中央社会保険医療協議会
「医療費底上げ」明記を求め診療側ゆずらず、意見書合意せず
7日発表予定の政務三役の方針決定にも影響か
2009年12月4日 村山みのり(m3.com編集部)
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12月4日、中医協総会において、中医協が2010年度診療報酬改定について提出する意見書の素案が提出されたが、支払側委員がこれを了承した一方で、診療側委員は「医療費の底上げについてより明確に盛り込むべきである」と主張、合意には至らなかった。(意見書案全文はこちら:『平成22年度診療報酬改定について(案)』)。
この意見書案は11月25日の総会で1号側(支払側)、2号側(診療側)それぞれから提出された意見(医療維新『マイナス改定の影響を巡り診療・支払側、見解対立』参照)を公益側がまとめたもの。「国民・患者が望む安心・安全で良質な医療を受けられる環境を整えていくことは重要な課題であること、とりわけ、勤務医等の負担の軽減や、産科・小児科・救急等を積極的に評価していくことは重要であり、(中略)次期診療報酬改定においてもこれらの分野を支える地域の医療提供体制の確保を含め、更なる取組を進めていくことが必要であること、という基本認識については、意見の一致を見た」とした上で、診療側・支払側で意見の対立した診療報酬の引き上げについては、支払側の「診療報酬の引き上げを行う環境にはなく、限られた財源を効率的かつ効果的に配分するよう見直していくべき」との意見、診療側の「過去のマイナス改定を回復し、診療報酬の大幅な引き上げによる医療費全体の底上げを行うべき」とする意見の両論併記とした。
これに対し、西澤寛俊氏(全日本病院協会会長)は「医療費の全体的底上げを明記すべき」と批判。安達秀樹氏(京都府医師会副会長)も「『本意見書の趣旨を十分に踏まえて対応することを求める』とあるが、両論併記してどう踏まえろというのか」と疑問を呈した。これを受け、会長の遠藤久夫氏(学習院大学経済学部教授)は「共通認識の部分に『本体部分については引き下げを行う状況にないこと』と追記し、本体にはマイナスをしない旨を盛り込んではどうか」と提案し、支払側にこれに同意できるか訊ねたが、支払側は回答を保留し、また診療側の西澤氏も「本体部分と限定した場合、ネットでは引き下げとなる危険がある」とこれを退けたため、この文言は盛り込まれなかった。
また、西澤氏は「支払側の意見書では『保険料引き上げに直結するような診療報酬の引き上げを行う環境にはない』と記述されているが、保険料の引き上げを伴わない方法によるものであれば診療報酬引き上げに同意するのか」と質問したが、白川修二氏(健康保険組合連合会常務理事)は「“保険料引き上げに直結するような”は修飾語。診療報酬が上がれば保険料も上がる」とこれを否定した。
会議はここで時間切れとなり、中医協としての合意には至らなかったため、次回総会で改めて診療側が修正案を提出し、再度審議することとなった。なお、事務局(厚労省)は次回の総会開催予定を「12月中旬」と発表したが、一方で厚労政務三役は、2010年度診療報酬改定に向けた、具体的な数値を盛り込んだ改定率の方針を7日までに示すとしている。会議後の会見で、記者から「政務三役の方針発表の後で中医協として意見が出たとして、どのような意味があるのか」との質問があったのに対し、事務局は「政務三役から本当に方針が出るかどうか分からない。それも含め委員と相談する」と回答。また、「保険料引き上げに直結しない診療報酬引き上げについて、厚労省として何かイメージがあるか」との質問には、「現行のルールではない」とした。
「医療費底上げ」明記を求め診療側ゆずらず、意見書合意せず
7日発表予定の政務三役の方針決定にも影響か
2009年12月4日 村山みのり(m3.com編集部)
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12月4日、中医協総会において、中医協が2010年度診療報酬改定について提出する意見書の素案が提出されたが、支払側委員がこれを了承した一方で、診療側委員は「医療費の底上げについてより明確に盛り込むべきである」と主張、合意には至らなかった。(意見書案全文はこちら:『平成22年度診療報酬改定について(案)』)。
この意見書案は11月25日の総会で1号側(支払側)、2号側(診療側)それぞれから提出された意見(医療維新『マイナス改定の影響を巡り診療・支払側、見解対立』参照)を公益側がまとめたもの。「国民・患者が望む安心・安全で良質な医療を受けられる環境を整えていくことは重要な課題であること、とりわけ、勤務医等の負担の軽減や、産科・小児科・救急等を積極的に評価していくことは重要であり、(中略)次期診療報酬改定においてもこれらの分野を支える地域の医療提供体制の確保を含め、更なる取組を進めていくことが必要であること、という基本認識については、意見の一致を見た」とした上で、診療側・支払側で意見の対立した診療報酬の引き上げについては、支払側の「診療報酬の引き上げを行う環境にはなく、限られた財源を効率的かつ効果的に配分するよう見直していくべき」との意見、診療側の「過去のマイナス改定を回復し、診療報酬の大幅な引き上げによる医療費全体の底上げを行うべき」とする意見の両論併記とした。
これに対し、西澤寛俊氏(全日本病院協会会長)は「医療費の全体的底上げを明記すべき」と批判。安達秀樹氏(京都府医師会副会長)も「『本意見書の趣旨を十分に踏まえて対応することを求める』とあるが、両論併記してどう踏まえろというのか」と疑問を呈した。これを受け、会長の遠藤久夫氏(学習院大学経済学部教授)は「共通認識の部分に『本体部分については引き下げを行う状況にないこと』と追記し、本体にはマイナスをしない旨を盛り込んではどうか」と提案し、支払側にこれに同意できるか訊ねたが、支払側は回答を保留し、また診療側の西澤氏も「本体部分と限定した場合、ネットでは引き下げとなる危険がある」とこれを退けたため、この文言は盛り込まれなかった。
また、西澤氏は「支払側の意見書では『保険料引き上げに直結するような診療報酬の引き上げを行う環境にはない』と記述されているが、保険料の引き上げを伴わない方法によるものであれば診療報酬引き上げに同意するのか」と質問したが、白川修二氏(健康保険組合連合会常務理事)は「“保険料引き上げに直結するような”は修飾語。診療報酬が上がれば保険料も上がる」とこれを否定した。
会議はここで時間切れとなり、中医協としての合意には至らなかったため、次回総会で改めて診療側が修正案を提出し、再度審議することとなった。なお、事務局(厚労省)は次回の総会開催予定を「12月中旬」と発表したが、一方で厚労政務三役は、2010年度診療報酬改定に向けた、具体的な数値を盛り込んだ改定率の方針を7日までに示すとしている。会議後の会見で、記者から「政務三役の方針発表の後で中医協として意見が出たとして、どのような意味があるのか」との質問があったのに対し、事務局は「政務三役から本当に方針が出るかどうか分からない。それも含め委員と相談する」と回答。また、「保険料引き上げに直結しない診療報酬引き上げについて、厚労省として何かイメージがあるか」との質問には、「現行のルールではない」とした。