両膝手術「この右では...」 照富執刀医語る、再起の道
14日初日の大相撲夏場所(両国国技館)で横綱照ノ富士が3場所連続全休から帰ってくる。昨年10月に両膝の内視鏡手術を担当した船橋整形外科病院(千葉県船橋市)の高橋憲正(たかはし・のりまさ)副院長(53)が共同通信の取材に応じ、再起への歩みを語った。
途中休場した昨年9月の秋場所直前、照ノ富士の右膝に水がたまるようになった。高橋氏は「ゴリッ、ゴリッと音がして、痛み止めを打たないとどうにもならない状態」と振り返る。相手の体重を受け止める側だけに、横綱が「この右では闘えない」と判断。左膝と同時に手術へ踏み切った。
照ノ富士は両膝に古傷を抱え、骨棘(こっきょく)と呼ばれる骨のとげが次第に大きくなっていた。「骨棘ができすぎると、動きの制限が出てくる」と高橋氏。術後は関節の可動域が広がり、筋力トレーニングの負荷も高まった。
横綱自ら「人工関節を入れてもおかしくない膝」と漏らすように、変形した両膝は手術で劇的に改善するわけではない。高橋氏は「骨棘は取れるが、軟骨がすり減った部分は替えが利かない。その辺は再生できない」と証言。大関から序二段に転落し、不屈の闘志で最高位にはい上がった代償から体は満身創痍(そうい)だ。
当初は3月の春場所での復帰を目指したが、糖尿病の悪化もあって回避。それでも気持ちを切らさなかった31歳の一人横綱に対し、高橋氏は「必ず復活しなくてはいけないという強い意志を感じた。責任ある地位を長く務めてほしい」とエールを送った。
4日に行われた横綱審議委員会の稽古総見。横綱は「いつも通りの照ノ富士を見てもらいたい」と話した。約8カ月ぶりとなる本場所の土俵で、往時の強さを見せることができるか。(竹内元)