の控訴という形で現れているのかもしれません。
いずれにしても、長年積み重ねてきた教育者としての矜持を捨てて、学校を私物化する山崎校長に、もはや学校改革者という当初のイメージは消し飛んだわけですので、今後、控訴審をはじめ、情報不開示処分にかかる審査請求において、もはや容赦はいらないでしょう。
まして山崎校長は前任者の猿真似にこだわり、「強硬な対応さえ続けていればいい」と考えているフシがあります。しかし、山崎校長には西尾前校長のような官僚らしい頭の良さや立ち回りの才能はありません。そうした人物が、学校を牛耳っているのが今の群馬高専ということになります。
■続いて、機構=群馬高専側の控訴理由書を一読した当会の現在の率直な感想を述べたいと思います。
結果から申し上げますと、もはや酷いとか稚拙だとかいう言葉で形容できるレベルではなく、「控訴理由書ですらない何か」と言った方がふさわしいのかもしれません。
まず、控訴の主理由に、またもや性懲りもなく「オンブズマンが訴訟関連情報をブログで公開していること」を挙げてきました。
これは、原審被告(機構=群馬高専)が、昨年8月18日付で最後の準備書面4において主張してきたことです。
※ちなみに、当会の関連するブログは次のURLでご覧ください。↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2388.html
客観的に見てあまりに苦し紛れの主張というほかないため、当時は、訴訟の場を保たせるための破れかぶれの主張かと考えていましたが、今回の控訴理由書を読む限り、信じ難いことに、どうも本気で主張しているようです。
しかし当時の準備書面4は、オンブズマンの攻勢に応じる形で出されたものでしたが、今回、機構=群馬高専は、それを柱にして、能動的に控訴を行ってきたわけです。
「オンブズマンがブログで公開しているから不開示にできる」などという荒唐無稽で眉唾物の理屈を信じて、貴重な群馬高専の予算から弁護士費用と訴訟代金を支払い、幾多の職員を動員し、機構本部やオンブズマンまで振り回して、控訴審を遂行しようというのですから、山崎校長も堕ちる所まで堕ちたものだと思います。
山崎校長の名前である「誠」は、文科省にシッポをふるイヌのような「忠誠」ができる男になってほしいという意味で親が付けたのではないはずです。ぜひ、親が意図した「誠実」の「誠」に沿ったふるまいをしてほしいものです。ところが、残念なことに、少なくとも学校運営責任者としての学生や職員、国民への「誠実」は、昨年4月に校長に赴任後、当会との係争を前校長から引き継いだ後も、微塵も感じられません。「山崎不誠」に改名されたら如何でしょうか。もっとも親が本当に「忠誠」を願って付けられたなら、それはそれで構いませんが・・・。
というより、もはやいちいち文科省も機構も群馬高専の方針に口を出してはおらず、単に群馬高専が「対オンブズマン徹底抗戦ロボット」として自律して勝手に戦っていることが伺えます。そのため、「忠誠」すら疑わしい状況になっています。アカハラ事件の隠蔽のために戦う事が自己目的化した、いわばオートマタ(機械人形)と化した山崎校長は、まさに情報工学畑の誇りと形容して差し支えないでしょう。紛れもない学会発表モノの偉業です。しかし、本人はそれでよいかもしれませんが、群馬高専の学校改革はいったいどうなるのでしょうか。
■それはさておき、控訴理由書の柱として位置付けられた形の当会のブログですが、ここまでオンブズマンの「ブログ」に固執しているところを見ると、群馬高専にとって相当、当会のブログが「目の上のたんこぶ」になっていることが伺えます。
群馬高専がさっさと情報を開示し、諸問題を(揉み消しではなく、後腐れないよう実効的に)解決しつつ、実効性のある再発防止策を採って、しっかり外部に向けてアナウンスができさえすれば、オンブズマンとしても、これ以上ブログに書かずに済むのですが、のっけからオンブズマンの口を塞ぐことに専念している様は、まさに、群馬高専の現体制の体質の底が知れるといった状況にあると言えるのではないでしょうか。
加えて、「群馬高専が文書を1ミリでも開示した時点で、世に出回っている文書が本物だと認めてしまう」というロジック(?)を控訴理由書で持ち出してきました。開示がなされなければ、「世に出回っている文書は捏造だ、偽物だ」とでも言い張るつもりなのでしょうか。もはや小学生の屁理屈です。というより、そうしたロジック(?)そのものが、必死の思いでアカハラの実態を告発した教員・学生らをどれほど愚弄した言い分なのか、山崎校長には理解できないのでしょうか。だとすれば、残念ながら教育者としての資格はない、と断定せざるを得ません。
■当会では、さっそく、この控訴理由書に対する反論として、控訴答弁書の作成に着手しました。東京高裁8階の809号法廷を舞台にした第2ステージでの群馬高専とオンブズマンの攻防について、ご注目くださるようよろしくお願いいたします。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
東京地裁での判決言渡し以降の経緯は次のブログ記事を参照ください。
○2017年11月24日:【速報】アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示訴訟で東京地裁が原告一部勝訴判決!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2476.html
〇2018年1月21日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…東京高裁第9民事部から2月28日の弁論期日呼出状と控訴状が届く↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2536.html
あらためて、この訴訟事件のこれまでの経緯を振り返ってみます。
当会が群馬高専の複数の関係者の方々から、学内での深刻なアカハラ行為の実態について知ったのは2015年3月でした。そのためアカハラ事件に関する学校側の対応がどうなっているのだろうかと思い、情報公開請求を2015年6月26日に提出しました。以来、今日まで既にほぼ3年が経過することになります。
当会の情報公開請求に対して、群馬高専側が存否応答拒否を含む完全不開示決定をしたため、当会は異議申立てを経て1年ほどかかってようやく群馬高専側の存否応答拒否を引っ込めさせました。そこで再度、群馬高専側にアカハラに関する情報開示請求をしたのですが、またもや全面不開示処分とされてしまいました。
やむなく当会は群馬高専の上級機関である国立高等専門学校機構を被告として、不開示処分取消請求のための行政訴訟を提起し争ってきました。そして、その事件(平成28年(行ウ)第499号法人文書不開示処分取消請求事件)の判決言渡が、2017年11月24日(金)13時25分に東京地裁5階の522号法廷で行われました。東京地裁の古田孝夫裁判長は、一部原告の主張を認めた判決を出しました。
行政相手の訴訟では裁判所は最初から行政側から相談を受けて最大限、行政側に対して忖度します。今回は国の教育機関ということで、裁判所は最大限、機構=群馬高専側に配慮した判決を出しました。しかしあまりにも頑なな情報隠蔽体質に対して、古田裁判長は司法の良識を全て捨て去るわけにゆかず、一部原告の主張を認める判決を言い渡したのです。
市民オンブズマン群馬としては、判決内容に不満はあるものの、文書を早期に受け取り迅速な解決を行うことを優先して、控訴は行わないでいました。ところが、控訴期限ギリギリの12月8日(金)に機構=群馬高専は、控訴状を東京地裁に提出したため、こちらも応じて控訴せざるを得なくなりました。控訴を放棄すると自動的に原告敗訴部分が確定してしまい、機構=群馬高専の隠蔽体質を追認してしまうことになるためです。
既に1月20日に東京高裁から1月18日付けで弁論期日呼出状と、機構=群馬高専の控訴状が同封された答弁書催告状が当会事務局あてに1月20日に簡易書留で送られており、2月28日(水)午後1時30分に第1回口頭弁論が東京高裁8階の809号法廷で開かれることが決定済みです。
併せて、控訴答弁書の提出期限が、2月21日(水)と通知されたため、いつ、控訴人である機構=群馬高専から控訴理由書が到来するのか、逐次東京高裁第9民事部に問い合わせていましたが、先週末の1月26日(金)に確認したところ、担当書記官が休んでおり、月曜日に再度本人に電話をしてほしいと言われていました。
すると冒頭で報告したとおり、1月26日付の控訴人である機構=群馬高専の訴訟代理人から、1月27日に当会事務局に、控訴理由書が送られてきたのです。
■さっそく機構=群馬高専の控訴理由書の内容を見てみましょう。
*****送付書兼受領書*****PDF ⇒ 201801260tirt.pdf
準備書面等の送付書
平成30年1月26日
下記のとおり書類をご送付いたします。
受領書欄に記名・押印のうえ、この書面を当職及び裁判所宛FAX等でお送り下さい。
送 付 先:東京高等裁判所第9民事部A1係 御中
FAX 03-3580-3859
被控訴人 市民オンブズマン群馬 御中
FAX 027-224-6624
発 信者:〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
控訴人訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
TEL:03-3573-7041 FAX:03-3572-4559
事件番号:平成29年(行コ)第376号
当事者名:控 訴 人 独立行政法人 国立高等専門学校機構
被控訴人 市民オンブズマン群馬
次回期日:平成30年2月28日(水)午後1時30分
文 書 名:控訴理由書
送信売数: 枚 (送信書を除く)
相手方への送達の有無:有
=====受領書=====
東京高等裁判所第9民事部A1係 御中 (FAX:03-3580-3859)
控訴人訴訟代理人 弁護士 木 村 美 隆 宛 (FAX:03-3572-4559)
上記書類を受領しました。
平成30年1月27日
被控訴人 市民オンブズマン群馬
通信欄:
*****控訴理由書*****PDF ⇒ 201801261tir.pdf
<P1>
平成29年(行コ)第376号
控 訴 人 独立行政法人国立高等専門学校機構
被控訴人 市民オンブズマン群馬
控訴理由書
平成30年1月26日
東京高等裁判所第9民事部A1係 御中
控訴人訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
同 藍 澤 幸 弘
記
1 原判決の判示
被控訴人の控訴人に対する法人文書開示請求について,原判決は,同開示請求の対象となる各文書(原判決5から7頁,アないしウ記載の文書,以下原判決同様「本件文書1」等と略称する)のうち,原判決別紙記載の各部分を不開示とした控訴人の決定を取り消す,とする。
そして,その理由として,原判決別紙記載の各部分,具体的には本件文書1のうち作成者の氏名・肩書,作成日付等の部分,本件文書2のうち作成年月日や表題,宛先や,本件文書3のうち作成者の氏名・肩書,作成年月日,表題の部分は,不開示情報ではなく,不開示情報が記録されている部分は本件各文書から容易に区分して除くことができる,として,控訴人は原判決別紙記載の各部分につき開示すべき義務を負う,とする(原判決18から19頁)。
<P2>
2 部分開示が不可能であること
しかし,本件において,被控訴人は,本件文書1と推測される文書として甲第14号証,本件文書2と推測される文書として甲第11,12号証を書証として提出し(原審における被控訴人の平成29年4月11日付準備書面),これらの所掌を自身のホームページで公開している(乙7)。
これらの書証は,記載された個人名こそ黒塗りとなっているが,その余の部分については何ら修正が施されておらず,被控訴人がホームページで公開したことにより第三者にもその内容が明らかになっている。
さらに,本件文書1は群馬工業高等専門学校(以下「群馬高専」という)が同校の学生の保護者宛てに配布したものであり,本件文書2は群馬高専が作成した文書ではないため,被控訴人が何らかの経緯で本件文書1及び2を入手したことも考えられるのであり,甲第11,12,14号証を本件文書1及び2とする被控訴人の推測が,何ら根拠のないものと言うことはできない。
このような状況のもと,控訴人が原判決の認定するとおり,本件文書1について作成者の氏名・肩書,作成日付等の部分や,教職員,学生及びその保護者に係る所属・属性を除く部分を,本件文書2について作成年月日や標題,宛先を部分開示すれば,部分開示された文書と甲第11,12,14号証を付き合わせてその同一性を判断することが可能となる。両文書が同一であった場合には,被控訴人が個人名のみを伏して本件文書1及び2の開示を行ったことと実質的に同一の結果となるのであり,原判決が個人識別情報に該当し,かつ人の生命,健康(中略)を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報にあたらない,ないし人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に影響を及ぼすおそれがある,として不開示事由があると判断した部分を開示する結果となるに等しい。
以上からすれば,本件文書1及び2の作成者や作成年月日が不開示情報その
<P3>
ものにあたらないとしても,これを開示することにより実施的に不開示部分を開示した結果となるおそれがある以上,本件において作成者や作成年月日等のみを不開示情報が記録されている部分と区分して開示することが容易に可能であるということはできない。
被控訴人が,本件文書1及び2と解する文書をホームページで開示していることは原審裁判所において明らかであるところ,原判決ではこの点に触れられていない。控訴人としては,原判決の判断に従って,原判決別紙の各項目の部分開示を実施することに,躊躇を覚えざるをえない。
3 本件文書3の作成名義が人事管理に係る情報にあたること
群馬高専における各学科所属の教員がいずれも10名程度であることは,原判決(4頁)で認定するとおりである。本件のようなハラスメント事案の調査にあたっては,調査の中立,適性を確保する観点から,調査対象となる教員との職務上の接点が相対的に少ない教職員を調査担当者に選任する必要があるが,上記の群馬高専の教員数からすれば,調査対象者の選定には自ずと限界がある。
原判決は,「本件文書3(作成者の氏名・肩書,作成年月日及び法大の部分を除く)にもそのような情報が記録されていることが認められる。(中略)被告が人事管理にかかる事務を行うのに必要な情報を住民に収集することや記録化するおそれがあることが困難となるおそれがある」(18頁)と判示し,開示により人事管理に関する事務を行うことが困難となるおそれの対象から,文書の作成者の氏名を除外している。しかし,上記の群馬高専の人的構成からすれば,本件文書3の作成者の氏名,肩書が開示されることにより,今後同様の調査の必要性が生じた場合に調査担当者の候補者自身の氏名が開示されることをおそれて就任を固辞するなど,調査担当者の選任困難となり,これにより人事管理に関する事務を行うことが困難となることが予想される。
<P4>
そうである以上,本件文書3における文書の作成者及びその肩書もまた,人事管理に係る事務に関する情報として,不開示情報に該当するというべきである。
以上
**********
■ここで、あらためて、今回、機構=群馬高専側が控訴を行った意味は一体何なのか、について考えてみたいと思います。
というのも、そもそも原判決自体が群馬高専寄りであるため、群馬高専が得られる利益は「保護者向け文書を不開示にできる」ということしか無く、さらに群馬高専寄りの原判決ですら不開示が認められなかった箇所について不開示主張を堅持するのは、客観的に見ても著しく困難と思われるからです。
つまり、群馬高専は訴訟費用・弁護士費用を追加投入し、さらに職員を動員してまで、極めてハイリスク・ローリターンの勝負に出てきたことになります。常識的に考えれば、さっさと保護者向け文書だけ開示して手打ちにすればそれで良さそうなものですが、どうも山崎校長の頭の中は違うようです。
当会が予想するに、恐らく理由のひとつは、地裁判決が確定した場合、開示日が入試直前になってしまうことから、「またもや出願者数に悪影響を及ばしかねず、例え保護者向け文書であっても開示するのは好ましくない」という政治的な判断があったのかもしれません。
言うなれば、今回の控訴は、勝ち負け度外視の単なる時間稼ぎという見方もできるわけです。しかし、臭い物に蓋をして綺麗な群馬高専だけを見せて入学させようというのは、言い方を悪くすれば詐欺であり、あまりに新入生らを愚弄した態度であると思います。また、このような学校として、本来あるまじき「保身第一主義」のために、何十万という税金・授業料がドブに捨てられるのですから、あまりに納税者や学生をコケにしきった態度であるとも思います。
あるいは単純に、一分一厘でも自らの非を認めたくない、という「メンツ至上主義」が、今回の控訴という形で現れているのかもしれません。
いずれにしても、長年積み重ねてきた教育者としての矜持を捨てて、学校を私物化する山崎校長に、もはや学校改革者という当初のイメージは消し飛んだわけですので、今後、控訴審をはじめ、情報不開示処分にかかる審査請求において、もはや容赦はいらないでしょう。
まして山崎校長は前任者の猿真似にこだわり、「強硬な対応さえ続けていればいい」と考えているフシがあります。しかし、山崎校長には西尾前校長のような官僚らしい頭の良さや立ち回りの才能はありません。そうした人物が、学校を牛耳っているのが今の群馬高専ということになります。
■続いて、機構=群馬高専側の控訴理由書を一読した当会の現在の率直な感想を述べたいと思います。
結果から申し上げますと、もはや酷いとか稚拙だとかいう言葉で形容できるレベルではなく、「控訴理由書ですらない何か」と言った方がふさわしいのかもしれません。
まず、控訴の主理由に、またもや性懲りもなく「オンブズマンが訴訟関連情報をブログで公開していること」を挙げてきました。
これは、原審被告(機構=群馬高専)が、昨年8月18日付で最後の準備書面4において主張してきたことです。
※ちなみに、当会の関連するブログは次のURLでご覧ください。↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2388.html
客観的に見てあまりに苦し紛れの主張というほかないため、当時は、訴訟の場を保たせるための破れかぶれの主張かと考えていましたが、今回の控訴理由書を読む限り、信じ難いことに、どうも本気で主張しているようです。
しかし当時の準備書面4は、オンブズマンの攻勢に応じる形で出されたものでしたが、今回、機構=群馬高専は、それを柱にして、能動的に控訴を行ってきたわけです。
「オンブズマンがブログで公開しているから不開示にできる」などという荒唐無稽で眉唾物の理屈を信じて、貴重な群馬高専の予算から弁護士費用と訴訟代金を支払い、幾多の職員を動員し、機構本部やオンブズマンまで振り回して、控訴審を遂行しようというのですから、山崎校長も堕ちる所まで堕ちたものだと思います。
山崎校長の名前である「誠」は、文科省にシッポをふるイヌのような「忠誠」ができる男になってほしいという意味で親が付けたのではないはずです。ぜひ、親が意図した「誠実」の「誠」に沿ったふるまいをしてほしいものです。ところが、残念なことに、少なくとも学校運営責任者としての学生や職員、国民への「誠実」は、昨年4月に校長に赴任後、当会との係争を前校長から引き継いだ後も、微塵も感じられません。「山崎不誠」に改名されたら如何でしょうか。もっとも親が本当に「忠誠」を願って付けられたなら、それはそれで構いませんが・・・。
というより、もはやいちいち文科省も機構も群馬高専の方針に口を出してはおらず、単に群馬高専が「対オンブズマン徹底抗戦ロボット」として自律して勝手に戦っていることが伺えます。そのため、「忠誠」すら疑わしい状況になっています。アカハラ事件の隠蔽のために戦う事が自己目的化した、いわばオートマタ(機械人形)と化した山崎校長は、まさに情報工学畑の誇りと形容して差し支えないでしょう。紛れもない学会発表モノの偉業です。しかし、本人はそれでよいかもしれませんが、群馬高専の学校改革はいったいどうなるのでしょうか。
■それはさておき、控訴理由書の柱として位置付けられた形の当会のブログですが、ここまでオンブズマンの「ブログ」に固執しているところを見ると、群馬高専にとって相当、当会のブログが「目の上のたんこぶ」になっていることが伺えます。
群馬高専がさっさと情報を開示し、諸問題を(揉み消しではなく、後腐れないよう実効的に)解決しつつ、実効性のある再発防止策を採って、しっかり外部に向けてアナウンスができさえすれば、オンブズマンとしても、これ以上ブログに書かずに済むのですが、のっけからオンブズマンの口を塞ぐことに専念している様は、まさに、群馬高専の現体制の体質の底が知れるといった状況にあると言えるのではないでしょうか。
加えて、「群馬高専が文書を1ミリでも開示した時点で、世に出回っている文書が本物だと認めてしまう」というロジック(?)を控訴理由書で持ち出してきました。開示がなされなければ、「世に出回っている文書は捏造だ、偽物だ」とでも言い張るつもりなのでしょうか。もはや小学生の屁理屈です。というより、そうしたロジック(?)そのものが、必死の思いでアカハラの実態を告発した教員・学生らをどれほど愚弄した言い分なのか、山崎校長には理解できないのでしょうか。だとすれば、残念ながら教育者としての資格はない、と断定せざるを得ません。
■当会では、さっそく、この控訴理由書に対する反論として、控訴答弁書の作成に着手しました。東京高裁8階の809号法廷を舞台にした第2ステージでの群馬高専とオンブズマンの攻防について、ご注目くださるようよろしくお願いいたします。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】