「宇宙誕生の瞬間はビッグバン」と思っていたら、最近は否定されているのだという。
「これまでのビッグバン理論では、宇宙の始まりは超高温・超高密度で光に満ちた『火の玉』のようなものが爆発的に膨張し、広大な宇宙ができあがったとされていた。
ならば、その火の玉とは何か?
ビッグバン理論では、1点に無限大のエネルギーが集中した状態ということになっている。しかし、『無限大』は物理学で説明できず、火の玉が生まれた理由は神の仕事として片づけていた。」
そこに次の新説が、その疑問を解き明かした。
「宇宙の始まりでは、時間も空間もエネルギーもない無の状態に突然、10のマイナス33乗cmと、素粒子にも満たないサイズの宇宙構造の種が出現した。その種がなんらかのきっかけでインフレーション(急膨張)を起こし、やがて1cmを超えた時点で膨張にストップがかかり、急激に冷却された真空エネルギーは熱エネルギーに転化され、大爆発(ビッグバン)を起こした。これがインフレーション理論の考え方」
つまり、「インフレーション理論」では宇宙が急膨張したあとにビッグバンが起こる。1992年にアメリカの宇宙背景放射探査衛星「COBE」がとらえた宇宙初期の姿に、このインフレーションの証拠が発見された。
図解で説明すると、時間も空間もエネルギーもない「無」から突然、宇宙が始まった。
「一般的に無とは何もない状態を指すが、実は物理学的には完全な無は存在しない。どれほど物理的にエネルギーを抜いても、そこにはわずかな『ゆらぎ (振動)』が残る。
仮にここに無の状態があるとすれば、そこには空間も時間もエネルギーもないはず。ところが、実際には『トンネル効果(極端に薄いエネルギーの壁を、それより低いエネルギーを持った粒子が通り抜ける、ミクロの世界で起こる現象)』というものによって、突然空間が現れては次の瞬間には消えてしまうといった現象が起こる。このゆらぎの状態から突然パッと宇宙構造の種が出現し、インフレーションとビッグバンが起こったらしい。
そして、我々の宇宙はこのトンネル効果によって生まれた無数の宇宙のなかのひとつにすぎない。これが宇宙の始まりに関する現段階での結論。」ということになっている。
この「インフレーション理論」は、ビッグバン理論の様々な矛盾を解消することができるため、今や世界的な定説となっているとか。