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2010年06月01日 01時42分55秒 | 

まさに巨大宇宙

巨大ブラックホールを周回する彗星の雲
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト5月31日(月) 15時52分配信 / 海外 - 海外総合
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渦巻銀河NGC 1365の実際の色を再現した画像。
(Image courtesy ESO)
 影のような複数の“彗星”が超大質量ブラックホールの“口”の近くを周回していることが最新の研究でわかった。

 ヨーロッパとアメリカの合同研究チームは最近、日本のX線天文衛星「すざく」を利用して、太陽の1000倍の質量を持つブラックホールからの放射線を分析した。この巨大ブラックホールは、地球から5600万光年離れた渦巻銀河NGC 1365の中心部に位置している。

 この観測の際に、「すざく」とこのブラックホールとの位置関係が幸いして、彗星のような形をした奇妙な雲が秒速数千キロという猛烈な速度でブラックホールに近い軌道を周回しているのを発見できた。

「太陽系の彗星が氷でできていて山ほどの大きさであるのと異なり、今回観測された“彗星”は恒星ほどの大きさがあり、超高温のガスでできている。これは、ブラックホールによって引きちぎられた恒星の残骸だ」と、研究の共著者でイギリスにあるキール大学のジェームズ・リーブス氏は話す。

 研究チームによると、このような発見は珍しく、すべての超大質量ブラックホールには彗星のような形の雲があることを示唆しており、ブラックホールが天体を吸い込むプロセスを説明するモデルの修正を迫られる可能性があるという。

 銀河の中心部にある超大質量ブラックホールには物質が絶えず落ち続けており、これによってブラックホールを周回する超高温の物質がいわゆる降着円盤を形成する。ブラックホールの“口”から噴き出す高エネルギーの粒子のジェットは、「すざく」のX線望遠鏡で観測すると光の輝点として見える。

 NGC 1365中心部のブラックホールを今回観測したところ、雲が地球とブラックホールの間を通過したため、日食で月が日光を遮るのと同じように、研究チームが観測していたX線が雲によって弱められた。

 こうした雲の存在は以前からわかっていたものの、過去にこのような方法で雲が発見されたことがなかったため、雲の正確な形状は不明だった。「最初にX線の放射量が大きく低下した後、雲の“尾”が通過するにつれて徐々に明るくなり始め、これが彗星の形を知る手がかりとなった」とリーブス氏は説明する。

 研究チームの観測の結果、雲とブラックホールとの距離は地球と太陽の距離の約1万倍であることがわかった。また、それぞれの雲の“頭”は太陽とほぼ同じ大きさだが、尾の長さは1億5000万キロを超えるという。

 NGC 1365のブラックホールが物質を飲み込む量や速度から考えて、この奇妙な“彗星”の寿命は数カ月しかないと見られている。ただし、ブラックホールには天体が次々と落ち込んでいるために、ブラックホールを周回する雲も作られ続けているのではないかと推測されている。

 また、NGC 1365のブラックホールを周回する雲は2つしか発見されていないが、実際には多数の雲がブラックホールの周囲を回っていると考えられる。

「われわれが発見できるのは、偶然視界に入ってきたひと握りの彗星だけだ。したがって、実際にはこのような奇妙な雲が常に1000万個以上も周囲を埋め尽くしている可能性があると思う」とリーブス氏は推測する。「ブラックホールは、これまで考えられていたよりもはるかに混沌としているということが明らかになりつつある」。

 この研究はWebサイト「arXiv」で2010年5月19日に公開された。また「Astronomy and Astrophysics」誌にも近日中に掲載される予定である。
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