認知症予防さらに充実 軽度者向けプログラム開始 大谷地病院
2019年11月1日 (金)配信北海道医療新聞
厚別区の大谷地病院(田尾大樹理事長・315床)は、デイケアに「軽度認知機能障害回復プログラムなつめ」を導入した。認知症予防専門士と管理栄養士が連携し、半年かけて患者に認知症予防につながる生活習慣を身に付けてもらう。
同病院は2017年から、認知症予防に力を入れており、地域に密着したサービスとして「認知症予防サークルわっこ」を町内会館で実施。さらにMCIの患者向けに「なつめ」を開始した。
回復プログラムの作成から実践までを、認知症予防専門士・臨床美術士の資格を持つ藤澤多喜子作業療法士と、在宅訪問管理栄養士の谷文乃管理栄養士が担当。認知症予防に効果的な生活習慣を身に着けてもらうため、毎週水曜日に実施している。
内容は週替わりで、芸術療法である臨床美術、栄養講座(話、献立作り)、栄養講座(調理)、体を使った脳トレを取り入れている。プログラムの序盤には本山式筋力トレーニングを導入。筋肉にしっかり刺激を与えて脳にフィードバックさせることで、脳と筋肉のつながりを取り戻していくことが狙いだ。さらにシナプソロジー、ふまねっと、コグニサイズなど頭を使う運動も積極的に行っている。
参加者がウオーキングに取り組み易くするため、北海道地図を用いた記録用紙を採用。1日20分歩いたら日付とともに、道内のどこまで進んだのか記入できるように工夫している。
認知症予防に重点を置くと、フレイルの視点があいまいになるため、プログラムの作成と実施に管理栄養士も関わることで、日常の栄養モニタリングなども行えるようにした。栄養についての講話を基に献立を考え、調理するという工程を設けることで、脳トレの効果を期待できる。また、参加者の料理風景をみることで、日常生活の把握にもつながっている。認知症予防、フレイル対策ともに栄養と運動が重要なため、リハビリを専門とする作業療法士と管理栄養士が一緒にプログラムを提供することのメリットは大きいという。
軽度認知症の検査であるMoCA─Jのほか、睡眠の質やスケジュールについての判定も実施。さらにフレイルや日常の活動量の把握、嚥下の状態やうつなどのチェックと共に、血液検査、握力や体重、BMI値など、細かなデータがプログラムづくりに役立っている。
毎週木曜日開催の認知症予防サークルでは早めの介入と、介護予防センターや相談室を案内することで生活支援につなげるなど、元気な状態から要介護まで一連の支援を目指している。
他病院でMCIの診断を受けた人も参加可能で、今後は積極的に受け入れていくほか、プロブラム参加者の送迎や他職種のスタッフによる介入も行っていく。