「医学部学生1.5倍」は明記せず、民主党マニフェスト
2010年06月17日
民主党は、今日(6月17日)午後5時から、東京都内で記者会見を開き、7月11日の参議院議員選挙のマニフェストを公表しました。「強い経済、強い財政、強い社会保障」がその柱(マニフェストは民主党のホームページに掲載)。
菅直人代表は、「経済、財政、社会保障はこれまで対立するものとみなされてきたが、私はこの根本的な見方を変えないと日本の再生はないと考えている。これら三つでどのように好循環を作るかだが、単にスローガンとして掲げたわけではなく、これまで半年あまりしっかりと議論してきた。明日(18日)に閣議決定する新成長戦略やこのマニフェストでそのエッセンスを示している」と説明。
一番の注目点は、「消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始する」ことを掲げている点。「自民党が提示している消費税10%を一つの参考にする」(菅代表)。ただ、「その使途は、社会保障に限らない」(玄葉光一郎・政調会長)とのこと。
マニフェストの位置づけについて、「基本的には2009年の衆議院議員総選挙のマニフェストがあって、それを手直ししているのが今回のマニフェスト」(玄葉政調会長)。「民主党政権がこれまで取り組んできたこと」を掲げ、実現したかどうかを整理するとともに、計10分野について政策課題を列挙する構成になっています。
全体で見れば、子ども手当ての半額は「現物サービス」を可能とするなど、大幅な修正を図った部分があります。医療分野に限って言えば、大幅な方針転換はないものの、注目点が一つ。衆院選では「医学部学生を1.5倍に増やす」とされていましたが、「医師を1.5倍に増やすことを目標に、医学部学生を増やす」との記載にとどまっている点。
この点について、質問したところ、細野豪志・幹事長代理は、「ここは若干、実務的な検討を文部科学省としているが、現実問題としていきなり1.5倍に増やせない。時間をかけて、衆院選で言っていたような1.5倍に増やすという方向性は変わらないと思う。ただ今回書いているマニフェストは最優先課題、衆議院の解散までの期間を一つのメドとして努力をしていくものに限って書いている。実際のところ、あと3年で1.5倍にするのは難しい」と回答、やや玉虫色の回答ですが、医学部定員の大幅増からはややトーンダウンした印象です。
なお、同日、自民党もマニフェストを公表しています。他党も含め、別途改めて各党のマニフェストを検証します。
【民主党政権がこれまで取り組んできたこと】
・「社会保障費2200億円削減」の撤廃
→自公政権が続けてきた2200億円削減を撤廃。2010年度予算では、診療報酬を10年ぶりに増額するなど社会保障費を9.8%増加。
・後期高齢者医療制度
→廃止に向けて新たな検討を進めるとともに、廃止に先駆けて診療内容や診療報酬における年齢差別を廃止。
・地域の医師不足解消
→産科、小児科、外科などの医師確保のため、医学部定員を8846人(前年比360人増)に。
・新型インフルエンザ対策等
→新型インフルワクチンの必要量を速やかに確保。肝炎医療費の自己負担元素額を原則1万円に引き下げ。
【医療分野のマニフェスト】
・後期高齢者医療制度は廃止し、2013年度から新しい高齢者医療制度をスタートさせる。
・診療報酬の引き上げに引き続き取り組む。
・地域の医師不足解消に向けて、医師を1.5倍に増やすことを目標に、医学部学生を増やす。看護師など医療従事者の増員に引き続き取り組む。
・新型インフルエンザ対策としてのワクチン接種体制の強化、がんの予防・健診体制の強化、肝炎対策に対する支援などに集中的に取り組む。
・在宅医療、訪問看護、在宅介護、在宅リハビリテーションなどを推進し、地域で安心して生活できる環境を整備するとともに、家族など実際に介護に当たっている人を支援。
・自殺対策に積極的に取り組み、相談体制の充実、メンタルヘルス対策の推進、精神科医療の適切な受診環境の整備などを推進。